第17話 未来へ進む

第17話 未来へ進む




「ああ、あああ」


心臓が貫かれ、収まらない激痛が体全てを侵食しながら、強く、精神と肉体を確実にじっくりとゆっくりと殺そうとしてくる。

怖い、恐怖も時期に激痛と混じり合いながら、俺の体を破壊する。


「たす、助けて、た……」


「無駄だ、そう足掻いても俺が作った影から逃れれる奴はいない、もちろん異界魔術アナザー・マジックを保持しているお前もな」


目の前に死を具現化さたような、真っ赤な光が暗い世界を切り抜くと言わんばかりに、俺の前に現れた。

その光が現れたということは、その光を自由に行使するものがいるということ。


すると目の前に黒色の足が現れる、それは影のように黒くはなく、ブーツだった。

赤い光が目の前、つまり眼前に供覧きょうらんさせられる。

それを首筋に突きつけられ、数センチ移動させただけで斬首。


その光景を想像するだけで、痛みも増す。

全身の毛穴が開く、もしそこから出るものがあれば、それは透明な汗ではなくドス黒い血液だろう。


「……と言ってもねえ、俺は殺すが一つだけ聞きたいことがある、一応喋ってもらうけど痛みに耐えながら話してもらう、安心しろ音声器官までは破壊してないさ」


「あ、いあ」


喉から声を出そうとする、確かに“影の中の人物”が言うように、声を出そう思ったら出せるだろう。

それでも声を出す時には、心臓を穿たれた激痛というものが大きな壁となり妨害にもなる。


でもそこはいいこれが話している間ずっと続く方がもっと地獄だ、一文一句を口から出すときに毎回毎回、この山を越さないといけないのである。

それをまた想像し、次は口から血液を吐き出した、喀血かっけつもしくは吐血だった。


「おうおう、ちょっと今回はやりすぎたか? いや、こいつがただ単に一般人レベルの痛みに対する耐性しかないのか?」 まあどっちでも死ぬわけじゃないからいいか」


「い、し、、れ」


適当な言葉を口から出す、発熱している脳から出てきた文字のストレージは、口から漏れた言葉しかなかった。


「仕方ない、少しだけ痛みを和らげてやるか……流石にそこまで俺も全く情も心もない、悪鬼に落ちぶれているわけじゃない」


すると先ほどまで俺に”死“を大量に届けてきた、真っ黒な手袋をされた手が俺の頰に触れる。

するとその手から精神が癒されるくらい、綺麗な緑色の光が漏れ出した。

しかも眼前の背景が真っ黒だったので、それはまるで蝋燭ろうそくのようにも見えたのである。


すると影の中の人物は「よいしょ」と呟きながら、地面から立ち上がった。

緑色の光はやがて液体状になった、それが真っ黒な世界を伝って、俺の頰に落下してきた。


痛みが体からゆっくりとだが、消失していっていることに気がついた。

そして俺がこの影に攻撃しようと、からだをゆさぶった瞬間、俺がしようとしていることに気がついたらしくこのようなことを口ずさんだ。


「一応言っておくが、痛覚を麻痺させて一時的に無効化しただけで、お前が立とうとしても体はほぼ限界を迎えてる、だから立ってもすぐに倒れるだけだぞ」


だが俺はその言葉を全く耳にも入れなかった、コイツの言っていることは全て虚言うそと確信した。

   ・・・

そう、俺の中では。


俺はその言葉に反旗して立つ、影は少しだけ俺に対して驚きを隠せていなかった。

それはそうだろう、だって普通ならば致命傷を負わせて全く、立てないと思っている人間が、五体満足全く無傷と同じ状態でその場に立っているのだから。


「……ああ、そういうことか、本当に便利だな異界幻像アナザー・ファントムってのはよお!!」


「はアッ!!」


異界幻像を利用して、愛用しているハンドガンを召喚して、荒んだ手に握った。

それも異常なほど強く、それは自身に渦巻く不安を濁すように。


俺は最初に、ヤツの胸部と脚部を狙った。

眼には高速で動く黒が見えるだけ、正直なことを言えば背景と変わらない黒。

乾くように少し鈍いような、銃声を闇の中に響かせる。

相変わらず、目に止まらぬ程早い速度で大気を切った。


「当たるかよ! なんでお前は、銃以外を全く使わないんだ!!」


当然、こんな台詞セリフが出たら全弾外れたということが、明らかになる。

悔しそうに、もしくは憤怒からか……。

今はどちらでも全く構わない。


「ほら、もう致命範囲に入ったぞ!? お前はここで死ぬんだよ“神崎ぃ”!」


真っ赤な光が空間の一部を裂いて見える、それは常人では絶対に捉えられない速度で、動き始める。

それを受け止めるほどの技量と経験は、俺には全くない、それも雀の涙一粒程度もだ。


でもそれは受け止めることを想定した時だけ。

なら、その光をこっちが致命範囲から、完全に逃れればいい話。


「そっちも、剣以外使ったらどうだ」


闇に染まった地面を踏み、後方にある闇が広がる空間へと逃げる。


「なに!?」


それに対して、影だった者は赤い目のようなものを一段と大きく見開いた。

今、目の前で起きた規格外の現象を疑い、驚くかのように。


やつの動きは、一瞬……ほんの一瞬だけその場で停止した。

そのチャンスを絶対に見逃すはずなく、体のどこでもいいので、体に鉛の弾を撃ち込んだ。


「消えろ」


鉛の弾が発射されたことをやつは悟と、回避体制に移行する。

だが俺はその回避すらも利用して、弾道から外れようしたヤツのその場に停止した体に向けて、プラスで三発撃ち込んだ。


見事のその三発の祈りの弾丸は、やつの体に命中した。

黒煙を纏った身体から、赤色の血液が少量だけ漏れ出てきた、だがその血液すらも闇へと一瞬にして葬られる。


だがこの三発が命中したところで、やつが戦闘不能になるなどということは全くない。

むしろこちらの攻撃という手札が命中したせいで、もっと相手の動きが激しくなるという、思いたくもない最悪の結果が出ていると予想した。


「チッ思ったより痛えな、どんな製法で作ったか知らねえが、そろそろこっちも!」


その予想は無惨にも、理不尽にも全て的中してしまった。

その台詞はきっと確実に、俺のことを殺すという再度の宣戦布告。


それを想像し終えると、すぐに自身の置かれている現実に気づき意識を戻した。

その途端、雷に打たれような衝撃に襲われる。

一瞬だけ体がぐらついた。

やつに目を向けると、赤色の目のようなものが少しずつ薄く小さくなっている。


「ちょっと、戦闘方法が変わるだけだ、なにお前が死ぬのは変わりなけどなぁ!!」


その時、赤色に発光する剣の刀身の長さが、一瞬にして増大する、その長さに合わせるかのように元幅も相応に大きくなる。

刀身が長くなると、光の明るさも増した。

肌を焼くほどの熱を感じる、その熱は痛みにもなる、刀身の熱量で皮膚すら焼却されそうだ。

”血液“のような、または“ワイン”のような”赤“だ。


「じゃあ、終わり《おしまい》」


自身が見ている眼前がぐらついた、立ちくらみのような感覚。

その言葉は一瞬の刹那、ライトの点滅。

雷が起こす轟音のように、本当の一瞬。

それだけだ。


でもこの一瞬は今まで見た産物モノとは全く違う、目にも留まらぬとよく言うが……。

でも、それはただの一瞬。

それはただの一瞬であるのだが、もっと他のものを感じた。

もっと、もっと、絶対他に何か。


「油断したら、そこで終わりだぞ? ほらこうやって」


「なっ!?」


斬撃が飛んでくる、超高速、全く止まらない速さでこちらに飛んでくる。

回避は不可能、絶対に間に合わない、論理的に全く説明できない速さで斬撃が飛来する。


そして、俺は切り裂かれた。

高速で切り裂かれたら、致死率100%がほぼ確定している。

地面に倒れる、敗者にふさわしい、それほど何も感じることもない。


「はぁ弱い奴が、強い奴に挑むからこうなるんだ、全く勝ち目がないのに……なんでそうするんだろうなぁ」


声が聞こえる、悪魔の囁きと同等に耳に響いた。

その声を脳は拒絶する、聞きたくない、金輪際耳に響かせたくない。

その情報が脳を埋め尽くした、耳は拒否しても眼はずっと開いたままだった。

眼には。赤だけが映る。


そして最後には、寿命が近く雪世界に無気力に落下する燕のように。

地面へと鈍い音を鳴らして、人形のように放置される。

目も霞む、だが影の口が歪んでるのは、この目に収まった。


「でさぁ、お前ら二人がなんで国家に対して反逆しようとしてるのか聞かせろ」


「誰からの、命令だ?」


「それは教えられない、あと命令したのは局長さんじゃないぞ」


局長と聞くと幾ら半分蒸発している脳でも、鮮明に脳内で出力される人物がいた。

カエデに傷をつけ、生気が全く感じられない不思議で不気味な声。

そして時代に全く合っていない、男が。


「で、話せよ」


「……話したら、殺すのか?」


「もちろん、でないとさっきの斬撃で体ごとごっそり切り落としてたぞ」


すると、赤色の剣をやつは眺め始める。

それは子供が完成させた作品を見るような、可愛い幼さのようなものではなかった。


「で、いつ言うんだ? 早く言ってもらわないとこの空間も時間切れで崩壊するんだけど」


「でも別に言わなくてもいいぞ、だってお前と一緒にいたやつを半殺しにしたらいいことなんだけどな」


だが何かに気づいたようにやつは、赤色の光剣を空中に振った、するとさっきまで傷ひとつすらつかなかった黒色の壁に、微量の光しか侵入できないほど小さな亀裂がピキッという音とともに、形成された。


「チッ、マジかよ思ったより早いか、流石にあんな化け物と一対一で戦えるわけないな」


やつはそう言うと、俺の方を向いてこう言った。


「おい、少し提案があるんだけどいいか?」


「なんだ」


威圧に近い声を喉から漏らす、だが俺の非力な声で奴が動じるワケが全くない。


「まぁ提案っていうのはな、簡単にいうと俺と戦って俺にお前が勝ったら、何も情報を吐かなくていい、だが俺に負けたらこの空間全体に今さっき俺が起こした斬撃を起こしてお前を完全に完全に殺す」


長々と説明されたが、要は俺が負けたらさっきみたいな猶予とかは用意せずに、情報吐くとか無視して強制的に殺すということか。


「わかった、了承する」


言葉を出すと俺を嘲笑うのではなく、勝負相手と認めているような対応をしてきた。



「じゃあ、次は猶予はなしだ」


赤色の光剣を象徴する、光が一瞬だけ暖炉に灯る炎のように揺らめいた。

それはただの自然現象に、近いものを感じらせるほど普通のものだった。

目の前は異常だらけなのに。


「行くぞ」


「ああ」


呼吸をする。

その時、俺が先手を打つ、銃弾がやつに飛ぶ。

先ほどの斬撃よりも少し遅い速度で、やつに命中した。


さっきより、動きが遅くなってる?


直感で察した、あまりにも速度が遅すぎる。

不意打ち以外では避けれていた銃弾が、命中し尽くす。


「い……ツッ」


やつから声が漏れ出す、でもその声は苦痛には聞こえない声調だった。

それは目の前の疑問に対する、戸惑いに見える。

今何が起こったのか、どうして命中したんだ。

そう考えているようだと、俺は思えなかった。


「お前、さっきより強くなってないか、というか俺の攻撃手段を分析しているようにも見える」


やつは光の帯にも見える剣を構えて、俺のことを睨んでくる。

それは答えだけを求めるように、答え以外を求めない。

いや、答え以外どうでもいい、それ以外全く俺には必要していない。


「俺には答えれることはない、だって俺はただ銃弾をお前に当たるように願っただけだ」


だが俺は、異界幻像アナザー・ファントムは全く使っていない。

これは前提。

だが俺はただ当たってほしい、命中してほしいと願っただけ。


でも、異界幻像アナザー・ファントムは全く動かない、起動すらしていない。

つまり———これは絶対に説明はできない、ただ俺の技量が上昇した。

自惚れているわけでは無い、でもこうとしか説明ができない、これが最適な答えだ。


「お前の技量が上昇した? いや、それはあり得ない……いくら解析ができても、すぐに戦闘で活かせるとは全く思えない」


やつは戦闘など忘れて、疑問に対する考察に耽っていた。

だが今、俺が言えることをやつに対して口を開いた。


「俺は今、戦闘に活かすことができた、そしてそれを使ってお前に攻撃を当てる、そんな単純作業を俺はしたまでだよ」


我ながら、かなり良いスピーチモドキのようなものができたような、気がして少し嬉しくなった。

そうか、そうか。


「なっ!?」


それを言うと、驚きに浸った表情を俺に向けた。

”おかしい“この情報がやつに対して、無期限に与えられる。


「そうか、お前」


それを理解した瞬間、赤色の光が空間を仰ぐ。

一直線に俺に向かってくる、銃弾と大差ないように。


だが俺の体も動いていた、俺は動こうなどと全く思っていない。

体が自動的に動いたと、いうことが理解できた。動いた方向は、突っ込んでくる赤の光。

そして俺はその時、無意識のうちに何をしようとしたか理解することができた。


「させるかよ!」


「お前もなぁっ!!」


銃弾が放たれる。

それでも止まらない、赤色の光が俺に最上の斬撃を与えてくる。

だが俺もやつに今、俺の体が行使できる全力の技量を叩きつけた。


「なかなか、やるな!」


「チッ!」


後方を確認すると、剣を持っている腕に黒い穴の銃創があることが確認できた。

だがこちらもその返しなのだろうか、右手全体が血液に濡れるほどの、強力な斬撃を与えられていることに気づく。


「やっぱりお前、本当は俺以上に強いんだろ?」


「それはどうかな、俺は結局お前の戦闘パターンを分析して模倣しただけ、これもただ一時的な処置に過ぎない」


「じゃあ、これはどうだ!」


やつは剣を帯刀した、すると一瞬にして再度、剣を構え直した。

こっちも読み取れないほど早く、見切ることもできない、これが単なる攻撃ならば俺は死んでいただろう。


その幸運に浸りながらも、精神を途切らせることはしなかった。


するとやつはその時、剣を大きく構える体勢に入った。


「は」


言葉が漏れ出る、別にただ構えただけなのに。

なのに、それに対して恐怖に近い感情が芽生えたのである。

背筋が凍りそうになる、また石のように硬直しそうになる。


「これで畏怖するのは仕方ないな、精神までは常人なのは仕方ないと言ったところか」


それを言い終わる瞬間、また光が炎のように揺らめいた。


その時、剣を振り下ろされた。


「な! なんだよ、アレ!」


あり得ない、これが現代科学の極点なのか。

もしくはこれでも、全く科学の中では複雑では無いのか。

それがどうなのかなんて、全くどうでもいい。


今、目の前で起きたことは本当に現実なのか。

この現象が本当に科学ならばおかしい。


だって、一本の短い光線から横幅10メートルほどある、衝撃波のような波のような。

それにも該当しないかもしれない、“赤の光”が地面を這いながら俺に向かってくる。


避けきれない。

致命傷を食らって、真正面から受け止めるか?

いやそれでも、異界幻像アナザー・ファントムで治療できるわけがない。

できても確実にバレるだろう、そして最後に空間ごと世界からおさらば。


「どうする、どうしたらこの攻撃を避けれる?」


思考を巡らせる、脳が発熱でショートしそうになりながらも、脳内の記憶を巡らせる。

今までの経験を脳内で考える。

目の前の不自然すぎる出来事で、気絶しそうになる。

意識も奈落に落ちそうになる、視界に黒が垣間見える。


意識が包まれる、この空間よりも暗い黒に。

体がぐらつく、最悪の運命は目の前に到達している。


「はあ、はあ!」


対処法を探す、この瞬間できることを。

そしてもう終わりが向かってきた瞬間とき、あることが光のように、脳裏をよぎった。

一筋の希望というやつだろうか。

コレハ。

最終手段。


「……アレ、ならいける?」


そう言って、手に持っている血が付着して着々と乾いている銃を見た。

ソレにある一つの手段を、俺は使うことにした。

その手段は自分をも殺す、犠牲の一撃サクリファイス

眼前には死を纏った、赤の逆光。


「殺す、この光ごとアイツを」


独白を口から漏らす、死ぬ。

終わりが来る。


「フェーズ1《ワン》起動! 装弾数三発!!」


銀のハンドガンに付属された、レバーを引く。

すると青と水色を纏った、電気の塊が銃の先端に形成される。

耳に電気の音が響く、鼓膜が揺れる。

まるで映画を見ているときに、大きな音楽が流れている時の感覚に近い。

電気の塊は俺の視界を完全に覆う、もちろんこれでは攻撃が来ているのかわからない。

戦闘ならば、圧倒的に致命的だ。


だが今はそんなことなんて、全く気にしない。


「1」


口に出す、すると電気の塊が全体的に小さくなったことが目で見て理解できた。

それを理解するや否や、目に止まらない速さで青色の何かが、赤の光に向かって飛んでいく。

それはさっき見た“電撃の矢”だった。


その青の光は、赤色の光と拮抗を始める。

二つの光が目を焦がすほど、激しい光を巻き起こす。


奥にはやつが見える、俺のことが見えたようで動揺している。

またあり得ないことに対して、疑問と驚愕を漏れ出している。


赤の光と拮抗している、だが……青色の光の方が押されていることに気づく。

確かに赤の光も最初よりかは、光度が弱々しくなっているのは確か。


「2!!」


大きな叫び声にも近い声を口から出す。

電気の塊である青の光は一段と小さくなり、サッカーボールほどの大きさに、変化して小さくなっている。


すると二つ目の電撃の矢が一発目の肩代わりをするように、再度拮抗を始める。

赤の光は這いずることを妨害される、もう対象は目の前にいるのに。


「お願いだ……持ってくれ!!」


現実はあまりにも理不尽、でもこの願いは叶えてくれてもいいんじゃないか。

それを想いながら、拮抗状態を傍観する。


だが、その矢も着々と小さくなっている。

赤の光も弱くなっているのは確か、でもそれにすら及ばないほど弱い。


青の光は矢という形を、保つことができなくなっていた。

それは棒と同等になり、光も壊れかけの蛍光灯並みの光度に成り果ててしまった。

そして——最後の希望も、その場で綺麗に消滅してしまった。


赤の光はまた這いずりを始めた。

横幅も3メートル、光度もほぼない。

それでも生身の人間が直撃すれば、体全身が吹き飛んで致命傷になる。


「3!!」


俺は希望に身を任せすがり、最後の電撃の矢を赤の光に放った。

先端の電気を纏う光は消えた、全ては矢に変換される。

ここで勝てなければ、全ては無に還る。

反逆という彼女との約束も、彼女に対する想いすらもここで終わる。


拮抗を始める、若干青色に光が優勢に見えた。

赤の光と青の光が大きな熱を巻き起こす、それは俺とやつの体を包み込むほど強烈。


また倒れそうになった。

膝をついて、それでもたった一つの希望にずっと縋り続けた。

絶望に包まれても、希望は絶対忘れることはしない、ただやつに勝てることを思い続ける。


「これで、終わってくれ」


負けたくないという、願いが俺につきまとう。

拮抗は2分ほどに近づいたことに気づく。

そして最後は、まるで雷霆の如く巨大な爆音が鳴る。

その時、両方の光は完全に消滅した。


両者は攻撃方法が、たった一つに絞られてしまった。

最後の抵抗として、俺は銀色の銃を手に強く握る。

爆音によって形成された、白色の煙の奥に慣れすぎたものが見えた。


赤の光。

それは音速でこちらへと接近し、距離が既に4メートルほどまでしかない。


「尋常に」


独白をする、停止される意識の中で一つだけ。


銃全体を前に向けた、すると黒い影が俺へ飛び込んで来る。

赤の光は俺の心臓部に向けられた、穿つことができれば俺は死ぬ。


俺も影の心臓部に、銃を向けた。


「死ね」


「お前が」


それを言った。

最後に、銃声が耳に響いた。







17話 終



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