機械廃都市
第八話:機械都市
音の正体である、機械兵は地上を闊歩していた。
俺はそれをじっと見つめていた、
理由としては…初めて見るものに対する好奇心からだったと思う。あとは、見た目に対して惹かれていた。
太陽の光を反射する鋼鉄、俺とカエデを狙撃した銃、機体の腰の部分に帯刀されている銀色の剣…どれもこれも興味をそそる代物だった。
いや…そんな浮かれている場合ではない。
今は見方によっては、絶体絶命としか表すことができない、運がいいことに
いくらアレイシアから貰った、ハンドガンが強かろうと、鋼鉄によってコーティングされた機体を貫通するとは思えない……。
「とりあえず、隣のビルに行きませんか?」
すると彼女は、ゆっくりと歩き出した。
機械兵はビルの前をずっと徘徊している。俺はそれを見る余裕は今からなくなると知らずに。
「七星クンこっち、ここから行けるよ」
すると彼女が手招きをして、こちらに来るように促していた。
彼女の方へ行くと人が一人分なら通れるような穴があった。とは言っても隣のビルまでは5mぐらいはあったと思う。
下を見るとビルとビルの間に、瓦礫の山が出来上がっていた。
ここから落ちた場合瓦礫の山に落ちた後、先ほどの機械兵に塵すら残らない猛攻を浴びせられるだろう。
「じゃあ、行きましょうか…」
「行こっか」
俺はビルとビルの間にある空間に、手をかざした。すると下の山のようにある瓦礫が浮遊して、瓦礫が集まり橋が架けられた。
その橋を通り隣のビルへ行った、崩壊しているため、先ほどまで入っていたビルとあまり内装の変化は見られなかった。
とは言ってもこちらの方が、崩落の規模は明らかに大きい。なんせ空間の中心に巨大な穴が形成されている。
「…これは、完全に爆発の後ですかね?」
「そうだね予想だけど、あの機械兵のせいだと私は思うな…あれだけの武装をしておいて、爆破攻撃ができないわけがない」
俺は少し気になって、巨大な大穴を確認しに行った。
その大穴は軽く数十メートルの高さがあった、ビルの最下層のような空間は暗闇に染まって、肉眼で目視することは不可能だった。
「落ちたら、ひとたまりもないな……」
「あまり見ない方がいいよ、平衡感覚がおかしくなって落ちるかもしれないよ…」
彼女の助言を聞いた途端、その大穴を見るのをやめることにした。
「にしてもすごい荒れようですね、どれだけの被害だったんですかね…」
再確認しても人の力でここまでの所業をできるのかと少し関心した、破壊力も相当だが何より鉄骨などは綺麗に残っていことに違和感を覚えた。
俺は予想を立てた…。
多分不要なところだけは破壊して、必要なところだころは残しておくという意思のようなものを感じた。
なぜだろうか…これはただ単に襲撃をしたというより……解体作業のようなものをしていたと感じる。
「七星クン…こっちに来て!!」
彼女が非常に焦った声を、出して来るように言ってくる。その声の特徴は切迫詰まっていった気がする。
「どうしたんですか?すごい焦っていますけど……」
緊迫感を纏った声を出す彼女を横に、俺は全く焦ったような声ではなく…かなり呆けているような声だった。
「アレ…って…何」
「なんですか……は?」
そこにはあり得ないことが起きていた、そこには異常…いや絶望?違う…これは完全に絶体絶命だった…。
その光景は…先ほどの機械兵が何百機も集まって、街の中心部を止まることなく行進していた。
自身の脳内がそれを否定してくる、あまりにも異質な光景に精神が焼き切れそうになる。
足が小鹿のように震えて、動くことすらままならない状態になり果てていた。
「七星クン…アレを回避する方法は…」
「あんなの…異常ですよ…だって一機だけでも、かなりの戦闘能力を持っていたのに、それが数百機以上もいるなんて…さすがにどうすることもできないです…」
するとガシャという音が地上から聞こえた、その音はこちらに接近してくる、俺とカエデがいる廃ビルの前で停止した。
その瞬間謎の音が聞こえた、まるでチャージをしているかのような音。
「…この音は、まさか!?カエデさん!離れて!!」
彼女を確認すると俺が言う前から気づいていたようで、既に窓から離れていた。
俺は避けた瞬間、窓の淵が少しオレンジ色に光っていた。
これは…確実に直撃する、攻撃方法は多分爆破攻撃だろう。
体自体が風圧で飛ばされてほぼ確実に、全身に大きな損傷を負うことは免れない。
「こうなったら!」
その時、後ろにステップしながら、クロスアームブロックをした。
オレンジ色の光は少しずつ、光度を増しているのが一瞬目視できた。
そして床に落下しようとした瞬間、彼女から後ろに引っ張られた。
「生成!!」
彼女が声を上げた、声が終わると共に金属の壁が形成される。その鉄の壁は正面が全く見えなくなるほど巨大だった。
鉄の生成が終わると、チャージ音がピークになった。その瞬間、鼓膜を破るほどの音が部屋中に轟く。
鉄の壁が赤熱化しだし、非常に強い熱風が吹いてくる。皮膚に熱風が直撃して、燃えたような痛みが体全体に広がる。
この音は先日聞いた、そう…爆発音だった。予想が当たり、この先何が起こるか大体予想ができる。
まずこの廃ビルの崩壊が始まると予想する、その考えが頭によぎると、コンクリートが小さな音を出し始める。
「カエデさん…分かってますよね?」
俺は彼女に問いただすと、こちらを見てコクリと頷く。
俺は口角を少し上げて床に手をつけた。
コンクリートは徐々に音を増していき、やがてビル内部に亀裂が発生し始めた。
コンクリートの粉が、パラパラと降り注ぐ。
「飛行」
その一言だけを言うと床の一部に正方形の断面ができた、その断面は亀裂ではなく明らかに人工的なモノであった。
途端に床が浮遊し始め、空を飛行し始める。
浮遊した床は崩壊してくるコンクリートや鉄骨を、難なく避けて外へ飛び出した。
地上にはいくつもの機械兵が、闊歩している。真っ逆さまに落ちれば、銃弾と爆弾の餌食になると空を飛びながら考えた。
この集まってきた機械兵は先ほどの行進していた機械兵の中から、何機かが分散したモノたちだろう。
機械兵は上空にいる俺たちに全く気づいていない様子だった…これは、認識範囲外にいるからだろう。機械兵たちは互いがぶつからないようにうまく避けながら歩行をしている。
「…カエデさん、これからどうしますか?あの場所には…到底戻れろとは思えませんし」
「うん……とりあえず、私としては郊外内の遠くの方──あまりビルが崩壊してないところがいいと思うな」
なるほど…ビルがあまり崩壊していない区域は、あの機械兵の集団もいる可能性がかなり低い、もしくはその場所にまだ辿りついていない確率がかなり高い。
安全を考慮すると、そこに行くのが一番の危険回避になると思う。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
───数十分後
それから数十分間たっただろうか、お互いで地上を監視していると、巨大な川があった。
その川は…まるで、何かの境界線の役目を担っているようだった。
そしてその川の先を見ると、驚愕すべき光景が目の中に飛び込んで来て、俺は飛行操作をミスするところだった。
その光景とは…。
全く損傷していない街がそこにあったのだ。何を言っているかどうか分からないかもしれない…だが目の前には、本当に全く破壊された様子のない街があった。
「どういうことだ?なぜ…こっちは損傷が激しいのになんであっちだけは──」
混乱した脳内を、飛行操作をしながら必死に整理する。
こんなことが本当にあるのか?
機械兵でもこんなことはできないのではないか?あえて破壊しなかったのか?
脳内が熱を出して今にでも、シャットダウンをしそうになる。
だが飛行操作と思考を交互に巡らせて、自身を上手く操作した。
すると彼女が声をかけてくる、発熱する脳を冷却した。
「ねえ…これって川が破壊された場所と、破壊されていない場所の境界線になっているんじゃないかな?」
その言葉を聞き地上を再確認した…彼女の言ったことは当たっていた。
今まで全く観察せずに、難しいことを考えていた自分が馬鹿馬鹿しくなる。
そして一つの提案を彼女に投げかけた──
「カエデさん、ここで着陸していいですかね?自分もそろそろキツイんですが……」
「じゃあ私が変わるよ、七星クンは地上を見張ってて」
彼女が変わってくれるらしいが…ちょっと頭によぎることがある…‥。
先日彼女はガイアマテリアルの影響で腹部に包帯を巻いている、つまり…いつ彼女が倒れてもおかしくないという結果に至った。
あまり口には出したくないが、あの日から小悪魔のような対応が減って、時折患部を抑えることがある。
……いやまあ、あまり褒められたことではないが……意見を尊重して操作を変わることにした。
「じゃあお願いします…もしキツくなったりしたら、変わってもいいですからね?」
忠告するとすこし微笑んで、空中に浮いた白色のコンクリートを操作し始める。
俺は地上を見てこの不思議な光景を、しみじみと直視していた。
不思議な
感覚が渦巻いて、声を出すことができなかった。
「ねえ、七星クン?ちょっと気になるところがあるから着地したらダメかな?」
彼女が着陸したいと言い出した、もちろん構わないと言った。
コンクリートがの塊が地面に、ゆっくりと降下する。
着地した瞬間、コンクリートの塊は砕け散った…。
俺は少し、体がビクッと震えた。
なぜか彼女は全く動じていなかった。
「あまり…変わった様子はないみたいですが…」
数十分ぶりに、地上に足を付けたが…これと言った変化はあまり見られなかった。
不思議な空間だからちょっとは、一般世界じゃあり得ない現象を起こして欲しかった。
まあ実際に起きていたら、この場で死ぬ。自分的には未開の土地で死ぬのは絶対に避けたい。
「確かに今はね…言い忘れてたけど、これは魔術師の幻惑の可能性があるかも知れないけどね」
魔術師が幻惑…確かに可能性としては大いにあるだろう。実際魔術師といえば、人々を惑わせるなどのイメージが一般的に根付いている。
本当の魔術世界でも、人々を惑わせる魔術があるのは確からしい。
「ちょっと、やってみよかな…本当の幻惑ならこの言葉が効くはず」
彼女はその一言を言い終えると、地面に手をつき何かを言い始める。詠唱(?)のようなものを言いだした、俺には理解できない言語をスラスラと口ずさむ。
「これで完了……幻惑ではないみたいだけど…奇襲はあるかもしれないから気をつけないとね」
幻惑を…解析した?のかな?
正直何をやっているのかわからないから、そう解釈していいのではないか?
そうとしか理解できないか…。
「さてじゃあ行こうか、とりあえず目の前にある家に行ってみよう」
彼女は一歩一歩、歩き始める。
靴の音が耳に響く、優美な彼女の姿がそこにはある。
その後ろ姿を見ながら、彼女の後に続いた。
住宅街には静寂が広がっている、車の音も聞こえない。
線路はあるのに全く電車が、線路を通過することは無い。
人も全くいない。
それでも……なぜか。
───ここは…まるで…。
人がさっきまでいたように見える。
こう思っただろう、なぜそんな結論に至ったのか?
……ここには、人を消した"何か"がいるからだ。
----------ー-----------
────対策局・天象階
そこは
実際はただの談話室なのだが。
「おいおい、また仕事かよ……昨日やっと反乱軍を壊滅させたというのになぁ……」
そこには一人でノートパソコンが、置かれた机の前に立つ青年がいた。
銀色の髪、氷河を思わせる程の水色の目をしている。
顔はテレビ番組に出たら、すぐに引っ張りダコになるほど美しい。
「えーっと……二人……?二人だけ?ふざけてんのか、運営局の局長は……」
「いちいち人にこき使わせんなよな、クソがぁ!」
……見ての通りだがせっかくの美貌が、台無しになる程の口の悪さだ。
「……やってやるよ。そいつら二人をぶっ殺したらいいんだよなぁ?」
「そいつらは郊外にいるんだよな?」
「分かった分かった分かっよぉ!
対策局の"
─────その者は異界魔術の使い手。
名を────
第八話 終
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