回想……堕ちた希望
回想───2
あの日から俺の人生は絶望に叩き落とされた──
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知っていると思うが、俺の両親はとっくの昔に亡くなっている。
それから俺は親戚の家に引っ越してしまうことになった。
親戚の人たちは全員、優しかったのでそこまで苦労はしないかと思っていた。
その考えが俺の人生が絶望に堕ちる要因だと、今でも思っている───
正直なぜ自分がこんなことになってしまったのか考えていたりする。
理由は当然分かっている、でも考えてくもないし言いたくもない。
だが…彼女に出会って思い出してしまった。
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「イタっ…」
今何をされたかというと、腹部を殴られた。
親戚にいる二十代前半の男性からされた、理由なんてただの八つ当たりだろう。それと、神崎に関わっていたからだと思う。
でも痛みには慣れている、ここに来てから何回もされたから……。
それでも…自分の中では何か違和感がある。
傷つけられることに対する恐怖ではなく…誰かを裏切ってしまったことに、対する罪悪感のようなものだ。
そして数発殴られた後、俺はそのまま清潔だが壁などに損傷があり雨漏りもする部屋に放置された。
「おい、もうすぐ夕飯だから来いよ」
俺は立ち上がり「はい」と答えた。そして穴が空いた障子が閉じられて、廊下に入っている、夕日が俺の部屋を少しだけ照らしていた。
俺は先ほどできた傷を手で押さえた…血液が出て痛みがあったが必死に堪えた。
「遅えよ早く座れ、お前はただでさえも嫌われてるんだからな」
俺は用意された食事の前に座った、だが…その食事は前日の残り物がほとんどだった。
冷たくあまり美味しくない、食事を口に入れる。
芋に関しては硬くなっており、到底まともな食事をしていたら、できるだけ口に入れたくないものだと思う。
「ごちそうさまでした……」
非常に小さく悲しみに溢れた声で、食事終了の台詞を口から出す。小学生が食べれるようなものではなかったがね。
その後お風呂に入り数時間勉強をした後、布団を敷いて寝ようと思った。
すると誰かが部屋の前に来た、誰だろうかと思って障子を開けた。
「あ、その傷大丈夫?」
そこには16歳くらいの女性が立っていた、今の言葉を聞いた限り、俺の傷を心配しいているようだった。
この人もなぜか信頼できない、信頼しろと言われてもこんな家庭の人間ならば全く信頼にならない。
俺はこのようなことが頭の中に掲示されたので、大丈夫と言ってその場を凌ごうとした。
だがその女性は、予想もしていない答えを口にした。
「でも…やっぱり傷口は塞いでおかないと、もし病気になったら…」
「……でも…手を煩わせるようなことは、したらいけないって言われたので………」
そう答えると、俺は手を引っ張られて下に連れて行かれた。
俺は何が起きているか、分からずなかった。なぜ助けてくれるのか、なぜそんな優しく接してくれるのか。
そんな答えも分からない疑問を、自身の中に作り出した。
すると女性は救急箱のようなものを取り出した、その箱を開くと注射器や医療用の縫合セットが入っており、素人の俺から見たら病院にある機能をほとんど備えつけているように見えた。
その中から、いくつかの器具を取り出した。
「少しだけ知れないけど、我慢してね…」
すると透明の液体を容器から出して、傷口につけた少し染みるような痛みがあったが、それは殴られる痛みよりかはマシだった。
「よし!これで完了!一日寝たら傷口が完全に塞がっていると思うよ」
一連の治療が終了して、女性も少し疲れているようだった……その時少し気になったことがあった。
それは───なぜ俺を助けてくれたかだ。
「少し聞きたいんですけど…なんで俺を助けてくれたんですか?」
その言葉を聞いた女性は少しの間を開けて、演説のように語り出した。
「私は君がいじめられているところを見てね、助けようと思った。最初は君に対して、恨みしかなかった…君のお父さんがひどい実験を繰り返したって聞いたけど……君を見ていると、そんなことをしているような人が親だと思わなくなって、君のお父さんがいい人だって思ったんだ」
俺の…父親が善人?何を言っているんだ?俺は、父親が悪人としか聞いてなかった。でも、なんで善人だと感じたのだろうか?
次々と思い浮かぶ疑問に対して、答えを導こうとした。
そんなことを話していないにも関わらず、女性はまるで心を読んでいるかのように答えていった。
「君のお父さんは…そんなことをするような人じゃないってね、前に数回会って話したことがあるけど、そんなオーラ?のようなものが感じ取れなかったんだ」
…親を憎んでいる俺からしたら、何を言っているか全く理解できない。
「そうですか…優し人なんですね………」
女性はありがとうと言って、立ち上がり救急箱を元あった場所に戻した。
戻すときに、女性がこう言い放った。
「それでもいくら悪いことをもし、過去にやっていても“傷ついた人を助けるのは当然”だと、私は考えているかな……」
「それじゃ私は部屋に戻るね…君はまだ子供だからちゃんと寝るんだぞ?」
笑いながら忠告のようなものを言った後、部屋を後にして自室へ戻っていった。
俺もトコトコと足を動かしながら、自室へ戻った。
戻る時にモヤモヤしていた、気分が一瞬で晴れた気がする。
傷ついた人がいたら助ける…この言葉でどれだけの人々が救われるのだろうか。この世界は弱い人が淘汰されている。
ただ普通の生活がしたかっただけなのに、この世界の理不尽に自分達の人生が、捻じ曲げられて、壊されて、操られて……これ以外の災厄もまだあるはずだ。
───この時から、この理不尽と支配によって普通に生きたかった人々が、この国と世界によって踏み潰されていく…この現実は到底受け入れたくないものだ。
でも、これが今の世界のあり方であることは、老若男女すべての人々が理解しきっていることだった。
「…ひどい話だな」
俺は敷いた布団に、仰向けになりながら考えていた。
考えれば考えるほど、理不尽に対して強い敵意を感じ取った、普通が与えられない人がいることに疑問と底知れない怒りが巻き起こった。
「どうすることもできないし、誰もが理不尽を無くしたいと思っているよな…俺一人の力じゃどうしようもないけどさ」
少しの悲しみのようなものを覚えた。
「寝るか…こんなこと考えても俺はどうすることもできないし」
そして…俺はゆっくりと目を瞑って、思考を完全に停止させて、瞼の裏に広がる暗闇を見た。
…その数秒後、意識が遠のいていった。
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それから高校生になったとある日───
「朝か?」
外から鳥のピヨピヨという鳴き声が聞こえた、その鳴き声はすぐにどこかへ、消えていってしまった。
「…降りるか」
布団から立ち上がり、そのまま放置して一階へ降りていった。
とりあえず降りた、すると一枚の紙が置かれていた。そして家には誰もいなかった。
その紙にはこう書かれていた。
お前のせいで…私たちはめちゃくちゃだ。
───お前の世話はもう無理だ。
これからは一人で生きろ。
私たちは仕送り以外何もしない。
……お前の家はここではなく、新しい家を用意しておいた。
だから…早くこの家から消えろ。
俺はその時、自身はもう失望されたと理解した。
この日から俺の感情はほとんど死んでいた思う。
誰からも見られず生きていきたい、この世界で何が起きようがどうでもいい…そもそも俺は生きてて意味がない。
もし意味があったとしても、それは誰も彼もが酷評するような存在価値だろう。
この世界の悪いものだけを集めた存在だと…この時だけは思った。
────回想2 終
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