揺らいだ死生観
第七話
───その時から、俺の死生観は完全に狂ってしまった。
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気がつくと、家の中に立っていた。
正確には洗面所だろうか。
「はあ…はあ……」
先ほど、人を初めて殺した…その時の記憶が脳内を駆け巡った。
「俺は………自分の手で人を殺してしまったんだな…」
本当は受け入れたくない、苦虫を噛み潰したような気分になる。
同時に吐き気をも催してきた…少し頭痛もする。
でも…さっき人を殺したことは───紛れもない事実であり、塗り替えようのない真実だった。
「今日は…疲れた」
疲れたと言い自身の身体に睡眠をとるよう、促した…だがそんなことをしても現実は変わらない。
その中に今日のことを忘れたいと思う、思いも含まれていたのは当然だ。
「少しシャワーを浴びてっと…」
着ていた制服を脱ぎ、洗濯カゴに入れる。
その時、鉄臭い匂いがする。
「これ…血がついてるけど…少し洗っておいた方がいいな、この後コインランドリーに出すし」
コインランドリーに血がべったりと付いた学生服を持っていったら、断然怪しいと思われる。
怪しい所じゃないな、通報される。
でもさ、急に大剣で切りつけてくる人がいたら
流石に身の危険を感じて切り付けて住まうのは仕方ないかと。
「とりあえず、シャワー浴びましょうか」
風呂場に入りシャワーを出す、浴びるシャワーは非常に強い雨の如く、俺の体全体に降り注いだ。
かなり熱かったので、火傷するのではないかと思考を巡らせた。
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「あちゃー…これはやられちまったな、ここまでくると悪魔の所業かと疑われるぞ」
独り言を口からこぼして、悩んでいる者がいた。
その姿はスーツを着ており、年齢は20代前半に見受けられる。
「地面のアスファルトを隆起させて、鎖状に加工し相手を拘束しから、最後に拳銃で眉間を一発か…本当に化け物だな異界魔術ってのはさ」
「そして、もう一人は……うわ、これ日本刀で身体ごと切り裂かれてるじゃんか…これは流石に重要報告として上(運営局)に言っておかないとな」
男は持ってきた紙に何かを書き終えると何かを唱えて、霧のようにその場から消失した。
戦闘に敗北して魂が抜けた死体も、男と同じ様にその場から消失した。
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明かりが少しついただけの部屋で、あることをしている青年がいた。
「よっと…あれ?これまだ無理な感じかな?」
それは、先程まで血のついた学生服をシャワーを浴びるときに、懸命に洗っていた青年だった。
ちょうど洗い終わったのか、夕飯を作っていた。
「異界幻像で試しに、ご飯を作ってみたけど…やっぱり、慣れないと難しいんだな」
見た目は非の打ちどころのないのだが、味が全くしない。その中でも、味噌汁に関してはただのお湯である。
ちなみに白米はべちゃべちゃ、魚は見た目だけは普通なのだが食感は綿のようだった。
「これは…普通食べるものじゃ無いよな」
文句を言いつつも、机に配膳された夕飯モドキを口に入れる。
食感と味は最悪だが、栄養があると自身に言い聞かせ箸を進める。
「ごちそうさまでした…キツ…」
すぐに食器を洗い始める。
ほんの僅かな夕陽に照らされた部屋の中に、蛇口から出てくる水を使って、食器を洗う音が反響する。
「疲れた…で、このシャツはどう洗えばいいんだよ……飲み物をこぼしたシミとして誤魔化すしか無いよな……」
不安が頭の中を駆け巡るが、頭を振ってその考えを打ち消した。
少し鉄の香りがするが我慢した。
「明日からどうしようかな……できるだけ普通に振る舞った方がいいな」
天井を見ながら明日のことをずっと考えていた
どう振る舞うか、脳内シュミレーションを何通りも繰り返した。
いい案を思いついたらその案を改善して、新しい案をまた捨てる。
何十回、何百回もシュミレートして、頭が痛くなった。
そして21時を回った頃だろうか、玄関の扉がノックされた、俺は少しの恐怖を抱きながら玄関に行く。
「誰なんだ?宅急便なんて頼んでもないし…
待った…まさか、対策局だったりする?」
玄関のドアノブに手を掛ける、手から滲み出る汗の感覚を実感しながらドアノブを動かした。
外の空気が入ってくる、冷たかった気がした。空気は全く肌に密着しなかった。
そして力強くドアを開けた。
「……?」
ドアを開けても誰もいなかった、その代わりと言うべきか足元にダンボールが置かれていた。
色は真っ黒で、領収書など貼っていなかった。だがダンボールの中心に謎のマークが貼られていた。
この時点でかなり異質な物だと分かった。
「なんだこれ……あんま重くないけど───誰が持ってきたんだ?」
持ち上げてみると、中からガシャガシャという音が聞こえた、小さいものが入っているのだろうと思った。
「開けてみようか…何が入っているかわからないけど、とりあえずカッター持ってくるか」
その箱を机に置き、戸棚からカッターを取り出した。
そして…恐る恐る、その箱に貼られていた黒色のガムテープに切れ目を入れた。
数秒間をかけてガムテープを切り終えた。
切り終えるとすぐにダンボールを開封した、中には少し小さい、サイズをしたダンボールとはまた違う質感をした箱が入っていた。それにも、謎のマークが貼られていた。
「これは…なんなんだ?」
小さな箱を取り出すと、カチャっという音が鳴って箱が自動的に開き始めた。
その箱の中から、尋常じゃないほどの煙をした煙が出てきた。
「なんだ!?というか、この煙すごい冷たい!」
煙は異常なほどの冷たさを纏って、俺の肌を刺激して消えていった。
煙が消えると、黒色の金属的な輝きが見えた。
そこには目を疑うものが入っていた。
「これって…まさか…」
その金属的な輝きを見せる、黒色の物体を手に取った。
その物体はかなり冷たく、手が凍りついてしまうほどだった。
「………まあ、分かってはいたけど…実際に送られてくるとは考えてもいなかったな」
今更だが言わせてもらおう、俺は送られていたきた物体の正体は大体予想できていた。
その物体の正体は───ハンドガンだった。
とは言っても通常のモノとは違った。ハンドガンには、目に見えるほどの大きさをしたレバーが取り付けられていた。
「これ…絶対マズいやつだろ」
……レバーを引いてみたいという考えと、絶対引いてはいけないという考えが拮抗していた。
「いや、やめとくか…魔術とかだったら、絶対自分の命を犠牲にするとかだろ」
床に投げたハンドガンを拾い、机に置き直した。
ハンドガンが入っていた箱をもう一度覗いた、中には五発分の銃弾が入っていた。
「冷たっ!?いくらなんでも冷えすぎだろ…」
五発分の中の一つの銃弾に触れた、冷たさはハンドガンとは、比べものにならない冷たさを纏っていた。
「…大きさとかは普通の銃弾と変わらないのか」
興味津々で銃弾を観察した、異常な冷たさ以外は特に変わった様子はなかった。
「これ…届けた人の名前とか書いてないのか?いや、そもそもこれって身元明かすこと自体がおかしいか…」
その言葉を言い終えて箱を棚に直そうとした、箱を持ち上げると、箱の中からゆっくりと一枚の紙が落ちてきた。
「お?この紙は?」
箱を床に置きその紙を拾った、紙にはかなり綺麗な文字で文章が一行だけ書かれていた。
文章の内容は…。
貴様へのプレゼントというやつだ。
そして、宛先人の名前は───アルベマ・アレイシア=ロドネウスだった。
「あいつかよ…」
俺は数秒間紙を見て、箱と一緒に棚へ戻した。
そしてソファに腰掛けた。なぜか哀愁漂うあまり良くない空気がそこにあった。
「あんまいい気分じゃないな…とりあえずこの前買った小説を見るか…確かラノベもあったな」
本棚からライトノベルを取り出し、淡々と読んだ。
寝る前まで読んでいた、集中しすぎて俺からしたら数十分にしか感じなかった。
「ん?もう時間か?」
半分まで読み終えたところでしおりを挟んだ、数時間ずっと本ばっか見ていたので目が疲れた。
背伸びをした後、部屋の電気を切った。
布団に包まり今日のことを考えながら、涙を出した。
何かを裏切ってしまった罪悪感で精神がどうかなりそうだった、そして俺は無理やり意識を闇に落とした。
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朝になりベッドから、体を起こし床に立った。
そして、いつものように準備をして学校に行った。
それから三日間経つのだが…この三日間の出来事を簡潔に解説しよう。
一日目、普通に接した鐘下とマフユは全く気づいていなかった。
だがカエデだけはいつもと違って、かなり遠慮したような態度をとってくる。
二日目、鐘下とマフユも何かに気がついたのか、かなり遠慮したような態度をしてきた。
俺は気づかれたかと思ったが、話題に出してこないので気がつかれていないかなんて考えていた。
昼休みにカエデから、大丈夫か聞かれたが俺は大丈夫だと何回も言ってその場を凌いだ。
三日目、二日目よりかは態度が変わったが、まだ遠慮した態度が抜けていなかった。
少々、三人に勘づかれたかとずっと考えていた。
そして───終業式当日の朝。
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「ん?朝か…って今日が終わったら夏休みか」
俺は言葉を言い終えると、いつものようにベッドから立ち上がった。
そして、コーヒーメーカーを起動してコーヒーを沸かして朝食の準備をする。
毎日パンとカフェオレだけだと、栄養失調とかで倒れる可能性もあるかもしれない。
だから、この三日間の練習の成果を今ここで見せる時!!
脳内で言いながら、異界幻像を起動した。ちなみに豆知識だが、異界幻像は起動しても音は鳴らない。
そんなことを考えながら、初めてご飯を作った時のように、作るものを思い浮かべた。
するとコトッという音が耳に響いた───それは明らかに、食器が落下する音だと考える必要もなく理解した。
すると後から連続して二つも酷似した音が響いたその音が完全に無くなった時、俺は目を開いた。
「よし…食べるか!」
俺は箸を持って、手を合わせた。そして、いただきますと言い作り出したものを口に入れた。
「美味しいな…こりゃ最高だ、いくらでも食べれるってわけじゃないけど、これが合えば最低でも数日は耐え凌げそうだ」
レビューのようなものを言いながら、息をする間も無く食べた。
数年ぶりにこんな美味しい料理を食べた、そして気づいた時には食べ終わっていた。
「美味しかったぁ…学校行くか」
コーヒーを飲み、学校に登校した。その日は少しいつもより朝が楽しかった。
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いつものように学校に行き、カエデと話していた。
「おはよう七星クン♪」
最後に音符がついていた気がする…。
「おはようございます、カエデさん」
こちらも彼女の挨拶に応答した、彼女の赤い瞳を見つめながら。
「そうだ…七星クン、今日って時間ある?」
心臓が少しドキッとした、デートの誘いかとおれは想像した。
だが話を聞いてみると、全くデートとは言えないものだった。
「ありますけど……何かあったんですか?」
「うん…この前、マフユからこの街の郊外に行ってきてほしいって、言われたから今日時間はあるかなって…」
ああなるほど、確かこの前言っていたな…郊外とか、最後に行ったの何年ぶりだ……。
「じゃあ、放課後また会おうね!」
彼女が雪のように白い手を振って、教室に行く
その姿を少し虚な笑顔で見届けた。
彼女が完全に視界から消えると、少し眠かった意識を叩き起こして教室に向かった。
「……郊外か、なんか少し怖いな」
自身の世界に浸りながら、外を見た。
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それから学校が終わり、カエデを待っていると彼女の声が耳に響いた。
落ち着いている声で疲れた脳が、とろけるようだった…。
「じゃあ行こうか、七星クン?」
「ええ、行きましょうか」
彼女に連れられるがままに歩いた。郊外までは軽く20から30分かかる。
あと俺は異界幻像に局長から届いた、ハンドガンを登録ておいた、何かあっても対策できるように…。
「七星クン…何かあったの?」
どうしたんだと思った、そしてあの日のことがフラッシュバックした。
どうにか誤魔化すこともできるので、誤魔化そうとしてみた。
だが───その行動…いや──その方法は全く意味をなさないものだった。
「いや何もないですよ…ははは……」
完全にバレるような話し方をした、これでバレなかったら逆にすごい。
…ワンチャン切り抜けられるか?
「やっぱり、なんか隠してるよね?」
ダメだった、すぐにバレた。
これは…本当のことを話した方がいいな……。これでずっと隠していたら、嫌われてしまうかもしれないし…。
そうだ──ならここで、隠さずに全て言ってしまおうか。
「俺…実はこの前──対策局の人を殺害してしまって…」
すると彼女の目が大きく開かれ、こちらをじっと見つめてきた。
「仕方ないよ…私も何回も殺してきたから……それでも初めて殺した時の罪悪感はいまだにかき消し切れないけどね…」
…俺は全く言葉が出なかった……出そうとしても、息が詰まって出すことを拒んでしまった。
なんとも言えない時間がすぎ、郊外の廃ビル群に到着した。
廃ビル群は目視できる部分でも、コンクリートが崩壊して中の鉄骨が丸見えになっていた。
普通ならば立ち入り禁止になるが、街が全く管理しておらず誰の土地でもないので普通に入れるが、誰も不気味がって全く入らない。
そして俺とカエデは廃ビル群の間を歩き続けた、途中でこけそうになったが、なんとかこけないように頑張った。
「カエデさん……ここにマフユさんから言われたものがあるんですよね?」
「うん、絶対あるはずだよ…マフユは嘘なんてつかないから」
そんなことを話していると、機械が擦れるような音が遠くから聞こえていた。その音は少しずつ大きくなってった。
「七星クン、こっちに来て」
彼女は俺の手をとって廃ビル群の一つに走っていった、その時……。
銃を乱射する音が聞こえた、その銃弾は完全に俺とカエデを目掛けて撃っていると確信した。
命中するかと思ったが、彼女が全て避けて行った。
軽く5階ぐらいに着いた…その時には既に乱射する音は完全に無くなっていた。
「なっ……!?」
その音の正体が見えた途端、思わず声を上げてしまった。
その音の正体は───機械兵(ロボット)だった。
第七話 終
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