二日目
四話
瞼に一筋の光が当たった。
「んっ…」
その外光は外から差し込んでいるとわかった、その光の正体は見慣れた朝日だった。
もう朝になったのかと思い布団から立ち上がった、そして自身のスマホを確認すると時刻は
6:15を示していた。
「はあ、さて学校にでも行きますかねっ…と」
背伸びをして、独り言を口にする。
「おはよう、七星クン」
聞き慣れた声が聞こえたので、おはようと返答した。
「ん?待てよ…」
あることを思い出し頭が完全に覚めた。
横を見ると、カエデがいた。
「昨日はありがと…おかげで体の調子も治ったよ」
すると昨日のことを思い出した。
「あ…」
そうだ、昨日彼女と一緒に寝たことを思い出した。
少しの時間、時が止まった気がした、いや本当に世界中の時間が止まった気がしたんだよ。
「私も服着替えよっかな……」
チラチラとこちらを見ながら呟く……
おいふざけんな、俺のことを見ながらそんなこと言うな、理性が保てなくなったらどうしてくれるんだよ。
「あの一応言っておきますけど、絶対に着替えるのは見ませんからね」
「なんでー?」
顔をのぞいてくる、俺は毎回こうなってから思うことがある。
それは、この子の距離感がわからないということである。
「ふ〜ん」
「なんですか?」
ずっと顔を見てくる、いやこれはイジっているのに近いんだろうか?
「まあ着替えてくるからさ、少し待ってて」
「わかりましたよ…」
隣の部屋に彼女が行っている間に、少しの時間があった。
「なんで、こうなっちまったんだろう」
まだ恋人なった自覚が少し無い、いや本当にないんだよ。
なんというか、夢をまだ見ている感じに近いかな?
「ふう、少し外でも見てみますかね」
窓に付けられたカーテンを開けた。
すると、昨夜見たビル群が目に映った。
「相変わらず巨大だな、俺が住んでるハビタブルシティとは大違いだな」
一般市民が集まっている、ハビタブルシティという街がある、そこには高層ビルというものがあるのだが、その高層ビルとは桁外れにこのビル群は非常に大きい。
とは言っても、俺はそこら辺のアパートなんだがな…(寂しい)
「でもここには住みたくないかな、俺はこんな環境に絶対慣れないし」
外を見ながら独り言を呟く、ビル群の下を歩く人々を見ている。
「よーし、準備できたよ七星クン」
後ろに振り向く、そこには制服を着た彼女が立っていた。
身長が少し低いので、兄妹と間違われるのではないかと思った。
「行きましょうか、どれくらいで学校まで着きますか?」
「ん、約10分かな」
案外近いのか、てっきり30分か1時間は掛かると思っていたんだけど。
「それじゃあ、行こ!」
昨日と同じように彼女が手を掴んでくる、イヤな予感がした。
「大丈夫だって、昨日みたいに走ったりはしないからさ」
安堵した、もし走っていたら、自分の体力が持たないだろうが…
あ、予想だけど学校に行ったら…
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「おいちょっと見ろよあれ」
「カエデさんと、あいつがなんで二人で歩いてんだよ」
「おいおい、マジかよ…あんなの本当にありえんのか?」
周りから野次馬の声が聞こえる、その声は俺に対する嫌味がほとんどだった。
付け加えるならば、嫉妬の声も多々聞こえた。
「カエデ?その人って…」
すると…一人の女子生徒が近寄ってくる。
その女子生徒も、カエデに負けず劣らず綺麗だった。
見た目は、赤色の髪に琥珀色の目をしている、身長はカエデよりも少し高いと感じた。
普通に彼氏もいそうな…いや、既に告白されてそうな風格だった。
「この人は…えっと」
「ねぇカエデ…まさか彼氏さんだったりする?」
案の定、見破られた。
いや…見破られて当然かと思った、理由はカエデは誰とも付き合ったことがないと言われていたからだ。
「…………やっぱり親友にはバレちゃうか、マフユ…」
「やっぱりね……あ、君って七星って名前だよね?」
こちらの名前を知っているか、まあ知っていて当たり前だろうけど。
「はい……」
「じゃあ、私も自己紹介するね」
何度か深呼吸をして、数秒間の静寂を開ける。
「よし!じゃあ私の名前は白月 マフユって言うんだけど…まあさっきカエデも言った通り、私はカエデの親友…いや、大親友かな?」
すると、野次馬が少し動揺した。
「アイツ!マフユさんにも声をかけられてッ」
「アイツだけ……天国にいないか?」
何か…俺を極楽にいると言った奴がいる気がしたが…
「ちょ……っ…」
彼女が少し動揺した、そして腕を掴んできた。
すると周りからの、罵声のボリュームが少し上がった。
「おい!お前ッ!!」
「ああークソーー俺もされてー!!」
「うわー…カエデちゃんあんな奴に…」
「一日で…関係深まりすぎでしょ……まさか」
男子からは嫉妬の声が、女子からは陰口か…
こりゃ…大変になりそうだな…でもこんな自分に彼女ができるとはね。
しかもこんな可愛い……
俺には勿体無い気がするーー!
「マフユ、どこかに行こうか」
「そうだね…」
嫉妬の声が聞こえる廊下の中心を歩く、視線と嫉妬しか俺には届かない…
正面からナイフで刺されそうな気もした。
「贅沢だなぁ…」
「俺…奇跡の瞬間を見たよ…ありがとう……神崎…」
バタッ…
「おい!立て!死んでる……」
かなり混沌としていた空間を抜けた。
いや、誰か死んでた気がするけど。
数分ぐらい歩いた、あまり人がいない廊下に来たつもりだが、多分俺の影響で普通に人が多かった。
「カエデさ、やっぱり神崎くんのこと好きなんだね……」
「大好きだよ、七星クンは優しいからね…」
俺は無言で、壁に寄りかかる…美少女の会話を聞きながらうたた寝に入ろうかと思った。
「だけど、大親友に彼氏ができるなんて思わなかったよ」
「それって、バカにしてる?」
「いや、おめでとう、私もそろそろ作ろうかなぁ?」
いかにも、という会話が横で聞こえる。
俺も、もし友達がいたら、こんな言い合える関係になりたかったな。
「……んー」
「クソォ」
不意に横から声がした、確認する。
すると、そこには男子生徒が数十人集まって、俺を直視し続けていた。
「なんだあれ…」
「神崎くんに嫉妬しているだけだよ、カエデが振ったからじゃないかな?」
「仕方ないじゃん………七星クンが大好きだから」
一途なんだな、と思いながら男子生徒の方を見る。
男子生徒の目線は正直怖い…人生でここまで、憎まれ、恨まれたのは初めてだった。
「もうすぐ時間だ…教室行かないと…」
この場から一刻も早く、逃げたかったので適当な言い訳をして移動を試みる。
「じゃあ、行こうか」
「そうだね、もう始まるだろうし」
二人と意見が一致したので、その場から離れることができた。
教室に行く道中、学年差関係なく俺を睨んでくる。
「おお、怖い怖い」
教室に帰り、独り言を呟いた。
自分からしたら視線がナイフのようだった、そしてカエデに対する嫉妬も含まれているだろう。
「はーい、皆さーん、おはようございまーす!!!」
うるせーー!朝からうるさいんだよ、少しは静かに挨拶できないのか。
教師ならば、そこらへんは考えて挨拶してくれ…
「はーいということで、朝のホームルームは終わりでーす!!」
はいはいわかりましたよっと、お願いだから静かにしてくれ。
「やっと、ホームルームは終わりか……気分転換の為に、ネットニュースを見ようかな」
スマホを開き、解除のパスコードを入力した。
そして、ニュースを見ていると一つの記事が目に飛び込んできた。
「んん、ガイア…マテ…リアル?」
名前的に何かの物質を指しているらしいが、俺には全くわからなかった。
わからないのだが、なぜかこういうモノには興味が唆られる。
「おい、お前」
声が聞こえた、誰かが話しているのだろうと思い無視をした。
「そこのお前、聞こえないのか」
近くから声が聞こえた……
まさか、俺に言っていたりする?
「あの、誰ですか?」
言葉を吐きながら、正面を向いた。
なんとそこには、黒髪の俺より背の高い男が立っていた。
他の外見的特徴は、傷だらけであり、体に2から4個の包帯が巻かれていた。
その光景に恐怖を覚えた、今にでも逃げ出したくなるほどだった。
「チッ、やっと気づいたか……耳付いてるのか?」
一言喋る、今にでも殴りかかってきそうな口調だった、いや…下手をしていたら本当に殴られていたかもしれない。
「え、あ、その…すみません」
「はあ、まあいいか……」
その男は呆れた口調で言っていた。
少し失望も混ざっていたかもsれないと、脳で想定した。
「すみません、あの、誰ですか?」
聞いたら何かされると、自身の頭で結論を出した。
だが、予想を裏切るかのようにその男は口を開けてくれた。
「あ?俺の名前か、俺の名前は鐘下 祐輔[ゆうすけ]って言うんだけど」
淡白な口調で話しだす、一文字一文字が猛獣の咆哮を思わせるほど、荒々しい声だった。
「あ、そうだった。お前って、有宮 カエデと付き合ってるんだよな?」
「はい…そうですが」
「ふーん、じゃあお前今日から友達だ、よろしくな」
脳の処理が停止した、驚愕などの感情を処理できなかったのだろう。
普通に考えて、カツアゲしてきそうな風貌をしている人から話しかけられたんだよ?
脳が思考停止しても仕方ないじゃろう……
しかも友達って、そこは見た目的にダチって言うのが約束だろーー!
「じゃ、俺は自分のクラスに帰るわ、じゃあな!」
「バイバイ……」
別クラスの人だったらしい、こんな大柄な人間がいたんだな。
「もうすぐ…か……授業の準備をしないとな…」
引き出しから、教科書などを取り出す。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「それではみなさん!気をつけて帰ってくださいねー!」
いつものように学校が終わり、ハイテンション教師の挨拶を聞き終えた。
そしていつものように、学校から帰ろうとした。
教室を出て、階段を降りた。
そして、靴を履いて学校を出た時、声をかけられた。
「やっ、七星クン」
「あ、カエデさん」
そこには、自身の恋人が立っていた、普通に可愛かった。
「一緒に帰ってくれるよね?七星クン」
「もちろんいいですよ、カエデさんの頼みなら…」
「じゃあ、行こ」
非常に綺麗な手で、俺の手を掴んでくる。
相変わらず掴む力は加減を知らないが…それほど、気にするようなものじゃなかった。
「いいなあ」
「神崎…許すまじ」
「俺はッ!今日!カエデさんに告白しようと思ってたのにーー!でも……おめでとう、神崎!」
これまで、誰かに言葉を浴びせられたことは無かった。
「ふふ、七星クン目立ってるね」
元はと言えばあなたですよ?有宮さん、理解してください。
「はは、そうですね……実際元はと言えばカエデさんが原因ですからね?」
「まあ、でも………可愛いから許します、あと彼女ですから」
「ふぇっ!?」
彼女が一瞬、驚愕した表情をした。
取り乱したようで、本人は急いでいつものような小悪魔じみた対応をし始めた。
「いや、なんでもない……ごめん取り乱しちゃって」
「いえいえ、大丈夫です」
よし、カエデさん弱点を見つけられたぞ。
これで少し彼女に対する対処法ができた。
「やっぱり七星クンといると落ち着く……」
「俺みたいな、ヤツのどこがいいんですか?」
彼女はモジモジして、口を開く。
その表情もかなり可愛かった。
「優しいからかな、反応も可愛いし」
それお前もな?というか、俺も同じ反応していた。
「いや、カエデさんも変わりませんよ?」
「おっとー?彼女にそんなこと言っていいのかな?」
なんだコイツ……可愛い生物かなんかか?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
それから何十分か歩いた頃だろうか。
二人で話しながら、帰っている時…
シュンッ…
「ん?」
高速で何かが路地を駆け抜けていった。
最初は猫が、走っているだけだと思い込んだ。
カタカタカタッ……
靴で走る音が聞こえた、ここから嫌な予感を微量だが、感じ取っていた。
「ッ!」
ヘンな匂いを感じ取った、その匂いはかなり濃くて…頭が痛くなってくる。
「ッ!七星クン逃げて!!」
「へっ?」
気付いた時には遅かった、上空から小さな灯火が落ちてくる。
その灯火の正体は…ライターから発せられた火だった。
「なっ!?」
逃げようと体を動かした、その瞬間猛烈な暑さを感じた。
「転送!!」
彼女が口を開くと、体が一瞬で別の場所へ移動した。
「うわぁぁッ!!」
目の前に、耐え難いほどの光が形成され目を閉じた。
それと同時に、耳元で轟音が響いた。
それは、紛れもない爆発だった。
「失敗か…やはり、こういうのが苦手なのが私の欠点かな」
爆発が終わると、声が聞こえた。
「誰だ!」
声の主に向けて、言葉を発する。
「おや?神崎の生き残りか?」
そこに立っていたのは、いかにも時代に合っていない服装をした男だった。
「ほう、話には聞いていたが、秋隆の息子とは思えんな」
秋隆……俺の父親の名前だ。
「あなた……だれ?」
カエデがその人物に、問いを投げかける。
「うむ、ここで会うのも一つの運命というべきか……」
「ならば答えよう」
「ロドネウス帝国・運営局・局長アルベマ・アレイシア=ロドネウスだ」
すると、その瞬間彼女の顔と声が豹変した…
「あなたが、神崎クンを!!」
すると彼女が昨日、戦闘の際に使用した剣…
魔剣・カラミティアを出現させた。
「許……さない」
「ほう?」
その瞬間、彼女が運営局・局長と名乗る人物をカラミティアで切りつけようとする。
「あまり、生き急がない方がいいぞ…彼の姿を見れなくなるのは嫌であろう?」
その一言で、彼女の動きが乱れる。
「やはり、いくら“全能と謳われる魔術師”と言えども、死ぬのは嫌か?」
そして、運営局・局長はカエデに向けて手を伸ばす…
「少しおとなしくなれ」
その言葉を言い終えると共に、腕から黒色の巨大な針が伸びた。
「うがっ!?」
彼女が声を上げる。
「ガイアマテリアル、なかなか便利な物だな」
そして、彼女が抵抗できなくなった。
「さて、どうする?神崎」
抵抗できない彼女に意識をやっているので、俺には聞こえていなかった。
「七星クン逃げて!」
逃げるよう、脳が体全体に命令を出すが、体は言うことを聞いてくれなかった。
「殺す」
その言葉を言い放つと、なぜか手にはハンドガンを持っていた。
絶対に勝てないとわかっている。
「無駄と思うが、やってやろう」
前方にいる、人物にハンドガンを構える。
ダンッ……!
「弱いな」
発砲した瞬間に、地面に倒れ込んでいたことがわかった。
「ああああっ!」
激痛が走り、地面に倒れ込む。
「君たちに死んでもらっては困る……生きてもらうぞ」
その言葉と同時に、目の前が暗転した…………
第四話 終
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