第21話 武神
ナンケー地方 北西部のリョーブと南西部のヨーリィの軍が国境で
「お兄様 ヨーリィの馬鹿を
「グフフフ、出来したぞ
「そ…それが…大王……リョーブからの情報が入りにくくなっておりまして…」
「なんだと?情報が入らん?……この役立たずが!!!!」
側近の首を
「ウヒヒヒ、大王 キィドには兵が3万おると言う噂を聞きますぞ、リョーブの国力から考え出兵したのは恐らく4万ほどでしょうな?」
「チッ…小娘め…3万も戦力を残しおったか……」
キィドの兵が3万いると言う情報を聞き
「ろくに情報が入らないのに キィドには兵が3万いると?妙ですわね?」
「
「……………」
「ならば 余はいつリョーブを手にする事が出来るのだ!!??」
「ウヒヒヒ、じきにリョーブもヨーリィも共倒れになりますぞ、その時こそ大王が動く時ですぞ、今動けば万が一
「チッ……」
リョーブ軍が首都ルーフェイを出陣して5日目 ヨーリィとの国境である自由都市クレトに到着し 敵の城塞を遠目に眺めつつ、美しく長い髪の美女
「
「姫!!敵は3万5千 我が方はクレトの守備隊を合わせて7万5千!!数では圧倒的に有利です!!即断即決で打ち破りましょう!!」
しかし 河を挟んだ
「このまま攻めては我が方は不利…無駄な被害は避けるべきよ……」
「姫様 敵の内部に大きな動きがあり 司令官が
「え?敵の司令官が??……」
「それと 敵は城塞から出て河向こうに軍勢を展開しております!!」
「敵が城塞から出て来たの!?」
対陣中に突然司令官が代わり 守りの固い城塞から出て来たと知り、将軍である
「姫!!司令官が代わったのであれば、足並みは揃わぬ
「姫さん!!俺様も行かせてくれ!!暴れてやるぜ!!!!」
先陣を願い出る
「わかったわ…
ヨーリィ軍の動きを見て クレトのリョーブ軍は迎え撃つ為に出撃し、両軍は河を挟み
「
ヨーリィ軍では司令官の軍旗を
「お前は私が負けると思ってるの?」
「いえ……」
「お前はここで待機してなさい 命令無しに兵を動かしてはダメよ」
「え?
「リョーブの男共!!我はヨーリィ軍司令
「小娘が!!我が刃を受けよ!!」
「ヌルいわね」
「がはっ!!」
「俺様が相手だ!!!!」
「ウフフ、
「なっ!?俺様の
「ウフフフ、残念ね 貴方趣味じゃ無いのよ」
「ぐふっ!!」
「アハハハハ~!!リョーブの男は腰抜けしかいないのかしら!!??」
その挑発に激怒した前線部隊の将は次々と戦いを挑んだが、誰一人として
「何だ…あの女は……」
「矢を射かけろ!!放て!!」
業を煮やしたリョーブ軍の将は 弓隊に大量の矢を放たせるも、左手の槍を巧みに旋回して全く当たらず 余裕の表情で笑みすら浮かべるその姿に
「なっ!?奴は…化け物か!?……」
「あ…あんなの…相手に出来るのか!?」
恐れ
「うお〜!!凄いぜ!!俺達の大将は!!」
「負ける訳がねー!!」
その歓声を聞き
「我こそは!!「天下の女傑」
「天下の女傑」と聞き ヨーリィ軍の歓声はより一層大きくなり リョーブ軍の兵達は恐れ戦意を失った。
「姫様!!このままでは
「なんて人なの…仕方ないわ 一旦クレトに
「
「さて 次は敵の大将に会って来ようかしら?」
「敵の大将?
「平気よ 女同士で腹を割って話して来るわ」
「…………」
その夜…
「あれだけの人が追撃をしないなんて……彼女の真意が知りたい…」
「教えてあげるわ」
「誰!!??…貴女は…まさか!?」
「なんて大胆な…」
「妙な
「くっ…何をしに……」
「先ほど貴女が言ってたでしょう?真意を知りたいって」
「わざわざ敵地に一人で?…正気じゃないわ……」
「どうとでも言いなさい 教えてあげるわ、この
「仕組まれた?…まさか…」
「私にも事情があって この馬鹿な
「どう言う事!?」
「撤退するなら追撃しないし クレトにも手を出さず我々もヨーリィに戻るわ」
「信じろと言うの!?」
「信じる信じないは勝手になさい 私にもやる事があるのよ、貴女は馬鹿じゃないし早くリョーブに戻った方が良いわよ?」
それだけ言うと
「仕組まれた戦?早く戻れ?……まさか…サナーガ…」
その頃 キィドには長いセンタランド大陸の歴史でも、史上稀に見る大災厄が迫りつつあった。
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