第16話 暗躍
ナンケー地方では北東部のサナーガと北西部のリョーブが、長く刃を交えていたが同盟交渉が進み両国は歩み寄ったかに見えた。
「
リョーブの首都ルーフェイでは、美しく長い髪の美女
「ウヒヒヒ、
「わざわざのお越し痛みいります……くれぐれも
「あの?何か?」
「いえいえ、ウヒヒヒ、では姫様 私はこれにて失礼を……(やはり王である
「歓待の宴を開きます
「ウヒヒヒ、感謝いたしますぞ」
「…………」
商業都市キィドのダァル商会では、踊り子風の衣装を
「ってな訳で サナーガの気持ち悪い男が使者として様子を
「
「え?何で?
「で?何をしに来たの?ちゃんと仕事してるの?」
「し…してますよ…馬鹿にしないで下さい……」
「お
「うぐっ…
「うん 邪魔」
「ガ~ン…こ…こんなに愛しているのに……」
「き…気持ち悪い事 言わないでよ!!」
「良いですよ~だ…
「あの子 今日はいないわよ?…って言うか、遊んでる暇があるならルーフェイに戻って仕事しなさいよ」
「
「待ちなさい サナーガの動向がどうにも怪しいわよ、充分 気を付けなさい」
「え?同盟関係ですよ?」
「一ヶ月ちょっと前まで殺し合ってた事を忘れたの?その
「はあ……感づくって何の事でしょうか?」
「リョーブには秘密にしている事があるでしょう?」
「秘密に?……」
「王様の事よ!!」
リョーブの王
「あ~そう言えばそうですね、アハハハ~」
「あ…アンタねえ……それで良く側近が勤まるわね…コレをあげるから読みなさい」
「あの…この本は?」
「兵法書よ
「え!?アタイが兵法を!?」
「側近になったんだから、姫様に助言出来た方が良いでしょう?」
「はあ…そ…そうですね…って…クンクン」
「な…何…本を
「いや~
「やっぱり…返して……」
「いやいやいや~学びますよ、へーほーとやらを」
「本当に?」
「ホントにホント…クンクン」
「だから!!
「アハハハハ~」
数日後 サナーガの首都チョーセーにリョーブへ使者として訪れていた
「大王 リョーブの件でお話が……」
「リョーブの件だと?何だ?つまらん報告なら首を
「ウヒヒヒ、少々 妙だとは思いませんか?国の大事に
「王女であるからには 国の大事に口を出すのは当然では無いのか?」
「しかしながら 交渉の席では未だ一度として
「つまり貴様は何が言いたいのだ?」
「
「ほう?例えば?」
商業都市キィドは多くの商家が立ち並び他国との取引も盛んだった。リョーブの先王が物流の拠点として心血を
「平和……」
キィドの町の華やかな
「どけどけ〜い!!邪魔だ!!」
「おいおい!?そんなデケー荷物で道を
「往来はごった返してるのよ!!迷惑よ!!」
商家が立ち並び多くの人が行き交う町の中心部で騒ぎが起きた…どうやら港から荷物を運ぶ人夫が、あまりの荷物の多さに道を
「馬鹿野郎!!こんなに荷物を置きやがって!!」
「落ちて来たらどうすんだよ!?」
「そ…そんな事 言ってもよ…重くて動かねーんだよ……」
荷物を運ぶ人夫が往来の町人達に文句を言われ大騒ぎをしている最中、山のように積まれた荷物の一部が崩れ始めた。
「おい!!崩れるぞ!!??」
「危ない!!そこの嬢ちゃん!!」
「キャ〜ッ!!」
荷物が大崩落を起こし
「おー!!何て
「凄いぞあの黒い嬢ちゃん!!」
「すまねえ!!嬢ちゃん達!!怪我は無いか!!??」
周囲の賞賛と注目を浴び、猫耳フードの少女は 照れながらその場を走り去った。
「あ!?待って!!お姉さん!!??」
救われた小さな女の子は礼を言う間も無く、風のように走り去る猫耳フードの少女を追って路地裏に足を運んだが既に姿を消していた。
「あれ?いない…」
「ヴァル!?何してるの?」
周囲をキョロキョロと見回す女の子に話しかけて来たのは、おかっぱ頭を頭頂部で
「お姉ちゃん?さっき黒い人に助けられて…」
「黒い人?誰もいないじゃない」
「おかしいな……」
数日後 ナンケー地方南西部ヨーリィの首都レンヨー
国王である
「フォッフォッフォ~我がヨーリィは至って平和、まさに我が世の春じゃのう?」
「いや~ん 王様ったらくすぐったいです~」
「良いではないか?ウヒョヒョ~」
昼間から酒を飲み美女と
「大王…お聞き下さい……」
遊侠贅沢に
「ムフォッ?何じゃ?
「しかし…大王…目の前の美女ばかりでは無く 少しは国の事にも目を向けていただかねば、美女と
「フォッフォッフォ~
「ウフフフ、誠にその通りですわね~王様~」
「余の楽しみを
(このままでは我が国は滅びる……)
「大王!!」
「今度は誰じゃ?余の楽しみを邪魔いたすな」
「その…サナーガからの親書が……」
「あん?親書じゃと?その辺に置いておけ 下がれ!!」
「は…ハッ!!……」
「全くどいつもこいつも むさ苦しいのう、ムフォフォフォ~」
「王様~サナーガの王様って~とっても怖いと聞きますわよ~」
「ムフォ?そなたは気になるのか?仕方が無いのう 読んでやるかのう」
「王様~何て~?」
「ウフォッ?金の話じゃ、そう言えば
ヨーリィの大臣である
「やはり…あの子の力を借りねばならん……国を救う為か…それとも…」
後年…この一通の手紙が ヨーリィの…いや…センタランド大陸の命運を変える事になるとは誰も予想だにしていなかった……
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