第17話 悲劇の予兆
「やっとお返しする事が出来ます」
踊り子風の衣装を
「手伝いだって充分してくれたし、これは受け取れないよ…ねえ?アンタ?」
「こんなにお世話になりながら…そう言う訳には……」
「私にはわかるのさ アンタは用心棒なんかに収まる女じゃ無い」
「そ…それは…
「コレでも荒くれ者を多く見て来たからね、アンタには光るものがあるって見たらわかるよ」
「
「おやおや…まるで娘が出来ちまったみたいだね……」
長い髪で赤い着物を着た美少女 ヴァルは、おかっぱ頭を頭頂部で
「あ〜あ…こないだの黒い人
「またその話?アンタはいつも上から荷物が落ちて来るよね?」
「お姉ちゃんの場合は頭に落ちて来たけど、その人は
「あのね…あれでも結構 頭痛かったんだよ?」
「
まるで恋する乙女みたいなヴァルに、
「そんな黒い服の女の人なんか、そうそういる
不意に
「ん?…黒い服…に猫耳?…まさか!?」
「あ!?お姉ちゃん!?」
「もう…どうしたの?当然走り出したりして?」
「あの特徴的な服装は…間違いない……」
数日後「飢えた狼亭」には 久しぶりに傭兵達が多く集まっていた。
「おやおや?最近顔を見ないと思ったら宿屋で給仕なんてしてるのかい?」
「チッ…「ソバカス
宿屋で給仕の手伝いをする
「キ〜ッ!!その名で呼ぶな!!」
「アンタこそ最近見ないから とっくに死んだのかと思ってたわよ」
「ふん!!相変わらず可愛げの無い女 これで給仕なんて笑わせるわね?」
「せいぜいごゆっくり〜
「むぐぐ!!……いや…傭兵辞めた女に目くじらを立てるなんて馬鹿馬鹿しいわ…仕事の前に酒が
「仕事?キィドは
「やれやれ…戦いから身を引くとこんなに世情に
「どう言う意味よ?」
「ヨーリィが
「え?ヨーリィが?まさか…
ナンケー地方 南西部を治めるヨーリィは、南東部のヨーケーとの間に険しい山脈が連なる為 通行は困難だが、北西部のリョーブとは川を隔てた地続きなので通行は極めて容易なのである。
「リョーブだろうね……国境のクレト
(リョーブとヨーリィが
翌日 ダァル商会が休業日だった為、
「ちょっと…ヴァルちゃんって 凄く金持ちなんじゃないの?」
「お父さんが商会やってるって聞きましたけど」
「そうなの……(嫌な予感…)」
邸の中に入ると 赤い着物の美少女が二人を出迎えたが、
「いらっしゃ〜い!!お姉ちゃんのお姉ちゃんだね!?凄く綺麗!!」
「え!?あ…ど…どうも……(何この子??可愛すぎ…天使か??)」
「お姉さん その手は?」
「これは…その…何でもないよ…アハハハハ〜」
「今日は珍しくお父さんもいるんだよ?」
「ヴァルのお父さん?まだ会った事が無いな」
「おや?お客さんかい?」
不意に奥の部屋から聞き覚えのある声がして出て来たのは、
「え!?ダァルさん!!??」
「おや?
「ヴァルのお父さんって ダァルさんだったの!!??」
「お姉ちゃん達 お父さんを知ってるの?」
「知ってるも何も……」
それから一ヶ月……リョーブとサナーガは同盟が締結して以来 両国は数年来の衝突が嘘の様に歩み寄っていたが、ここ最近リョーブの南を治めるヨーリィの軍が国境に現れたと言う噂が国内で持ち切りだった。
「
ダァル商会の用心棒として働く
「また来たとは失礼ですね?アタイはコレでもリョーブの将軍ですよ?このキィドだって守る義務があるんです」
「ふ~ん…で?何しに来たの?」
「
「あ痛っ!!何するんすか!?」
「ヨーリィの件で来たんでしょう?素直におっしゃい」
「アハハハ…バレたか…どう思います?」
「民間人の意見なんかより、
「それがですね……姫様は軍備が整い次第 国境のクレトに向い、ヨーリィの軍と戦うつもりらしいですが…その…」
「なるほど…貴女は戦いに反対なのね?」
「え…いや…まあ…どうにもヨーリィが不可解で……」
「ウフフフ」
困り顔の
「え?あ…あの…
「ちゃんと兵法書を読んでるのね?偉いわよ
「まあ…理解は出来ませんが……」
「立派よ 偉い偉い!!」
「私も軽率な出兵は控えるべきだと思うわ ヨーリィの軍は大した数じゃ無いんでしょう?」
「報告では5千と聞きますが 川を隔てたヨーリィ
「明らかに
「…………」
「
「え?あ…はい!!
「どうしたの?赤い顔して?風邪でもひいたの?」
不意に熱を確かめる為に オデコをくっ付けて来る
「近い!!近いです!!平気です!!この赤いのは別件です!!」
「そうなの?」
「あ…アタイはもう行きます!!」
「?」
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