一樹が死んだ日
一樹が死んだ当日。
俺は授業を初めてサボって学校の屋上に来ていた。生憎空は死にたくなるような曇天だ。鍵が壊れている屋上のドアが高い音を立てて開く。
「よぉ、一樹」
一樹は俺を見てしばらく動かなくなって力が抜けたように話しかけてくる。
「お前、晶?」
「嗚呼。でも、昨日の晶じゃない」
「意味分かんない...」
「だろうな。俺も」
俺は持っていた缶ジュースを一樹に投げた。一樹はそのままキャッチして、驚いた様に俺を見つめた。
「隣に来いよ。一樹。離さねぇから」
「はは、離さないって何さ」
乾いた笑いをしながら一樹は腰を下ろした。俺そのまま一樹手を掴んで、
「こうしたら、お前は離れないだろ」
「...晶、変わったね。昨日とは全然違う。どうしたの?」
「色々。お前が自殺して、一ヶ月後から一日一日戻されたり、彩から説教食らったり、母さんと少し和解したり、色々」
「はは、なるほど」
「疑わないのか?結構厨二病だろ」
「そんなくだらない嘘つくような弟じゃない事ぐらい知ってるよ。変わりよう見たらそっちの方が納得」
「そうかよ」
「昨日までの頭良いくせに不器用で、実はお兄ちゃん大好きな可愛い馬鹿な弟は消えちゃったからね」
「言ってくれるな。周りの顔と親の期待に答える事ばっかで、自分の限界超えた馬鹿兄貴が」
「煩いよ」
「お前もな」
繋いでいる手が互いに離さないようにしっかりと絡み合う。
「一樹」
「何?」
「俺、今まで俺はお前の影だと思ってた。俺が一人でお前がチーム。一樹が生きれば俺が死ぬそれでいいと思ってた」
俺は、自然と口角が上がった。
「でも、本当は俺、また兄ちゃんと遊びたいだけだった」
一樹が胸を抑えて、目に涙をうかべ始めた。
「な、なんだよそれ...昨日は、嫌いとかいつまた癖に、居ない方が楽しいとか言ったくせによぉ」
一樹掠れた声が少しづつ晴れ始めた空に響く。
「ごめん。本気だ後悔してる」
「馬鹿」
「本当にごめん。今度こそ、ちゃんと喋ろう」
一樹はボロボロ泣き出して俺の手を痛いくらいに握り締めた。
「俺、俺ェ、アイドル辞めたい。もぅ、しんどい。アイツらもプロデューサーもヤダッ!」
「うん」
「普通に、ヒック...学校行きたいッ!でも、一人で行くのも、怖いッ」
「うん。一緒に行こう。一人じゃなくて俺も一緒」
「う"ん...晶...もう、俺を一人にしないで」
「しない。絶対に」
その時、六限目の授業の終了チャイムが鳴った。
「帰ろう。今日は、全部サボって遊びに行こうぜ一樹」
「う"ん。今まで分、遊んでやろう!晶」
「嗚呼!!」
互いに絶対に話さないように手を握り締めた。
逆転ハッピーエンド 華創使梨 @Kuro1230
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