第7話

――――――何故あの時線路の近くに行かせたんだろう。私が誘ったばかりに……そもそも転ばなければ済んだことだった。

そう後悔しているうちに視界は真っ暗になった


――――――『これがお前のしたことだ。』

目を瞬きするとあの男が目の前でそう言った。

『お前には死んで償ってもらう。』

私には既に体力が残されていなかった。痛みも段々と感じなくなり、意識がなくなりそうになったその時―――

『お兄ちゃん!』

男がその声に視線を向けると、なんと冴里の姿だった。

『冴里……冴里なんだな?!』

男は冴里に抱きつこうとするが、触れられない。よく見ると透けているようだった。

『私ね、事故の後に…死にきれずこんな姿でさまよっているの。それはお兄ちゃんに言いたいことがあったから。』

『俺に……?』

『らいむをこれ以上責めないで…!わざとじゃないのはお兄ちゃんも分かっているでしょ?』

目の前で起きていることがあまりにも信じ難かった。

『だって……あいつが冴里を線路の場所に連れ出したから…!』

『…私は死ぬ運命だったのよ。』


『……!』

『らいむが過去に戻っているのは知ってるわ。私が死にそうになったところをらいむは色んな方法で最善を尽くそうとしてくれた。』

冴里が次々と言葉にする。

―――

『あれ…?』

本当ならとっくに意識を無くしていてもおかしくないのに、何故か意識がはっきりしてる。

『えっ!』

どういうことか、傷もなくなっていれば目も元通りである。

『私の力だよ。』

そう言って私に視線を向ける。

『力……?』


『私、事故で死んだ代わりに不思議な力を手に入れたみたいなの。』

『そんなことよりも……これ以上らいむを傷つけたら許さないから!』

冴里視線を男に向けた。

『それからね……この魔法を使ったら、私の存在が完全に消えるの。記憶からもね…』

え……

冴里を…忘れる?

『嫌だよ!冴里のこと忘れたくない!冴里との思い出がなく老いる人生を歩むより、このまま冴里を想って死にたかったよ…!』

『……忘れてもきっと大丈夫。私はらいむのこと見守ってるから…。』

そう言って冴里はなにかを思い出したようにものを取り出し、私に差し出した。

『これは……?』

『これはペアリングよ。これをお互いがつけていると、どんなに離れていても必ず会えるのよ。』

『……大切にするよ!冴里……ほんとにごめんなさい!』

『いいの。らいむが私のことを大切に思ってること…わかってるから。』

『……!』

冴里を見ると、さっきよりも更に消えかかるように透明になっていることがわかった。

『またね…』

『うん…絶対だからね。』

そう2人は交わして、冴里は消えていった。

――――――

―――――――――

『冴里がつけてるそれ何?』

『ああ…これね?私も覚えていないんだけど、大切なものなんだ』

『ふぅん…』

そう言って、冴里がはめている指輪がきらりと光ったのだった。




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過去に戻った私 @Cure01230

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