第6話
――――――
―――…あれ…
真っ暗だ。金縛りにあっているかのように動けない。耳に神経を集中させると、微かに音が聞こえた。
機械音のようなものが耳につく。
すると目元が急に明るくなった。まるでゴーグルのようなものを取り外したような感覚だった。ぼやけてる目を凝らして見ると、実験用具が散らばっているのが見えた。周りを見渡していると、コツコツと足音が聞こえた。
誰だろう。
足音のする方に目を向けると、白衣を着た男性が現れた。手を後ろに組んでいるようだった。
『お目覚めかい』
男はそう言うと、後ろにあった片手でナイフを持ち、私にめがけて刺そうとした。思わず私は目の前にあったビーカーを男の顔に投げた。しかし、男はそれをつかんだ。
動揺するどころか、男は笑った。
『そんなに動けるのかい?』
男がそう言った途端、腹部に強烈な痛みがはしった。
痛い、痛い所の話じゃない。刃物が貫通しているような……あれ、目は?
目の見え方がおかしい。簡単に言えば、視力検査をしている時の感覚だった。
あまりの痛さに耐えきれず、男の目の前に座り込んだ。
あれ、これ前にも同じこと……
心当たりがあった私は記憶を辿ると、前に刺してきた男の姿が浮かんだ。
『その様子じゃ、俺が誰だか分かったみたいだね。』
不気味な笑みを浮かべながら語る。
『俺が君を刺したんだよ。その後君をここに連れ、過去に戻らせたんだよ』
『過去に……?』
過去って…小学生に戻ったり、中学生に戻ったこと?
『そして上手く過去に行けた。それで何回も何回もループしただろう?なのにお前は未来を変えなかったな?』
『未来……未来って、冴里の?』
私がそう言うと、男の肩が震えているのが分かった。
『お前が冴里を殺したんだ!冴里を……俺の妹を…』
そう聞いてピンと来た。確か冴里には五歳違いの兄がいた。
『私が冴里を?何度も助けようとしたよ!』
『お前は本当に覚えてないのか?なら、俺の技術で過去を見せよう。』
男はそう言うと、持ち出していたナイフを置き、代わりにVRのようなものを持ってきた。
『これをつけろ。』
まだ理解が追いついていなかったが、痛みが襲われる中、言われるままつけた。
――――――
―――
『話って何?』
……冴里の声が聞こえる。それからもう一人冴里の隣を歩いている。
『それはある場所に来たらのお楽しみ。』
この声は……
紛れもなく私の声でだった。私が目の前にいる。
二人の様子を見ていると、見覚えのある線路に来ていた。
『冴里…目を閉じて。』
『……どうして?』
『いいから…話はその後にしてあげるよ。』
私がなだめるように冴里に言っているのがわかる。何をしようとしているのだろう。
『見せたい景色があるんだ〜』
ちょうど辺りは綺麗な夕焼けに満ちていた。
『じゃあちょっと動くからね。目は開けちゃだめだよ?』
『分かった。』
一番よく景色の見えるところまで連れてきた。
『もうちょっと前らへんの方がいいかな〜?』
と…前に冴里を行かせたその時
『あっ!』
私が地面にあった石につまづいた。
ただ私が転ぶだけなら良かったが、目の前にいた冴里は勢いで線路へと落ちてしまった。
『冴里!!』
冴里の元へ駆けつけようと、急いで向かった。しかし、運悪く電車が来る合図が耳に響く。
間に合え!
その時の私もそう思っただろう。だが
『冴…』
――――――
……手遅れだった。
目の前で親友が轢かれるのを見て思い出した。
私のせいで冴里が死んだということ。
その後悔で精神的にやられ、記憶から消されていたのだった。
――――――…
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