第4話
あの横断歩道を通らないようにしないと…
『ねぇ』
私が話しかけると、彼女はキョトンとした表情で見つめる。
『今日帰る時、違う道で行かない?』
『いいけど、どこか寄り道でもしたいの?』
『たまには違う道がいいな〜って思ってね。』
なんとかあの横断歩道を通らなくて済む。遠回りにはなるが、死ぬよりマシだ。
――――――下校中
『手繋がない?』
私がそう言うと、彼女は嬉しそうに繋ぎ始めた。万一のことがあってもいいように……
『違う道歩くのもたまにはいいね。』
『うん、そうだね。』
私が頷いたその時……
『……きゃあっ!!』
彼女は段差でつまづき、手が離れてしまった。
その時私は絶対に手を離してはいけなかった。
つまづいた先は道路だった。
私は後悔した。なぜ手を離してしまったんだろう。そう思う暇もないと言わんばかりの光景が目に映った。
ドンッ
――――――
道路に血溜まりができている。見ていられないほどの姿で倒れている親友が見える。
私はまた助けられなかった。彼女が轢かれた時の血飛沫が地に残っている。その場で私は座り込んでしまった。
――――――
プツッ
――――――――――――……
あれ、また真っ暗だ。
…………
音も聞こえない…
声も出せない、動けない。
縛られているような感覚だった。
――――――
『らいむ…』
あれ…あの子の声。私もこっちに来たの?
『らいむ…らいむ!』
目をゆっくり開くと、彼女が泣きながら私の名前を呼んでいる。
『……!らいむが目を覚ましたよ!』
そう彼女が叫ぶと、私の親も来ていた。
『らいむ……!目を覚ましたのね』
どういう訳かさっぱり分からない私に、母はひとつひとつゆっくりと説明した。
『あなたが段差につまづいて転んだ拍子に……ちょうど車が来て。それで……』
言葉が詰まる母の代わりに彼女が口にした。
『私が繋いだ手を離していたら……こんなことには』
―――おかしい。私が手を離して事故に巻き込まれたのは彼女のはずなのに……
『冴里は大丈夫なの?』
―――『今、らいむ……私の名前…言ったよね?!思い出してくれたんだね!』
私はぽかんとしていた。そうだ、彼女の名前は、私の親友の名は……冴里だ。
なぜ今まで忘れていたのだろうか。親友とだけは覚えていた。だからなんの違和感もなかった。
『ずっとそばに居るからね。らいむも私の目の前から居なくならないでね。』
治まっていた涙がまたポロリと流れている。
『冴里も居なくならないでね。ずっと一緒に…一緒…―――』
『らいむ!』
―――――――――
―――――――――――――――
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