笑われた男子④

 それが本当にその人の幸せであるならば、死んでしまうのも手なのかもしれない。でもそうしてほしくはない。生きられるのなら生きてほしい。唯一無二の奇跡なのだから。

「この夢を消して構いませんか。あなたが、一つの奇跡であることに誇りを持って生きて行けるように」

 彼が顔を上げる。一つの奇跡が前を向く。

「はい」

 夢斬りは頷いて刀を抜いた。

「そのネックレスを外して持っていただけますか」

「これですか」

「はい。それがこの夢の核なようです。それを壊せば、この夢は現れなくなります」

 チェーンのネックレスがチャラリと音を立てた。

「では、行きます」

 彼が頷いたのを確認して刀を振り下ろす。チェーンが切れて、世界が消える。

「……あなたも、生きてください」

 消えゆく世界に彼の声がした。夢斬りは頷く。

「はい、この命が尽きるまで」

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