殺した女の子①

 道路の真ん中に女の子がしゃがみこんでいる。

「大丈夫ですか」

 ううん、と首を振る。泣いていた。夢斬りもそばにしゃがんで女の子の前にあるものを見た。

「雀、ですか」

「うん」

 小さな雀が死んでいた。口元にまだ幼さが残る雀。女の子は目を潤ませてきつく結んだ唇を震わせている。

「私がね」

「はい」

「私が殺しちゃったの」

「殺した」

 まだ小学校に上がるか上がらないかの女の子が悩まされる夢。

「もし辛くなければ、この子のことを話していただけますか」

 こくり、と頷く。瞬きをしない目にはふっくらと水滴がなんとか乗っている。

「私のお家に巣を作っててね、ずっと見てたの。やっと大きくなったの。飛べるようになってきて、嬉しかったの。ママに、影から見てようねって言われてたのに……」

 そこでぼろりと涙が落ちた。ゴシゴシと目元を擦る。

「私、言い付け破っちゃった。雀のこと、追いかけちゃった。そしたらね、びっくりして飛び立っちゃって、そこに車が通って……」

 わあっと泣き始めてしまった女の子の背を慌ててさする。ごめんね、ごめんね、もう言葉になっていない嗚咽が口から漏れる。雀の子は目を固く瞑って開かない。

「……この夢を終わりにしましょう」

「だめ」

 強い声だった。驚いて背をさする手を止める。

「私、この子のこと忘れちゃだめだよ。私、この子を殺したんだもん」

「忘れるわけではありません、悲しむのを終わりにしよう、ということです」

「悲しむのを終わりにしたら、なんか、だめな気がする」

 懺悔、償い、そうした言葉をまだこの子は知らないだろう。この子はとても心優しい子なのだ。命を大切にし、そのために泣く。

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