笑われた男子③
「……私には、生きられるのに死にたいという気持ちが分かりません」
夢斬りがそう言うと、男子は眉を顰めた。
「幸せな人なんですね」
「どうなのでしょうか、わかりませんが、死にたくはありません」
何が言いたいんだと言いたげに首を振る。
「私は、生きてほしい。でもあなたは死にたい。人々は生きろと言います。生きていれば、何かしらいいことにいつか出会えるかもしれないから。私はあなたの状況を存じ上げませんので、生きろとも死んでいいとも言えません。けれど一つ言えることがあります。こんなことしか言えないのですが」
「なんですか?」
「あなたが今生きていることは紛れもない奇跡です。何百万の一が積み重なって積み重なって、今あなたは生きています。あなたは奇跡の存在です。誰が笑おうとも、その事実は変わりません。あなたが今ここにいることは、紛れもない、たった一つの貴い奇跡なのです」
これもまた、夢斬りが生まれてから聞いたことの一つだ。それは誰にだって当てはまる。生きている全ての人に。
「生きてるだけで、奇跡……誰が、なんと言おうと……」
頷く。
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