笑われた男子②

「夢がつきまとうなら、あの時死んでしまえばよかった」

「あの時というのは」

「俺一回、本気で死のうと思ったんです。誰かに『死ね』って言われたら死のうって思って、準備もしてたんです。なのに誰にも言われなくて。あいつら、直接はなんにもして来なかったんですよ。笑うだけ、関わらないようにするだけ。誰にも言われなくて、結局死ぬ勇気が出なくて、今だに」

「死ねと、言われたかったのですか」

 夢斬りにはその気持ちを少しも理解できない。

「……生きてるだけで偉い、って言葉があるじゃないですか」

「はい」

 それは聞いたことがある。夢斬りが生まれてから何度も。生きてるだけで偉いのよ。生きていてくれてありがとうね。

「そんなの言われるのって、病気の人とかだけなんですよね。俺みたいになぜか健康に生きちゃってる奴には言われない。それこそ死なない限り。社会が許してくんないんですよ、ただ生きてるだけなんて。だったら死にたい。背中を突き飛ばしてほしい」

 生きたくても生きられない人がいる。それを夢斬りはよく知っている。けれど生きられるのに死にたい人がいるだなんて、知らなかった。人間は、ないものねだりばかりだ。

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