笑われた男子①
教室の真ん中で一人の男子が蹲っていた。
「どうかなさいましたか」
彼がこの夢の主だ。
「笑うんだ、みんなが」
「今、ここには私とあなたの二人しかおりません」
「そうじゃない、ずっと、耳の奥に残ってる」
夢斬りはきつく塞がれた耳に光るピアスを見つめた。金色の髪に刈り上げ、たくさんのピアス。所謂ヤンキーと呼ばれる人だろう。普段であれば周りを怯えさせるような風貌であるにも関わらず、今夢斬りの目に映るのは、耳を塞いで泣く小さな子供だった。
「笑う、俺が何しても。こっちをチラチラ見て、顔見合わせて笑うんだ。なあ、俺の何がダメだったんだ? 何が人と違ったんだ?」
自分達と違うものは排除する、どうして人間はそんな行動をとるのだろう。違いなんて大きなものではない。ほんの少し、何かが違えばいい。一人の“敵”をつくって団結する。
「転校して、何もかも変えた。髪染めて、ピアス開けて。誰も近寄らないのは変わらないけど、笑われることはなくなった。でも、夢に出てくる。俺を笑う声がする。笑ってんじゃねえ、って言っても、笑ってる奴の正体が見えねえ。逆にどんどん笑い声がでかくなる」
頼むからやめてくれ。か細い声。
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