何かを与えたかった女子③

「ある時、一羽の雀に出会いました」

「雀?」

「もう亡くなっていましたが。それでも私は、その雀に励まされたのです。何かを貰ったのです。その雀は夢の主や私に、生きろと語りかけていました。もう死んだ小さな子雀が」

 彼女は口を噤んだまま。

「死んだ動物ですら私たちに何かを与えてくれたのです。そうであれば、生きている人は尚更、小さくても何かを与えられるのではありませんか」

「……何を?」

「例えば、そうですね、母親に感謝を伝えてはいかがでしょう。産んでくれてありがとう、ですとか」

 鼻で笑う。

「私、生きてるだけで偉いよって言われるの好きじゃないの。私だって生きてるだけじゃなくて何かしたいのに。それに、こんなに苦しむくらいなら生まれないほうがよかった」

「そうであれば、生きていてよかったと思えることを探してみませんか。ほんの小さなことでよいのです。あなたの世界は、一つのベットの周りと、一つの窓から見える景色だけ。でもきっとそこから、生まれてきてよかったと思えるものを見つけられます。私の世界はこの夢の中だけでした。それでも私は生まれてきてよかったと思っています。だからあなたもきっと、そう思える」

 どうかな。彼女は小さく吐息でそう言った。

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