何かを与えたかった女子②
腰掛けてまた、息を
「人偏に夢と書いて、儚いと書く」
「存じております」
「人間が見る夢なんて儚いよね。……ねえ夢斬り。誰かを救えた?」
「私にできることはしました」
そう、と宙を見つめる。少し落ち窪んだ目は何を見ているのかわからない。
「私は夢の中でなら何にでもなれる。私は少しでも誰かを救いたい。あなたはそうおっしゃいましたね」
「そうだったかもね」
「そして、夢斬りが生まれました」
彼女はちらりと夢斬りを見る。
「いかがでしたか?」
「何が?」
「私という存在ができて、何か変わりましたか? 誰かを救えましたか?」
彼女は椅子の上で体育座りをして膝に顎を乗せた。ニット帽を掻く指はあまりに細い。やがて小さく首を振った。
「これは、夢だから」
「全て幻だったと?」
「そうかもしれない。わからない。どっちにしろ私はやっぱり誰のことも救えない。もらってばっか。私はこのまま、誰にも何にもお与えられないで死ぬんだよ」
夢斬りは、これまで出会った一人一人を思い出す。その中で知った自分にはない考え方も。苦しみを消さなくてもいいと言った人、幸せを消した人、一つのことを、人を好きでい続けた人、生きられるのに死にたかった人、動物のために泣いた人、他にもたくさん。自分はその人たちから何を貰っただろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます