何かを与えたかった女子①
その夢には何もない。夢を斬った後の何もなくなった世界と同じ。
「どこにいらっしゃいますか」
夢斬りが
「呼び出して何のつもり?」
少し冷たい声だった。
「私のことを救っていただきたいのです」
「何を言ってるのかわからない。誰かを救うのがあなたの役目。そうでしょ?」
「はい、それがあなたが私に与えた務めです」
「わかってるなら、」
「でも、それだけではいけないのです。救う側が救われていなければ、それは真の救いではありません。私は、私を救ってほしい。そして、」
夢斬りは目の前にある、自分とよく似た瞳のさらに奥をじっと見つめた。
「あなたに救われてほしい」
夢斬りの前に立つ彼女は、ふう、と呆れたような、諦めたような、そんな仕草で息を吐いた。
「……今までどんな夢があった?」
「悪夢も、幸せな夢も、色々。高齢の方からお子さんまで。本当に夢というのは人それぞれなのですね」
疲れたから座ってもいい? 彼女がそう言うと、夢斬りが頷く前に椅子が現れた。
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