偽物を愛した男性②

 優しげだけど、フラット。二年という時がそうさせたのかもしれない。それでも好きという思いは変わっていない。わかっていても捨てられない思い。夢斬りにはわからないことだらけだ。

「でも、今となってみれば別れてよかったのかもしれません。彼女といると、なんだか自分を彼女に合わせなくちゃいけない気がして。彼女の気を惹くためにアクセサリーをつけてみたり、彼女が好きな音楽を聴いてみたり。やっと付き合えることになって、でもそれで終わりじゃない。その後も自分を好きでい続けてもらえるように、彼女の好みに自分を合わせていた。けど別れてしばらくしてから気付くんですよ。自分はデート以外じゃアクセサリーなんてつけないし、彼女が好きだった曲は自分じゃ選ばない。彼女の前の自分は偽物だったんだ、って。彼女は僕のことを好きだって言ってくれたけど、それは本当の俺じゃない。それってなんも嬉しくないんですよね、振り返ると」

 ピアスやネックレスを外してポケットにしまう。

「わかってんのになんで二年も好きなんでしょうね。初カノだったからかな。なんでだと思います? なんて」

「私に恋愛のことはわかりません、すみません」

「あ、いや、言うて自分もわかってるわけじゃないですし、恋愛なんて苦しいことばっかですよ。それもわかってるつもりだったのになあ……」

 一人ぶつぶつ言いながら茶色い頭を掻く。

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