偽物を愛した男性①
一見幸せな夢を斬ってくれという依頼は少なくないようだ。
「こんな夢を見るからには、今も好きなんでしょうね」
困ったように笑う男性だった。デートが終わり、女性と別れたところで振り返ってそう言う。ずっとデートの様子を後ろから見ていたが、それはただただ幸せな一日だった。幸せを乱すものが入る隙間など一つもない完璧な幸せ。そしてそれは、夢斬りがこの先も決して味わうことのできない幸せだ。
「所謂元カノ、と言う方でしょうか」
「はい。二年前に別れました」
「二年」
別れた相手をそんなに長い間好きでい続けられるものなのか。
「もう随分前に別れたのに、どうしてまだ好きなんだろう、と自分でも思います。単純に他の出会いがないからというだけかもしれませんが」
「なぜ別れたのですか」
「このまま私たちずっと一緒にいるの? 私たち、それで幸せになれるのかな、だったでしょうか。そんなことを言われた気がします。要するにあちらの思いは冷めていて、俺と結婚する気もなかったんでしょうね。俺としてはずっと一緒にいたかったんですが。でも相手の思いを変えることはできませんから」
「そういうものなんでしょうか」
「そういうものなんじゃないですかね」
眉を下げて少し笑う。
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