第104話 第一回作戦会議
作戦本部となった、備品倉庫の隠し部屋。
革張りのソファにロザリーたち四人が座っている。
「それでは、記念すべき第一回ロザリー派作戦会議を始めます」
司会進行役のロザリーがそう言うと、残りの三人は拍手で応えた。
拍手が収まるのを待って、ロザリーが言う。
「で。何を話し合うの?」
するとロロが答えた。
「さしあたっての問題は、人集めです」
オズも頷く。
「だな。今の人数じゃ心許ないってもんじゃねえ」
「でもさ」
ラナが口を挟む。
「このままでも楽勝でしょ? だってロザリーいるんだもん。他に何人いたって関係ない気がするけど」
するとロロとオズが即座に首を横に振る。
「いくら強くてもロザリーは一人だけだ」
「ええ。本拠地を取られてはお終いです」
ラナが首を捻る。
「本拠地?」
ラナは首を捻ったままロザリーを見るが、ロザリーも首を捻るだけ。
それを見たオズはため息をついた。
「そうだった。ルールもよく知らないんだったな。まずはそれからか」
オズは偉そうに咳払いをし、それから
「ガキの頃、騎士団ごっこしたろ? まんまアレだ」
しかしロザリーとラナの反応は薄い。
「騎士団……ごっこ?」
「何だろう、鬼ごっことは違うよね」
「マジかよ、お前ら! どんな子供時代送ってきたんだよ!」
「私は研究施設にいて、同世代の友だちいなかったから……」
「私も勉強ばっかで同世代と遊んだ記憶ないなあ」
「二人揃って、なんて寂しい奴!」
オズが腕組みしてソファにもたれかかると、ロロがおずおずと手を挙げた。
「あの……私も山奥の炭焼き小屋で父と二人だったので……騎士団ごっこはしたことありません……」
オズは天井のシャンデリアを見上げ、大きなため息をついた。
しばらくそうしていて、むくりと身体を起こし、説明を再開した。
「騎士団ごっこってのはな、チームに分かれての戦争ごっこだ」
「ふんふん」
「相槌はいいから黙って聞け、ロザリー」
「はい」
「チームで決めることは二つ。騎士団長と本拠地だ。団長がやられるか、本拠地を占領されたら負け。逆に相手の団長か本拠地を取れば勝ちだ」
「へえ、面白そう!」
「面白いから普通はガキの頃やってんだよ、ラナ」
「うぅ、はい」
「で、だ。うちの団長はロザリーでやられる心配はないが、本拠地は違う。ロザリーが他のチームを攻めるなら他の団員で本拠地を守らなきゃならないし、ロザリーが守るなら他で攻めなきゃなんねえ」
「一応、ロザリーさんと一緒に全員で本拠地に立てこもるという手もありますが」
「わかってるはずだ、ロロ。それは作戦としては下の下。どうしても人が集まらなかったときに仕方なく選ぶ戦法だ」
「ですね。競技時間が決まっているらしいので、もし時間が来て判定で勝者を選ぶとなったら」
「おそらく生き残り所属団員の数で決まる。となれば四人ぽっちのうちに勝ち目はない」
「あのさ」
ロザリーが手を挙げた。
「
オズとロロは顔を見合わせた。
「あのですね、ロザリーさん。
「そりゃあ、教官や卒業生は知っているだろうけどよ。口が固くて誰も教えてくれねえ」
「箝口令が敷かれてるって話ですからね。なぜかはわかりませんが」
「おそらく、場所のせいだ。毎年一学年四百人の魔導持ちが戦争ごっこするってのに、どこで行われてるかわかってない。きっと、極秘の場所なんだ」
「だからこそ三年生は伝え聞く話の中から、できるだけ正確なルールを把握することが大事なんです。でなければ、ルールもわからず負けるだけです」
「俺とロロは苦労して集めた情報を教えてやってんだよ。わかるか、ロザリー?」
「わかります。なんかごめん」
ロザリーはただ、頷くばかりだった。
その横で、ラナは机に置いた冊子をペラペラとめくりつつ、言った。
「ふーん。じゃあこれに書かれてることも正確ってわけじゃないのかなあ」
ロロがそれを横目で見る。
「ラナさん、なんですそれ?」
「
オズがガバッと立ち上がり、机の上の冊子を奪い取った。
「ちょっと、オズ! 借り物なんだから乱暴に扱わないでよ」
オズは驚愕の顔つきで、冊子の中に目を走らせた。
「……ラナ。これをどこで手に入れた?」
「ん? 学校の
「嘘つけ。こんなの置いてあるはずねえ」
「あ、そういえば地下書庫に置いてあるやつって言ってたかな」
ロザリーが眉をひそめる。
「地下書庫って立ち入り禁止の禁書庫でしょ?」
「そうね、たしかそう」
「どうやって借りたの?」
「借りたっていうか、持ってきてくれたの。私、みんなが術の授業受けてるとき、いっつも
「なるほど……」
オズが読みふける冊子の表紙には〝
「で、どうなの? 詳しいルールが書いてあるの?」
ロザリーが尋ねてもオズは熱中していて答えもしない。
代わりにオズの脇から盗み読んでいたロロが、しきりに頷いた。
「
「本物のルールブックなんだ……」
ロザリーがオズを見ると、彼はページをめくったり戻ったりしながら、何事か呟いていた。
「ってことはこういうことも……できるな……じゃあ早いほうが……そうだ、たしか今日の四限目に……」
「オズ? 何を考えているの?」
ロザリーに呼ばれ、ハッと顔を上げたオズ。
ロロとラナも自分を見ていることに気づき、不敵な笑みを浮かべる。
「何って……悪巧みさ」
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