第10話 離婚申し立て

 僕は弁護士に相談することにした。妻が嘘の経歴で僕に近づいて結婚したこと。僕のマンションを勝手に売ってしまったこと。子どもがどこかにやってしまったこと。もう、婚姻関係を続けるのは無理だった。


 僕は4畳半のアパートに帰った。


 もう、何も残っていない。

 貯金もない、マンションもない。

 僕は泣いた。

 夢を見ているみたいだった。


***


 今日、仕事を首になった。

 コロナによる業績悪化のせいでリストラされてしまった。

 前から人事からは目をつけられていたようだ。

 シワシワの着古したスーツで会社に行って、僕は浮いていた。


 会社都合の解雇だから、数日後には失業保険が下りるけど、弁護士に払う数十万の金もないくらいだった。


 僕はLineを送った。

「会社、リストラされた。離婚しよう」

「ダメ。待って」


 妻から拒否されるのは予想していた。


「もう、僕から取れるものないよ。お金ないし」

「待って、もうちょっと。年末まで・・・」


 あ、離婚してくれるんだ。僕はほっとした。

 次は何をしようかな。大企業勤務だし、どっかしら雇ってくれるだろう。

 気持ちが明るくなった。

 また、結婚しようかな。

 僕は次は普通の家庭を築きたい。


 ***


 それから、1月後。

 大企業をリストラされた男性が4畳半の小さなアパートで首を吊って亡くなった。


「もう疲れた」という走り書きのような遺書も発見された。


 妻は夫に5,000万円の保険を掛けていた。

 その後、妻には保険金が支払われた。

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疫病神 連喜 @toushikibu

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