第8話 マンション

 親は僕が家に帰っていないことを知らなかった。


 先日、親が僕のマンションに行った時、インターホンを押したら違う人が出たと言われた。僕は愕然とした。


 妻はそこに住んでいなかった!


 なぜ?


 子どもは??


 僕はびっくりして、自分のマンションに行ってみたが、まず鍵が変更されていた。インターホンを鳴らすと、知らない女の人が出た。


「ここは僕のマンションなんですけど」

「うちはちゃんと、不動産屋から買ったんですけど・・・」


 妻はいつの間にか、僕のマンションを売ってしまっていたらしい。

 僕が実印と印鑑証明カードを家に置きっぱなしにしていたからだ。

 本来は本人じゃないと売れないんじゃないか・・・。

 でも、現実として、僕のマンションはすでに別に人が購入していた。

 登記簿を取ってみたが、確かに売買されて別の人の所有になっていた。


 もう、何から手を付けていいかわからなくなってしまった。

 子どもは?どこにいるんだろう。

 無事なんだろうか?

 妻は一体どこにいるんだろうか?


 僕は銀行に行って、妻が持っている口座を利用停止にしてもらった。もう、ほとんど残高はなかった。会社に相談して、給与口座を変更してもらった。会社の人は僕が妻と何かあったんだろうと思っているようだった。金が引き出せなくなったら、妻は何か言って来るだろうか。

 

 僕のマンションは戻って来るんだろうか・・・。

 もう、何をする気力もなくなっていた。

  

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