第7話 孤立

 僕は茫然として帰りの新幹線に乗っていた。

 

 その後は、もう誰とも連絡を取らなくなった。

 妻からも連絡はない。会社に頼んで、給料の大半をあちらに振り込んで、5万円だけ別の口座に入れてもらっていた。

 妻からLineがあった。

「帰って来ないの?」

「うん・・・仕事が忙しくて」

 ずっと会社に泊まっていると、宿泊仲間が出てくる。

 何人かは、飲みに行って、なぜか会社に戻って来る。

 そのうち、後輩が僕のことを根ほり葉ほり聞いて来た。


「前田さんって、ずっと会社に泊まってるんですか?」

「うん。家に帰りたくなくて」

 

 僕はこれまであったことを正直に話した。

 そしたら、それが人事に伝わってしまった。そいつがチクったんだろう。

 僕は会社に泊まるのをやめるように言われた。

 行くところがなくなってしまった。


 外に泊まるにも金がない。人事に相談して、振込金額を給与の半分にしてもらった。

 それで僕はシェアハウスに住むことになった。

 でも、変な人が住んでいたし、落ち着かなかったから、やっぱり4畳半の風呂なしに引っ越した。


 住宅ローンも残ってる。どうしたらいいんだろう・・・。

 お先真っ暗だった。

 

 実家にもまったく連絡をしていなかった。

 子どもが障碍児だったから、両親はうちに来なくなっていた。

 弟も去年結婚して、健常者の子どもが生まれたから、そちらにばかり行っているみたいだった。僕は家族から完全に無視されていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る