第4話 傾き始めた家庭

 妻はすぐに妊娠した。

 途中入院もあったけど、とりあえず無事出産した。


 だけど、子どもには障碍があった。障碍は不便だけど、不幸ではないと言われる。

 そう思うので、どんな障碍かはここには書かない。


 僕が悩んだのは、子どもが将来、苦労するんじゃないかということだった。

 それに、子どもを連れて歩くことで、周囲から好奇の目を集めてしまうことも、辛かった。それまで、そんな風に見られたことは一度もなかった。


「かわいそう」

「気持ち悪い」


 そんな言葉が聞こえて来るようだった。

 家のポストに「お子さんの障碍は放射能のせいです。今すぐ引越しなさい」という異常な投書も入っていたくらいだ。


 子どもは全然笑わないし、反応がない。

 もし、知的障害があっても、喜んだり笑ったりしてくれたらどんなにいいかと思う。

 僕はその子に何もしてやれない。


 僕は次第に病んでいった。

 うつ病なんかになるはずがないと思ったが、子どもが病気だったりすると、何もしてやれないことで自分を責めるようになる。


 妻は平然としていた。

 強い人なんだろうと思っていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る