第2話 結婚

 A子と知り合ったのはネットの婚活サイトだった。

 僕は20代後半で、そろそろ結婚したくて相手を探していた。

 出会いには困らなかったけど、魔が差したんだと思う。


 あちらから申し込まれた。

 写真を見たらすごくきれいで、メッセージをやり取りしていたら、優しくて、真面目。胸が大きくて、よくこんな人が婚活サイトにと思うような子だった。

 僕たちはすぐに付き合うことになった。


 彼女は都内で一人暮らしをしていた。

 家賃の安い下町に住んでいた。1Kで4万円台だった。

 勤務先は聞いたこともない小さな会社だった。

 有名大学を出てたのに、自宅から通えなくて、就職は苦戦したそうだ。


 彼女の生い立ちは複雑だった。

 某県にある、〇〇出身だった。

 差別になってしまうからここに本当の理由は書けない。

 彼女は恵まれない環境を跳ねのけて、勉強を頑張って、貧しいながらも有名大学を卒業していた。学費や生活費は奨学金で賄ったそうだ。そういう努力家なところも、好きになった要因の一つだった。


 すべてが順調だった。親も僕が選んだ相手だからと喜んでくれた。


 でも、結婚式はやらなかった。

 彼女の親族が誰も来られなかったからだ。

 両親はまだ生きているみたいだけど、家族の話を全然しない。

 妹と弟がいると聞いていたけど、結婚するのに”おめでとう”も言ってこない。


 入籍だけの寂しい結婚。

 彼女はドレスを着たいとか、そういう希望はないと言っていた。

 僕の友達はみな披露宴をやっていたから、親にも自分が幸せな姿を見せてあげたかった。それだけは心残りだった。

 でも、彼女にも事情があるんだから仕方ない。

 彼女は施設で育ったわけじゃないみたいだでど、一体、どんな家庭で育ったんだろう・・・。

 

 彼女が少し怖くなった。

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