第7話 デートと元カノ

「デートに行こう、カナデ」

 家の玄関で、ライトはなんの前振りもなくカナデを誘った。


「何を言っているのですか? デートとは愛し合ってる者たちがするものです。私たちがするものではないです」

「いやえーと……」

 言葉に詰まるライト。言われてみればライトとカナデの関係が修復されたわけではない。だからデートはおかしい。


「じゃあ……お出かけ」

「お出かけですか。それなら行きます。いつどこにですか?」

「今週の日曜日、朱雀ヶ丘水族館だ」

 カナデは引いたように言った。


「えっ……元カノとのデート先に行くとか、そんなだから彼女いなくて童貞なんですよ?」

「童貞は関係ないだろ! お前で童貞を卒業してやろうか!」

「えっ? 腰抜けのご主人様にそんなことできるんですか?」

「で、できる!」

 カナデはニヤニヤしながら服を脱ぎ始める。


「責任とってくださいよ?」

「いやあの、ほんとすいませんでした」

「謝らなくていいですよ。私はメイドですから。性欲処理も仕事のうちです」

「そういう謝罪じゃないんですけど! やめてくださいの意味の謝罪なんですけど!」

 そうしてもなお、カナデは脱ぐのをやめない。


「男に二言はないですよね。さて、四十八手どれがいいですか? 私のおすすめはかげろうです」

「やらないって! てかマニアックな手出してくんな!」

「そうですか……ご主人様は燕返しが好きでしたね」

「違う!」

 気づけば全裸になっているカナデ。


「さてご主人様、腹を決めて花菱責めをしましょう」

「いやあの……まじで水族館でなんでも買うんで許してください」

「え!? なんでもですか!? じゃあぬいぐるみいっぱい買います!」

 不覚にもかわいいと思ってしまうライト。


「買う。ぬいぐるみ買うから服着て」

「えー、この服装で行きたいです」

「服装って言わないだろそれ。だって着てないじゃん」

「じゃあ、服買ってください。メイド服では行きたくないです」

「……確かに」

「そんなだから童貞卒業できないんですよ。だいたい女の子に私服与えずにメイド服とかなんなんですか」

 ごもっともな意見だった。さすがのライトも反省した。

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