第6話 先輩と金持ち

 朝に衝撃の事実が発覚して以降、ライトはまともに授業を受けられずにいた。まさか自分が2000万を払った相手が、後輩のお父さんだとは思わない。


「おやおや、顔がやつれてるよ、霞くん」

 昼休みにフラフラとゾンビのように廊下を歩いていたライトに話しかけたのは紫にポニーテールに切れ目の美人。

 ライトの先輩の悦斬えつざん マミナだった。カナデに匹敵するほどの巨乳を持つ彼女は、ライト脳内だけでなく、高校でも有名だった。

 ちなみに資産家で、タワマン住みなのだが、ライトに株や資産運用のやり方を教えたのは彼女だ。


「マミナ先輩……」

「おやおや、いつになく霞んでるね」

「俺の苗字で遊ばないでくださいよ……」

 皆さんお忘れかもしれないが、ライトの苗字は朝霞あさかだ。霞のように薄い存在感、という意味合いを込めて、マミナ先輩からは霞くんと呼ばれている。


「マミナお姉さんが話聞いてあげようかな?」

「お願いします」

 彼女はライトの良き相談相手であった。

 そして彼女はマナミではなくマミナだ。間違いのないように。




 激動の二日間をマミナ先輩に話したライトは少し気が楽になっていた。道でばったり元カノに会うだけでも衝撃的なのに、元カノはホームレスになってるし、借金あるしで、ライトは精神的に疲弊していたことを自覚した。

「にしてもすごい経験だねぇ。ラノベかけちゃうよ」

「ほんとそうですね……」

「ちなみにカナデちゃんの胸と私の胸、どっちが触り心地よかった?」

 ライトは思い出した。この人との出会い胸揉んだことだったと。


「その節はご迷惑をおかけしました」

「2000万で元カノを買ってメイドにする変態男に胸揉まれたくらいでお姉さんは怒らないよ?」

「いやあのほんと……すいませんでした」

「ま、あの一件は解決してるから許すとして、元カノとひどい別れ方したやつがなんで元カノと同棲してるの?」

ライトは答えに詰まった。カナデの過去の行為を許したわけでもないし、カナデのことが好きなわけでもない。でも助けてしまった。


「なんで……でしょうね……?」

「霞くんがわからないならお姉さんにはわからないな。でも、その疑問はずっと君の心の中にあったはずじゃない?」

「確かに……」

「お姉さんからそんな君たちにアドバイス。カレカノイチャイチャチュッチュパンパン時代に行った、1番楽しかったデートの場所に行くといいよ」

「なんか無駄に卑猥な擬音入ってませんでした!? ……まあでも、わかりました。やってみます」

「いってら」

というわけでライトはデートに行くことにした。

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