第5話 娘と後輩
カナデとライトの奇妙な生活も3日目になった。ライトとカナデは双方とも17歳の高校2年生。つまりカナデも高校に行かなければならない歳なのだ。
「カナデ、お前高校行きたくないのか?」
ライトはカナデの作った朝ごはんの中のハムサンドイッチを食べながら、彼女に問いかけた。
「ここ一年ぐらいはホームレスだったので今通ってもついていけませんね」
「そうか。じゃあ俺と勉強するか?」
「ご主人様のような中身のない脳みその人と勉強しても何も身につかないので、独学でやらせていただきます」
ライトは引いた。こいつ、2000万払ってやったのにその態度なのかよ、と。
「俺頭いいんだぞ!」
「その発言が頭悪いですよ」
ライトは黙る。
「それよりご主人様、遅刻しますよ」
時刻は8時15分を指していた。ライトの家と高校の距離を考えるとそこそこギリな時間帯だった。
「やべえじゃん! 行ってくるわ!」
「いってらっしゃいませご主人様」
ライトは家を飛び出し、自転車にまたがって走り出した。
「せんぱーい、おはようございまーす」
ライトの自転車を漕ぐスピードと同速で、青のショートカットの女の子が彼に声をかける。
彼女の名はヒビキ。高校1年生で、テニス部のルーキー。童顔で背は低く、貧乳である。あまり感情のこもっているように感じられない声をしている。
実はライトと小学校から仲が良く、幼馴染的な立ち位置の人間だったりする。
「ヒビキか」
「なんか元気ないですけどどうかしましたー?」
「いやぁ、昨日貯金の一割をどうでもいいことに使ってしまってな」
ライトは地味に2000万の件を引きずっていた。
「へぇ、女の子のために2000万払ったことをまだ引きずってるんですねー」
「そうそう、カナデのために2000万も……え?」
「胸が大きい女の人を飼うために2000万ですかー。安い買い物でしたねー」
「……なんで知ってんの?」
ライトは思考を巡らせる。超能力者か? それともどこかであの様子を見ていた? 心が読まれているのか?
0.1秒の思考時間の末に、彼はあることに気がついた。
「ヒビキ、お前の苗字って……」
「鳥嶋ですねー」
「お父さんは?」
「金貸しですかねー」
「鳥嶋ァ!!!」
ライトはまあまあな声量で叫んだ。
「先輩、私の苗字を大声で叫ぶのはやめてくださーい。そんなに私のことが好きなんですかー?」
「違う。俺は君のお父さんの苗字を叫んだんだ」
「やめてくださーい。私は父と先輩のBLなんて見たくありませんよー」
「お父さんが好きなわけじゃねえわ!」
2人は大きな下り坂に差し掛かり、会話を止めた。
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