第52話 王都からの緊急連絡
サトルとスザンヌ達は”キタミダンジョン”の2回目踏破を成し遂げ莫大な報酬を得た為、キタミギルドの資金を心配したスザンヌが、3 、4日のんびり自宅で過ごすことにした。
2日程のんびり過ごしていたら、王都のギルマスのエミリアからスザンヌに緊急連絡が入り「第一王女と第二王女更に騎士団長ディアナ瀕死の重症負い、宮廷の魔法医師団では対応出来ないので大至急サトルを連れて王宮に来て欲しい」と連絡が来た。
何が有ったのか分からないが4人は直ぐに王宮に【転移】して王妃に面会を求めた。
王妃が直ぐスザンヌのもとに駆け寄って来て「バーバラとキャロルが・・・」後は言葉にならない。
泣きじゃくって要領が得ない所にギルマスのエミリアが飛んできて「サトル殿、スザンヌ先生こちらです」と言ってバーバラとキャロルが横たわって居る寝室に4人を案内し、マーガレットとルビーゼは部屋に入らず外で待機する。
見るとバーバラは片腕、片足をもがれ出血多量で今にも死にそうな状態で、キャロル姫も片足と腹をえぐられ息をしているのが不思議なくらいの重症だった!
「どけっ、直ぐに治してやる」サトルは直ぐに【エリアEXハイヒール】と呟いて二人の欠損部を再生させて出血を止め、キャロルに至っては内臓も元通りに再生して、二人の一命を繋ぎ止めた。
「エミリア、ディアナの所に連れて行け」とサトルが叫ぶ。
騎士団長の寝室に両足片手を食われたディアナが微かな息をして横たわっていた。
サトルはすぐさま【EXハイヒール】と呟きディアナの両足、片手を再生させて、何とか助けた。
「サトル、姫達もディアナも助かるのか?」とスザンヌ。
「当たり前だろう?俺を誰だと思って居るの?」
「私の愛しい旦那様」
言われたサトルが照れまくっているのをエミリアは「ゴホン」と咳払いをして「この度はサトル様に返せない程の恩を作ってしまいました」
「えっ、それじゃ僕の2号さんにでもなる?」って冗談を言うと、隣のスザンヌから思いっきりお尻をつねられてしまった。
王妃のもとに戻り「王妃様、王女お二人は大分血を失っておりますので、血肉になる食べ物とゆっくり休まれることをすれば直ぐに元に戻るでしょう」とサトルが伝えると王妃はサトルに向かって涙を流しながら深々と頭を下げた。
エミリアと連れ立って、王宮の食堂に行き、軽い食事を取りながら事の顛末を聞いた。
「バーバラ第一王女とキャロル第二王女が前回のダンジョン踏破をサトル様とスザンヌ様がお膳立てしたので今度は自分達だけで挑もうと勝手に私やディアナにも内緒で”迷宮のダンジョン”に潜ってしまったの!ディアナがそれを知って慌てて行った時には既に二人が重症で彼女達を庇って戻るには流石のディアナでも重症を負ってしまったのです」
「実はねエミリア、最初旦那様が踏破してこの前皆で踏破して今度が3回目でしょ?どうやらダンジョンってどんどん成長して脅威が増して来るみたいよ。だから今はSランク以上のチームでないと難しくなっていると思うわ」
「そうなると各ギルドにも通達して一度でも踏破されたダンジョンはワンランク上がる旨伝える様にしますわ」
「ディアナの様子を見てこよう」とサトルが言って騎士団長の寝室に向かった。
ディアナは意識が戻ったようでスザンヌを見て笑い掛けて来た。
騎士達から聞いたのか、サトルの顔を見ると顔を赤らめ「サトル殿、この度は御礼の言葉も見つからない程の恩を受けてしまった。本当に有難う御座います」
「何だよ!ディアナらしくないぞ。もっと俺には威張っていつも通り接して構わないぞ」
「いやぁー、命の恩人で私の師の旦那様に横柄な口は聞けないわ」
「ディアナから女性言葉を聞くと、俺が調子狂っちゃうじゃないか」と冗談を言うが、スザンヌもサトルもそしてエミリアもディアナが助かった事にホットしていた。
「ディアナ、3日位寝てれば良くなるからゆっくり休んで、又俺にタメ口を聞かせてくれ」
「ああ、直ぐにサトル殿に聞かせるぞ」と半泣きで応えるディアナだった。
スザンヌもエミリアも目頭を押さえて笑っていた。
エミリアと王宮から出てスザンヌ達の家でお茶にすることになった。
「エミリア、旦那様が出すお菓子は特別美味しいが秘密よ」そう言ってスザンヌがエミリアにチョコレートケーキと苺紅茶を、4人は自分達の好きなケーキを次元ストレージから出してケーキタイムにした。
王女達の一命とディアナを救えたことに皆がホッとししてケーキを食べる。
「なな何ですか!このケーキというお菓子は、美味しい何て言うのを通り越した味わいだわ。スザンヌ様達はいつもこれを食べれるのですか?」
エミリアは興奮してついサトルの肩を叩いてしまった!
サトルはスキルを最大に制御していたが、一瞬でエミリアの意識が飛ぶ。
「サトル、シールドしてなかったの?」スザンヌが非難めいた声でサトルに言う。
「そんな事言われてもここは我が家だぜ、油断してしまったよ」
マーガレットやルビーゼはエミリア程の女性でさえも意識が飛んでしまうサトルのスキルに改めて驚いていた。
10分程してスザンヌがエミリアにカツを入れて意識を戻してやった。
「エエエ?あの私がサトルさんに触ったら・・・」後は顔を真っ赤になって言葉が出ない。
「あの〜、スザンヌ様は触っても大丈夫なのですか?」
「私は全開のスキルでも大丈夫よ。だって夫婦ですもの」と意味深なことを言う。
「サトルのスキルはここだけの秘密よ、最大制御じゃ無ければエミリアでさえ即死だったわ!」
「私、死んでも良いかも・・・」
「馬鹿な事言わないで頂戴。ハイ、サトルのスキルの話はこれで終わり、今後のこともあるので、王女達にエミリアからハッキリ実力を言って間違っても単独でダンジョンに挑もうと思わないように伝えないと駄目よ」
スザンヌの言葉も上の空でエミリアはサトルをジーッと見つめていた。
ケーキタイムを終えて、エミリアはギルドに戻った。
彼女はサトルに触れた瞬間、今迄感じたことのない快感に襲われ一瞬で行ってしまった!
彼女もまた初めての経験だった。
又感じたい、気絶してでも良いのでサトルに触れたいと思う自分がいるのを隠せないエミリア。
感じるということがこれ程麻薬のように身体を駆け巡り脳を麻痺させるのか、エミリアは初めて知った。
私もスザンヌ様のようにスキル耐性を持ちたいと思い始めていた。
ディアナ達の命を救って2日後、サトルはスザンヌと王宮に行き、バーバラ王女とキャロル王女を見舞い、その足でディアナの部屋に向かった。
ディアナは既にベッドから起き上がり、体をほぐす訓練をしていた。
「おいおい、半分死にかけた体だぞ!もう少し自分の身体を労ってやらないとダメだぞ」とサトルがディアナに怒った。
「おお、サトルに先生!ご覧の通り元気になりました」とニコニコして腕を折って筋肉の力こぶを見せるディアナ。
「少しは回復したけど、血液の量が元に戻った訳では無いのよ!もう少し安静にして栄養のある物を食べて早く復帰できるようにしなければ」とスザンヌ。
サトルが「しかし、姫様達には困ったものだな。自分たちの実力をもっとしっかり把握しておいてくれないと、ダンジョンなど彼女達では到底無理なのにな」
「私が気がつくのがもっと早ければ良かったのですが」とディアナ。
「貴女は姫様の護衛騎士ではなく王妃様なのだから、それを自分のせいだと思うのは間違いよ」
「まぁ、そうですが二人の王女の性格を考えるとある程度予想もたてられたかと」
「しかし、3度踏破されたダンジョンはかなり強敵の魔物達がいたはずよ、ディアナがやられるほどの相手だったの?」
「いや面目ないのですが、重症の二人を背負って騎士3名とではとても対応できない奴らでした」
「一体何が出て来たの?」
「岩ゴーレム3体で、剣が通じず魔法も効かず私の腕力でぶち抜いて1体の魔石を奪い取ったのですが、後ろから来たフォレストウルフのリーダーに足と手をがぶりとやられて、騎士達にかろうじて助けられて・・・。しかも、未だ2階層だったので彼女達だけでも戻れたのですが、これが5階層辺りだったら全滅でした」
「やはり、踏破された回数でダンジョンはどんどん成長して強い魔物が出て来るようね」
「俺の時は一番楽だったのかな?それでも5階層まで行けた奴はいなかったから今はかなり難しくなっているのかね?俺がまた踏破して来るかな?
「やめて!どんどん難しくなって1階層辺りでヒュドラに出会ったらそれこそスタンピード状態になるわ」
「ところでサトル殿、剣も魔法も効かないゴーレムを相手の時はどうすればいい?」とディアナが聞いてきた。
「ディアナがやったように、腕力で岩を打ち抜き魔石を破壊するのが一番だね、俺も体術か『マジックアイテム』、あっ!ディアナ、君に『マジックアイテム』の武器をあげるよ。ディアナであれば少しは魔力を流すことができるだろ?それがあれば魔法弾やエネルギー弾、バレット弾を打ち出せるから、今回のゴーレムなど瞬殺だし、フォレストウルフだって【ファイアボム】でも打ち出せるしね」
そう言って、ディアナに『魔導銃』を1丁差し出してあげた。
「いいのか?こんな白金何十枚もの貴重なアイテムを」
「構わんよ、うちの奥様より弱いから、これで姫達と王妃様を守ってやれよ」
「かたじけない、命を救っていただいた上にこれほど貴重なアイテムまで譲っていただき感謝しきれない」
「たまには俺が剣の相手をして鍛えてやるよ」
「先生より強いサトルじゃ私は敵わないわね」と急にまた女性言葉に戻るディアナ。
「ディアナ、最近女性的になってないか?」
「なんでよ、私はそもそも女だぞ!」騎士団に対してと先生や命の恩人には普通の女性に戻るのは当たり前でしょ!」
「でも新鮮だ、ディアナの女性言葉の会話は・・・」
そんなやり取りをしていたら王都冒険者ギルドのギルマス、エミリアがお見舞いに現れた。
「あら、スザンヌ先生とサトル様もいらしていたのですか?」
「ああ、エミリア、ディアナは随分元気になったわよ」
「良かったわ!」
「サトル殿のおかげだ」
「そうだ、スザンヌ様2、3日したらディアナの快気祝いの食事会を6人でやりましょうよ」
「そうね、ディアナ2日後には動けるわよね」
「先生、もう今日だって走り込みできるほどです」
「お前はいつでも俺より元気だよ」
「なんだ?サトル殿は元気がないのか?」
「いや、君たちを見ているとほんと、女性は強いと思うよ」
「サトル、私たち5人は特別よ」とスザンヌ。
結局2日後にエミリアが予約していつもの高級レストランに夕方6人が集まった。
「ディアナの回復を祝って乾杯〜!」とスザンヌが音頭で乾杯する。
この時ばかりはサトルも苦手なエールを冷やして飲んだ。
「ディアナはすっかり元気になったがなんだ?エミリアが少し元気がなさそうだが?」とサトル。
「実はダンジョン踏破されるとダンジョンが成長してワンランク上がることの件で王立研究所から立証せよと言って来て、頭がいたいのよ」
「そんなの簡単じゃん!この国の未だ踏破されてない比較的優しいダンジョンを王立研究所の職員を連れて潜り、踏破したら再び1ケ月後に潜り、更に1ケ月後に潜ってどんどん難しくなることを職員に見せればいいじゃない」とサトルが言った。
「サトル様、そんな簡単にダンジョンを踏破できる人間がごろごろいるわけもなく、私が一人で行くなら未だしも職員を同伴では流石にAクラスを2組ほど連れて行かなくてはできませんよ」
「そうなの?それなら俺たちが職員を護衛してあげてもいいぞ!ねぇ、スザンヌ」
「そうね、依頼金はいらないからそこでドロップした宝箱の中身やマジックアイテムは私たちが貰って、魔物の精算は王都のギルドと折半でいいわよ」
「本当ですか?調査にお金をかけられず、かと言ってランク上げの件を世の中に広めないと大変だと悩んでいたので助かります。ダンジョンと日程は私の方で組みますのでスザンヌ様に連絡します。あ〜ぁ、これで元気よく食事にありつけるわ」
「なんだよ、エミリアも現金な奴だな」とサトル。
ディアナはサトルに命を助けられて以来何故か少しだけ騎士団長の口調から女性的な口調になって、サトルは調子がくるっているようだが、サトルの周りやサトルのスキルに当てられた女性達はほんの少し女性的になっていることに未だ誰も気が付いていない。
ディアナも久しぶりに楽しく食事をして、すっかり体力も戻ったようだ。
「サトル、本当にありがとう!貴方が居たおかげでこうして師と友と楽しく食事ができるし、例の『魔導銃』が有れば、多数の魔物にもとても効果的で助かる」
「ディアナが元気を取り戻したのが何よりだよ、最初にお前て模擬戦をした時が懐かしいな!」
「いやぁー、お恥ずかしい!サトル殿の実力も読めずに一瞬でやられたわよね!」
「剣で戦わなくても、一瞬で心臓を潰されたり体を消されなくて良かったわ」
「俺はそんな非常識な人間じゃないぞ!それに戦いも一種の芸術だからいきなり心臓を奪ったら身もふたもないでしょ」
元気になったディアナを囲みながら楽しく食事をしてサトルとスザンヌは王都の自宅に4人で戻り、ディアナは王宮に、エミリアは冒険者ギルドにそれぞれ戻った。
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