第48話 キタミの家に行く

サトル達は王都でダンジョンを続けて踏破し、オークションで多額の金額を手にし、久しぶりにキタミの家に帰ってみる。


「何となくだけど、やはりキタミに来ると落ち着くわね」とスザンヌ。


「そりゃ、スザンヌは何十年もこのキタミに住まいを構えてギルドマスターを務めていたのだから・・・」サトルがスザンヌに応えた。


「久しぶりにケーシーさんのオネエ言葉を聞きたくなったよ!」


「うふふふ、サトルの世界では男性は皆サトルの様に喋るのでしょ?」


「こちらでは男性は殆どケーシーの様に喋るわ」


「冒険者に付いている荷物持ちの男性も?」


「そうよ、私たちと同じ言葉使いだから、逆に女性冒険者がきつい言い方になってしまうのよ」


「そういえば、ミモトのダンジョンで出会ったセリーナ・ボルシェという彼女は女性的とは言わないが男の俺にも随分紳士的に話しかけてきていたな?」


「彼女はもともと男性だからといって卑下する様な人物じゃないのよ、しかもある程度はサトルの強さも感じて、普通の荷物持ちとは違うのでは?って思いながらはなしかけてきたでしょ?」


「彼女達3人のパーティーで頑張っていたけど、どうしているかね?」


「彼女達はミモトがベースだけどキタミにもしょっちゅう来てクエストを達成していたわよ、たしかAランクのパーティーだったわよね?」


「セリーナはそこそこだけど、あとの二人が未だBランクでも下の方だった気がするな」


「久しぶりにケーシーさんの所にでも行って見るか?」とサトルがスザンヌに問いかけた。


「あたし達は家でのんびりしているからサトルだけ行ってらっしゃいな、何だか前の職場には行くの、気恥ずかしいわ」


「そう?そういえばキタミのギルドではまだ俺たちが一緒になったって言ってなかったよね」


「それじゃ俺一人で簡単なクエストでも受けて来るよ、夕食までには戻るから」と言ってジンはギルドに向かった。


久しぶりに入るキタミの冒険者ギルドの中、やはり懐かしいなと感じながらケーシーの姿を認め声をかける。


「ケーシーさん、お久しぶりです」


「あら〜、サトルちゃん、おひさ〜、キタミに戻っていたのね!きょうは一人でクエストかしら?」


「うん、スザンヌ達はのんびり家で過ごすそうです。何か俺向きのクエストはありますか?」


「サトルちゃんのランクでは今はちょっとないわね、でもAランクのが5点ほど出てるからその中から選んでみて」


「わかりました、掲示板の方に行ってみます」


サトルは冒険者達が屯ろしている掲示板の方に行って、高ランクのクエストを見ていた。


後ろから「おい、男の奴が掲示板の前をうろちょろするもんじゃないぞ、依頼主の荷物をきちんと見るのがお前の仕事だろ」とドスの効いた女性の声が聞こえた。


「今のは俺に言ってるのか?俺は荷物持ちじゃなく冒険者だからクエストを見ているので気にせんでくれ」


サトルは振り向きもせず高ランクのクエストの中で面白いクエストを見つけた。


『キタミの街を出て2キロ南東の森の中に人の魂を食らう黒い塊の討伐依頼、金貨80枚』


「ケーシーさん、これ受けますが、討伐部位って霧状だったりしたら消えてしまうけどどうすればいい?」


「その時はギルド職員が一緒に確認して森から消えているのを確認するわよ」


「了解です、原因も含めて討伐して来ます」


サトルは身体強化をかけて門を出て目的地の森に向かった。


森に数十秒で着き、直ぐに”魂を食らう塊”を見つけた。


サトルはすぐさま【鑑定】をする。


『黒い塊は魔物達の瘴気が集まり凝縮したもので5メートル以内に入ると生き物全ての魂を食い、肉体を溶かしてしまう。破壊するには5メートル以上離れたところから聖魔法の浄化をかけなければ撃ち取れない、但し浄化魔法の高ランク以外では無理である』


黒い塊は本能的にサトルを脅威と見なし、凄い殺気を放って来る、


サトルはここで初めて使う【透視】のスキルを使って見ると黒い塊の中心に大きな魔石コアが有るのを見つけた。


サトルの脳に”【透視】Lvが1000になりました、あと1回で透視レベル限界値をこえます”と聞こえて来た。


”浄化しても塊の中のコアを持って帰れば討伐証明にはなるな”と呟いてサトルは魔力を少し強めに【インティグネーション】と呟き解き放った。


森の一角の天空にまばゆい光の粒が凝縮し始め、それが一気に黒い塊へと撃ち降ろされ、激しい衝撃音とともに爆裂した。


残ったものは拳大の2倍の大きさの禍々しく黒光りした魔石が一つ残っていた。


サトルは触れても大丈夫か【鑑定】をして、念のため【ボディーシールド】をして摘み取り【ストレージ】に回収した。


周りにはおびただしい屍が腐り果てて横たわっているので【イレージング】で全て綺麗に消し去り、森からでて、ゆっくりとキタミの城門に向かった。


冒険者ギルドに戻り、ケーシーに黒い魔石を差し出し、「ケーシーさん、魔物達の魂が浄化されずに瘴気の塊となって怪物になっていたよ、全て浄化してこれが討伐部位の魔石です」と差し出した。


「凄く禍々しい魔石だわ!さすがサトルちゃんね、凄いわ〜」


「それじゃちょっと鑑定師に見てもらって来るわね、しばらく食堂で待ってて」


サトルは食堂でサンドイッチと果実ジュースを飲みながら【透視】のスキルのことを考えながら待っているとケーシーが声をかけて来た。


「サトルちゃん、鑑定師が言うにはこの魔石を少しだけ削って錬金術師が手を施すと凄い闇属性の武器になるそうよ、魔石の価値が白金ものなので討伐依頼の清算金が魔石分もプラスして白金2枚と金貨80枚になったわよ」とカードに入金してくれた。


サトルはまだ時間も早いので更に掲示板の高ランククエストの残りを見て、ワイバーン2匹とオーククイーンの率いる群れ20匹の2枚のクエストを剥ぎ取ってケーシーに渡した。


「サトルちゃん、ワイバーンはキタミの北門を出て3キロほど行った野原にいて結構頻繁に街にも来るので困っていたの、こちらの方が依頼金が金貨90枚と高いわ、

あとオーククイーンの群れは同じく北門を出てワイバーンがいるところとは反対に東に5キロ程行った岩場にいるわ。こちらは金貨2枚と依頼達成金が金貨1枚でトータル金貨3枚とやすいけどいいの?」


「いいよ、オークはだいたい単体討伐で銀貨15枚程度だもの」


「それじゃ、カードに依頼を打ち込んでおくわね」ケーシーがサトルからカードを受け取り奥に行って戻って来た。


「それじゃ、のんびり行って来るね」とサトルは北門に向かって歩いて行った。


”サトルちゃんが戻って来た途端、Aランクの討伐依頼が3件も片付くなんて、今まで何人も依頼を受けてなし得なかったのに・・・”とケーシーが呟いていた。


サトルは北門を出て、ワイバーンがいる野原まで20分ほど歩いて行き、風下から2匹がいるのを確認して、『魔拳銃』にマテリアルバレット弾を念じて頭を狙って2発連射した。


ワイバーンの皮を簡単に打ち抜き2匹のワイバーンは顳顬を射抜かれ即死する。


サトルは次元ストレージに血止めをかけた後、回収して今度はオーククイーンが率いる群れの現場に向かった。


ゆっくり歩いて1時間ほど行くと岩場が見えてくる。

サトルがいる場所が風上なので匂いで悟られるため、【転移】でオークの群れの風下に立ち、『鬼切丸』を鞘から抜いて【縮地】で20匹のオークの首を切り落として行く。


オークが反撃する間も無く首を落とされ残ったのは巨体のオーククイーンだ。


サトルはシールドを解除して素早くクイーンの後ろに回り大きなオッパイをむずっと掴み、モミモミすると「&#%%▼△$◻︎」と叫んで涎を垂らして気絶し、更にサトルが胸をもんで柔らかさを堪能していると、ピックっとして死んでしまった。


”スザンヌに止められていたけど、やはり久しぶりの感触は良かったぁ〜”と全てを回収して、歩いてのんびりキタミの街の中に戻って来た。


素材置き場にワイバーン2匹とオークの群れ20匹にオーククイーンを出して久しぶりに素材置き場のチーフのローズマリーさんがサトルを見つけて近づいて来た。


「サトルじゃないか!久しいなぁ、お前SSSランクになったそうじゃないか。やはり普通の男じゃなかったか」


「いやいや俺って普通の男ですが」


「普通の男がワイバーン2匹や帝国の兵士5000人を一瞬で倒せるわけがなかろう?」


「スザンヌさんもお前と所帯を持てばいいのになぁ!彼女は自分より強い男としか結婚しないと言っていたからな、私はそれは不可能だと言ってやったのだけど、目の前にそんな男が現れるとはなあ・・・」


「ローズマリーさんにだけ言いますが、スザンヌと最近結婚して今は一緒に冒険者をしてます」


「何だって!」と大声をあげるローズマリー。


「声がデカすぎますよ!まだキタミでは誰にも言っていないのですから、王都のギルマスのエミリアと騎士団長ディアナには言いましたが」


「侍女のマーガレットとルビーゼには?」


「今は彼女達と4人でパーティーを組んで王都とキタミを中心に活動してます」


「そうか、今度オタクに遊びに行かせてくれ、その時はケーシーも連れて行くから是非色々経緯を聞かせてくれよな」


「わかりました、是非遊びに来てください」サトルは納品書を受け取り受付にもって行った。


「ケーシーさん、納品書です」と言って清算金を受け取った。


「サトルちゃん、ワイバーンが金貨90枚で、オークの群れが金貨3枚ね」


「それじゃまた来ますね」と言ってサトルはスザンヌが待つ家に戻って行った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る