第42話 古代人遺跡
サトル達はキタミのスザンヌの邸宅だけでなく王都にも活動を移すべく、土地を購入してサトルのスキルで近代的な邸宅を建て、次の日の朝、王都の冒険者ギルドで最初のクエスト”古代人遺跡の地図作成と調査依頼”を受けて、王都の西門から出てすぐの”古代人遺跡”の地下の扉を押し開けて入って行った。
「サトル、暗いから【照明魔法】をかけてくれる」
「ああ、それじゃ俺が先頭で降りるな、階段が結構急なので注意しろよ」
魔物は特に襲っては来なかった。
Bランクの冒険者の血糊が付いた階段を降りきって、通路に降り立った。
通路に4人が降り立ったと同時に通路の両サイドに仕掛けられて居る魔石が発動して通路を照らす明かりが灯された。
「おお、凄い仕組みになって居るな、最初に発見した冒険者達は階段の所で既に襲われておそらく急だったのでBランクの冒険者でも対応出来なかったのかもしれないね」
「サトル、一応【サーチ】を掛けながら進んだほうがいいわよ」
「ああ、勿論潜り始めた時から掛けて居るし、俺の【察知】スキルも発動して居るから、何か有ればすぐ対応できるから安心してくれ」
「そんなことを言った途端に向こうから何やら突進してくるぞ!」
「あれは魔物というより人工的に魔物に似せたゴーレムだな」
明かりが照らし出したのはミノタウロスに似せた合金製のミノタウロスがハルバードを構えて、突進してくる。
「金属製なのでここは俺が一撃でやっつけるから」とサトルがミノタウロスの頭に【サンダーボルト】を放つと全身合金で出来たゴーレムのため1発で動力の魔石を破壊されて動けなくなり、サトルが【次元ストレージ】に回収した。
5人ほどが横になっても歩ける通路を更に進むと右側に部屋が有り、扉が施錠されて開かない。
サトルは『具現の水晶』を取り出して、全ての鍵を解錠できる”万能の鍵”を念じて『具現の水晶』を万能鍵に変化させてドアの穴に差し込み解錠した。
入ると椅子には古代人の女性のミイラが座り、何やら古代語の本を抱えたまま死んでいた。
サトルが本を取って表紙の文字をスキルで解読すると、”古代魔法の全て”と書かれた本で、サトルは嬉々として【次元ストレージ】に回収した。
更に部屋を調べると数冊の本があり、全て回収し、再び部屋を出て広い通路を進んで行くと、合金で出来た、ウルフが5匹向かってくる。
「サトル、ここは私がやるわ!」とスザンヌが【放電(スパーク)】を5匹のウルフに放ち5匹同時に破壊した。
【スパーク】は複数対象の敵対物には非常に効果が有り、一瞬で中に有る魔石を破壊して行動を停止させてしまう。
更に進んで行くと今度は人工物ではないスケルトン十数体が剣と盾を持って4人に向かってきた。
「マーガレット、ルビーゼここは貴女達に任せたわ」
「「スザンヌ様、お任せあれ」」
二人はそれぞれマーガレットが炎の剣、ルビーゼが水の剣で切り裂いて行く。
砕かれた骨をサトルが【亜空間】魔法で纏めて再生を防ぐためにも次元の彼方に消し去って処理した。
古代人遺跡はサトルが考えるにどうやら街というより一つの研究棟のような建物で細かく部屋に分かれていて通路の両側にそれぞれ30畳ほどの部屋に化学実験質のような器具が散乱していた。
部屋を開けるたびに人工の魔物が数匹襲いかかって来るが、サトルとスザンヌの雷系魔法で倒して行く。
全ての魔物が合金のために雷系の魔法がとても有効で、逆に通常の魔法や剣ではかなり対処が難しい!
最初の部屋以外にはミイラもおらず、古代書もなかった。
建物の中は1階層だけで部屋数は30部屋ほどあり、潜んでいる魔物は人工の合金製魔物だったが中にはレイスが居る部屋もあった。
レイスに対してはサトルが【結界】で囲い【亜空間】魔法で結界ごと次元の彼方に放逐して何とか切り抜けた。
部屋数が多くその都度人工の魔物を処理していたので昼になり一つの部屋で昼食を取ることにした。
マーガレットが部屋にある机と椅子に【クリーン】魔法をかけて4人が座って食事が出来る場所を作り、ルビーゼが【次元ストレージ】から昼食のサンドイッチとスープを取り出して用意した。
「サトル、思ったより部屋数が多いわね、ここは都市というより一つの研究所で恐らくこの近くに古代都市が別に埋もれて居る様な気がするわ」
「そうだね、俺もここは古代都市の郊外に建てられた何かの研究施設だったのじゃないかと思うな。恐らくここから遠くない場所に古代都市遺跡が埋没して居ると思うが発掘はかなり大掛かりになると思うね」
「それをするかどうかは国の研究機関が決めることだけど、王都の近くに古代都市が埋もれていたなんてギルドが聞いたら驚くわ」
「ただこの建造物が都市の郊外に建っていたのか、この建物だけが独立して有ったのかは今後の調査によると思うよ、ギルマスのエミリアに直接スザンヌが伝えて、有ると断言しないほうがいいと思うな」
「そうね、研究棟だから郊外に建てられていた様だと伝えて、判断はエミリアに任せるわ」
「『地図帳』で検索すればこの研究棟近くに埋もれた古代都市が存在するのかどうかはわかるけど、そこまで俺たちがしてあげる義務はないから、この研究棟の見取り図を書いて内容を記した結果を提出すれば良いよな」
「さぁ!残りの部屋の調査を終えてさっさとこのクエストを片付けましょう」スザンヌが掛け声を皆にかけた。
その後サトル達は人工魔物数体と魔物オーク3匹、ファングウルフ12匹、ウォーターベア2匹を討伐して、全ての部屋をチェックして、サトルが地図に部屋を全て落とし込んで作り上げギルドに戻ってきた。
「スザンヌ、俺は素材置き場に討伐した魔物を納品して来るから先にギルマスのエミリアにこの詳細地図を渡して調査した結果を報告してくれない?」
「わかったわ、クエスト完了を受付に行ってギルドマスターのエミリアに建物の件と近くに古代都市が有るかもと伝えておくわ」
サトルは古代遺跡から出てきた魔物を納品して納品書を受け取り受付に出した。
「サトル様、スザンヌ様からクエスト完了の地図を受け取っております。こちらが出没した魔物ですね、それではクエスト達成金貨80枚と魔物討伐の金額金貨3枚に銀貨35枚銅貨40枚合計で金貨83枚と銀貨35枚銅貨40枚、カードに振り込んで有ります。スザンヌさんと後のお二人はギルドマスター室に居りますが、サトル様も行かれますか?」
「俺はいいや、食堂で軽いものを食べて待って居るよ」
そう言って、サトルは食堂の中ほどの席に着き、軽食のサンドイッチと野菜スープを頼みスザンヌ達を待っていた。
食堂にはサトルの他には数人の冒険者しかいなかったが、クエストを達成した3人の冒険者が食堂に来て男性のサトルを一瞥して近寄って来た。
「おい小僧!ここは冒険者達が飲み食いするところで荷物持ちが座っていい席じゃないのを知らないのか?」
「はて?小僧って、俺に向かって言って居るのか?俺は小僧ではないが年寄りでもない。かっこいい青年と呼んでくれ。それに、俺は荷物持ちではなくこう見えてもお前達と同じ、いや違うな・・・お前らよりはるか上のランクの冒険者だ」
「ぎゃはははは!」
「貴様が私たちよりはるか上の冒険者だと?Bランクの私たちはこの王都に来て日が浅いから知られていないがミナミでは超有名な冒険者だぞ」
「たかがBランクと威張るなよ!とにかく俺は冒険者なんでこの席で座って食べる事は許されて居るはずだぞ」
サトルはうざいなぁという顔をしてサンドイッチを食べながら彼女ら3人を無視してスザンヌ達を待っていた。
3人の冒険者は何か言いたそうだったがそれ以上突っかかりもせず離れた席に着いてエールとつまみをたのんでいた。
しばらくしてスザンヌとルビーゼ達が居りて来て「なんだ、サトル、エミリアが会いたがっていたぞ2階に上がってくれば良かったのに」
「いや、小腹が空いていたのでサンドイッチとスープを食べたかったんだ、それで古代人遺跡の件は伝えたのか?」
「ええ、一応王妃に伝えて発掘するか決めてもらうと言っていた。これから家に帰る?」
「少し俺もこの街に家を構えたからエミリア達と入った高級店しかしらないからスザンヌと一緒に少し街を歩きたいな」
「それなら先にマーガレットとルビーゼは家に帰ってもらって夕食の準備をしてくれないか?私はサトルと街を案内しながら帰るから」
「はい、かしこまりました」と言って、ルビーゼ達二人は新しく建てた王都の家に先に戻って行った。
スザンヌはエールとつまみを頼み、サトルと久しぶりに二人で会話を楽しんで居る。
「そうだ、スザンヌ、納品したのは魔物ばかりで人工魔物は納品しても解体できないのでストレージに入れたままだよ。家に帰ったら全て金属ごとに分離してインゴットにした状態で持っておくか、錬金術屋かどこかに売り込もうか?」
「私たちの武器は既に有るから王都なら金属ごとのインゴットを鍛冶屋辺りに売ったほうがいいかな?」
「それなら私が王都で贔屓にして居るドワーフのお店が有るからインゴットにしたら一緒に行きましょ」
「そうだな、剣の砥ぎなども時々お願いしたいから一度一緒に行ってくれると嬉しいよ」
二人は軽食を終えると連れ立ってギルドの食堂を後にした。
先ほどサトルに絡んだ3人の冒険者がスザンヌを見て親しそうに話して居る男性が誰なのか気になり受付に一人が聞きに行った。
「おい、先ほど食堂で一人サンドイッチを食べていた男のやつ、確かキタミのギルドマスターをしていたS級のスザンヌさんと親しく話していたが本当に冒険者なのか?
「ああ、サトル様ですね?彼はこの世界で唯一のSSSクラスの怪物冒険者でスザンヌ様のご主人ですよ。ドラゴンを何体もお一人で瞬殺された冒険者ですよ」
3人はそれを聞いて信じられないといった顔をして、”絡んだりしなくて良かった!”と3人とも内心ホッとしていた。
サトルはスザンヌと王都をのんびり歩きながらギルド周辺の魔道具やとか武器屋、錬金術屋、鍛冶屋など冒険者が立ち寄る店を見て回り、次に食べ物屋などを見て回った。
王都の街の方が若干キタミよりは男性の姿を見かけるが殆どが荷物の整理や小物を運ぶ店員をして居り、店の主人は全て女性だった。
冒険者ギルドから歩いて10分ぐらいのところに大きな市場があり、そこにはたくさんの果物や野菜、肉やパンなどの食材屋が軒を連ねていた。
「ここが王都の中央市場だ、ここで殆どの日常の食材は賄える」
「すごい店の数だな、さすが王都だね」
「ところでさ、スザンヌ?王様以外は宰相とか大臣は男性はいないのかい?」
「どこの国も王様は男性だけど国の政治、経済は王妃が仕切り男性の王様は名目上だけで、宰相、大臣、貴族を全て女性だわ」
「肉体労働も女性なんだろ?」
「ええ、力仕事は全て女性よ!男性はお茶を入れたり、お湯を沸かす魔石を削ったりとか下働きしかできないわ」
「男性の冒険者はこの国には何人ぐらい居るの?」
「サトルを入れて、4人かしら?サトル以外は冒険者と言ってもスキルが【索敵】しか持っていないからダンジョンの潜る時などは荷物を持ちながら魔物が来るのを事前に知らせたり、罠を事前に発見したるする役割で一番上のベテランがEランクが一人と後二人がFランクよ」
「剣を振るうこともできないのか?」
「ええ、筋力が無いのでせいぜい木製の模擬剣かダガー程度しか持てないわ」
「男性は筋力をつけようとは思わないのかな?」
「女性は普段から腕立てとか背筋、腹筋などで鍛えて居るけど男性は腕立て伏せを1回やれば腕の骨が折れてしまうわよ」
「そんなにやわなのか?それじゃ荷物持ちにもならんじゃないか・・・」
「だから荷物持ちの男子は結構重宝されているのよ」
「魔力はどうなんだ?」
「この世界で女性は産まれながらにして魔力が有るけど、男性には魔力が無いのよ。だからサトルが膨大な魔力が有るので異世界人だと魔力を感じる事ができる女性は達はわかるのじゃ無い?」
「ただ、スキルと魔力を制御するリングでかなり魔力を隠蔽して抑えて居るから余程の女性じゃ無いとサトルの事をわかる人はいないかもね」
「でも、俺が作った制御リングでは魔力も結構じゃじゃ漏れ状態だから魔力感知の人間であればすぐバレるな?」
「でも、異世界人とまでは思わずこの世界でのイレギュラーな男だと思うでしょうね」
そんな会話をしながら王都の街を歩いて2時間ほど散策し終えて自宅に戻ってきた。
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