第33話 ネブロイの宿
スザンヌとサトルは200号室に入り一緒にシャワーを浴びる。
「サトル、私のステータスを見せるので魔法特性を今一度詳しく精査してくれないかしら?」
「スザンヌはSランクになって随分日も経つのだろう?何で今更自分の能力の確認するんだ?」
「かなり早くこの世界で最強と言われ今まで私以上の強者に遭わなかったので剣の技術ばかりスキル向上させて魔法の方を少し疎かにしていたきらいがあるのよ!」
「スザンヌらしくないな、どれちょっとステータスを俺に見せてみろ」
「ステータスオープン」
スザンヌ : エルフ族 年齢???歳
剣神の加護
精霊王の加護
全魔法特性(闇魔法除外)
無属性魔法:エナジーバースト、ティルトウェイト、シールド、雷系全般、幻影
「スザンヌ、お主、雷系を全て打てるんじゃん!それにエネルギー波攻撃もできるし、俺と遜色ないぞ、何で年を隠蔽かけてんだ?」
「そこはサトル、軽く流してね!それと魔法の部分のステータスはあまり気にしてなかったから自分が必要な魔法だけ覚えて訓練していたのよ」
サトルの【鑑定】のレベルは限界値越えしているので【隠蔽】をしても読み取ろうと思えば読み取れるのだが少し怖いので敢えてスルーした。
「イヤー、マジで凄いぞ!」
「宿の中では雷系魔法の練習はまずいからちょっと裏庭に出て練習してみよう」
二人は宿を出て裏庭に回った。
幸い誰もいないので先ずはサトルが"サンダーボルト"と呟いて5メートル位先の石に雷を発生させて落とした。
岩が凄まじい音をあげて砕けた。
スザンヌがそれを見て同様に数メートル先の木に向かって”サンダーボルト"と詠唱して手を翳すと木に雷が落ちて幹が折れて木が倒れた。
「スザンヌ、裏庭では狭いから街の外に出て練習しにいこう」
二人は街の門をでて【身体強化】を掛けて街から数キロ離れた岩場に来た。
「スザンヌ、今度は複数の相手に同時に雷を落とすのを試してみて」
元よりスザンヌは魔法や幻影を巧みに使っていたので複数の雷もいとも簡単に発動できた!
「あとは自由に目標に素早く無詠唱で、的確に雷を落とせる様に練習だね」
スザンヌは数回練習すると、無詠唱で的確に複数の場所に発動させられる様になった。
「次は無属性のエナジーバーストとティルトウェイトだね、これはスザンヌが得意とすると"気"の塊を発動させる魔法だからすぐ出来ると思うよ」
「ティルトウェイトとはどんな魔法なの?」
「指定した範囲内の敵対する相手全員に属性に関係なく魔力の衝撃波を放つ上級無属性魔法で通常のシールででは防げない魔力衝撃波ですごい威力だよ」
「私がそんな魔法を打てるのか?」
「スザンヌは剣ばかり技を磨いていて、魔法も剣に役立つ魔法しか目がいってなかったんだな!」
「そうね、私にとっては剣が全てで剣が一番強いと思っていたけどサトルを見ていたら剣も魔法も体術もバランスが大事だとわかったわ」
「最近スザンヌの俺に対しての口調がギルマスの頃とは違って来たし、武術に対しての考え方も変わって来たな」
「目の前に素晴らしい目標があるし、口調は私たち夫婦なのよ、それに私は男性ではないから、サトルは事務的な口調の方がいいの?」
「いやいや、この世界の女性は男に対して言葉が女性的でないからな!みなケーシーみたいな男性が多いからしょうがない気もするがね」
「とりあえずティルトウェイトを発動してみるわ」
「スザンヌ、魔力とともに体内の”気”を手に集中させる意識を持って一気に解き放ってみてくれ」
スザンヌが岩に向かって手を翳し、”気”を手のひらに集中させて魔力とともに一気に解き放った。
目の前の岩が砕けて前方の岩場に50メートル四方の穴が空いてしまった。
「サトル、これって私の魔法なのかしら?」
「そうだよ、無属性の上級魔法の【ティルトウェイト】だぞ」
「サトルも当然この魔法はできるのよね?」
「ああ、もちろんできるが、魔物が形をなさないほど破壊されるのでギルドに討伐部位を出せないから使かったこと無いけどね!」
「スザンヌも余りむやみに使わず、強盗団100人に囲まれて相手に魔法師が何人もいるときにでも使ってよね」
「ああ、そうするわ。まさか私にこんな強力な魔法が使えたなんて信じられないわ!」
「スザンヌなら剣だけでも充分SSランクの冒険者だからそれで充分だよ」
「スタンピードなどに出会ったらサトルと一緒にこの魔法を使うわ」
「この世界にも魔物の氾濫は起こるんだね?」
「ええ、勿論よ。数年に一度どこかの街が滅びたりしてるわ」
「その時は俺とスザンヌがいれば街は救えるよ、とりあえず魔法訓練はこれ以上スザンヌには必要ないから街に戻ろう」
そう言って、二人は街の門迄身体強化を掛けてあっという間に門の前にきて、街に戻って来た。
宿に戻り、マーガレット達の部屋の205号室をノックして4人で少し早めの夕食にする。
「スザンヌ様達はどちらかにお出かけでしたか?一緒にお茶でもと部屋にお伺いしたのですがいらっしゃらなかったので・・・」とルビーゼがスザンヌに話しながら階段をおりていく。
「旦那から無属性魔法と他の魔法の手ほどきを少し受けていたわ」
「スザンヌ様なら剣だけで簡単に相手をねじ伏せられるので魔法なんて必要無いと思いますが?」
「私もそう思って余り魔法を重視してなかったが、うちの旦那様のように規格外の人物には剣でも負けるし、魔法でも負けるので少し戦い方の幅を広げるために自分の魔法特性を見直して旦那様に見てもらっていたのよ」
「それでどうでした?」
「おかげで魔法特性もしっかり把握できて発動もできるまでにはなったわ」
4人がけのテーブルが空いていてそこに4人で座りエールを3杯と果実ジュースを頼みその後夕定食を頼んだ。
部屋を予約したときに会った猫娘が「はい、お待ちどう様ニャン」とエールを女性3人の前に置き、果実ジュースをサトルの前においてくれた。
「お疲れ様、乾杯!」とスザンヌが掛け声をかけ、3人も「「「カンパーイ」」」
とエールとジュースで乾杯して飲み始めた。
食堂は夕食には未だ少し早いが、ここは冒険者ギルドからも近い宿ということでクエストを終えてた冒険者の連中が早くから飲んでいた。
サトルがざっと見渡すと、ちらほらと3人程男性の荷物持ちの冒険者が女性陣のそばで食事もせずに立っている。
「スザンヌ、男達の荷物持ちはいつ食べるんだ?」
「彼らは冒険者の女性達が食べ終わって部屋に戻るか、飲み直しのために外に出たら食べるのよ」と教えてくれる。
「低ランクでも冒険者なら男でも座れるのにな!俺なら意地でも荷物持ちでなく冒険者登録するがな・・・」
「低ランクでもこの世界では、男性冒険者は一人か二人程度しか一つの街にはいないわ、だから何処行ってもサトルは絡まれるのよ」
「サトル様は誰が見てもSSランクの冒険者とは見られませんものね」
「私ら3人は少なくとも高ランクの冒険者だとわかるが、Cランク程度の冒険者ではサトルの力量を推し量れる人はいないと思うわよ」とスザンヌ。
「そうですね、おそらく相手の力量を鑑定を使わずともわかるのはAランク以上の冒険者じゃ無いとわからないでしょうね」とマーガレット。
ちょうど夕定食のマナバイソンのガーリックステーキ焼きと野菜ジュースとパンを猫娘さんが持って来た。
「おお、マナバイソンのステーキか!俺のいた世界のビーフステーキに全く同じ味で俺の大好物だよ」と言いながらサトルが黙々とてべていると近くのテーブルでエールを飲んで酔った冒険者の女性がふらつきながらサトルに近づいて、いきなりエールの入ったグラスを頭にかけた。
勿論サトルはシールドをしているので被害はないが、横にいたスザンヌが直ぐに対応して先ほど覚えた【エナジーバースト】を軽く放って腕を吹き飛ばした。
「おまえ、私の旦那に何をする!」
腕を吹き飛ばされた冒険者は悲鳴をあげてのたうち回りサトルがしょうがないので【エクストラヒール】で腕を再生してやり、「さっさと自分の席に戻らんとうちのカミさんに首から上を吹っ飛ばされるぞ」と冗談を言って追い帰した。
それで落ち着けばいいのだがその女の冒険者仲間がだまっておらず、3人が剣を抜いて向かってくる。
直ぐに、マーガレットが彼女達に冒険者カードを見せて黙らせようとするが酒に酔っていて止められない。
スザンヌが覚えたての雷系の【サンダーボルト】を3人の剣を持っている手に軽く放った!
彼女達の剣が弾け飛び、腕の手首から先が炭化してしまった。
3人共悲鳴を上げてのたうち回る。
サトルが3人にハイヒールを掛けて一瞬で治してあげ、冒険者カードのプラチナカードを見せて「次は命が無いと思え」と言って席に戻った。
他の冒険者達の中にはスザンヌを知っている冒険者もいて「あの連中は世界最強クラスを相手に馬鹿なことをしたな」と呟いていた。
スザンヌは「私の大切な旦那様にエールを頭から掛けるなどと許せぬ行為だ」
「俺はシールドをしていたし被害が無かったから殴る程度で勘弁してあげれば良いのにいきなり覚えたての魔法を放ったからビックリしたぞ」
「いやぁ〜、実際使って見たかっただけなのよ、うふふふふ」と笑ったスザンヌを見てサトルは鳥肌が立ってしまった。
食事も終え4人は部屋に戻りスザンヌはいつものルーティンをサトルにせがむのだった。
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