第15話 ミモトの街
朝食を6時頃食べ、早々ミモトに向かう。
西門を出て『具現の石』に茶色の乗馬用の馬と念じると、鞍等も付いた馬が現れ、サトルは初めて騎乗した。
"少し早目にね"と呟くとサトルの意思が伝わったかのように颯爽と走り出した。
途中オークの群れ12匹に出会って討伐した以外は、何事も無く平原で『美食の皿』でマルゲリータとジンジャーエールで昼食をとり3時半にミモトの門に着いた。
兵士の女性にカードを見せて街にはいろうとしたら、カードを見て驚いていた。
冒険者カードは不正など出来ないので特に咎められる事も無くすんなり街に入り、先ずは宿と思い探すとギルドの直ぐ傍に有った。
裏に周り馬を『具現の石』に戻して、宿に入った。
「すみません、3泊泊まりで部屋空いてます?」
「空いてますよ、3泊で銀貨1枚と銅貨50枚です」と宿のおかみさんらしき人が応えた。
サトルはカード払いをしたら、おかみさんが真っ青になって「ああぁ、あんた男だろう?Sランクの冒険者ってこの世界であんた独りだね!」
「そうらしいね、でも未だ冒険者になって1ケ月経たないから実感が無いよ!」と応え、鍵を貰うと2階に上がって行った。
サトルは部屋に入って、ギルド近くの宿を取った事に後悔していた。
宿の泊まり客は殆どが冒険者ばかり、つまり殆どが女性客だ。トラブルを避けるため、夕食を普段より早く食堂に行き食べ始めた。
夕食はオークの照り焼きともつ煮込みの豪華なダブルのおかずにケルピーのスープと黒パンに野菜サラダで味が労働者向けに少し濃いめでそれがまた食をすする。
食堂には客が3人ほどしかおらず、何事も無く部屋に戻った。
街を歩くのは明日にして、今日はアメリカンコーヒーとサバランを出して食後のデザートを楽しんだ。
少し早目に寝て明日早朝からダンジョン踏破に臨もうと、早々ベッドにダイブして意識を投げ出した。
翌朝、4時から『誅戮剣』で素振りをし、いつもの様に座禅を組み、朝練を終えたらシャワーを浴びる。
いつものルーティンをこなし、食堂に降りて来た。
既に数人の冒険者が朝食を取っていた。
サトルも急いで朝食を食べ終え、ギルドに向かおうと席を立った時、一人の冒険者が近ずいて来て、「未だ雇われていないなら私らの荷物持ちをやらないか?」と聞いてきた。
「折角の申し出だが生憎俺は荷物持ちじゃなく冒険者なんだ、申し訳無い」と断った。
「あっ、これは失礼した。ところで君のランクは?」と紳士的(紳士では無いが)に聞いてきたのでカードを見せた。
彼女はじっーとカードを眺め「キタミならスザンヌさんと会ったか?」
「あぁ、随分世話になっている」
「そうかぁ、彼女にあったらセリーナ・ボルシェが宜しく言っていたと伝えてくれ、大変失礼した」
初めてだ、こんな丁寧な対応の女性に会ったのは・・・。
彼女の動きから高ランクの冒険者だと感じとったサトルだった。
ギルドに行き、受付に「"瑰麗のダンジョン"に潜ります」と言って、カードを出した。
宿でミモトに有る2箇所のダンジョンの名前と位置は調べてあったのでギルドを出ると北門を出て【ブースト】を掛けて4キロ東にある"瑰麗(カイレイ)のダンジョン"入口に着いた。
前に3人の冒険者が居て、何と朝話し掛けてきたセリーナ・ボルシェさん達だ!
目礼して、自分の番を待っていた。
セリーナさん達が入って行き、20分後にサトルが入った。
1階層はゴブリンの10匹の群れで、【インビジブルハンド】を普通に使い、ゴブリンは触れた瞬間死んで行った。
討伐部位の耳だけ回収して行く。
2階層は岩場ステージでドラゴントカゲが15匹いる。
サトルは【インビジブルハンド】で瞬殺して行った。
やはりスキルの威力が強くなり、触れただけで行った瞬間に心臓麻痺まで起こして死んでしまうようだ。
『マジックアイテム』の『抑制のリング』はサトルの意思を直ぐ受け、自動で魔力などの力を制御できている。
3階層のワイバーンが3匹いる。
サトルは【ファイアスプラッシュ】で3匹の翼に穴を開けて飛翔能力を削ぎ落としてから、『鬼切丸』で【縮地】を使って一瞬で間合いを詰めて、首を切り落とし回収した。
4階層は廃墟ステージで、2棟の大きな建物が上層部が崩れて2棟とも2階までしか原型をとどめていない。
廃屋に向かって行くと、植物系の魔物がサトルに絡みつくが絡んだ瞬間に枯れて行ってしまう。
最初の建物に足を踏み入れると数万匹のキラービーが襲ってくるがサトルは【シールド】で身を守っていて、何ら問題ない。
仮に刺されても彼には毒に対しての耐性が有るため大丈夫だ。
数万のキラービーを【結界】で包み込んで【重力(グラビティー)】魔法でペチャンコに潰して結界を小さくして回収。
2階に上がるとレイスがいるがサトルの【聖魔法】で浄化され、霧散した。
もう1棟の1階にはスケルトンキングがいる。
盾と剣でサトルに襲い掛かるが、サトルは大剣『誅戮剣』で上段から振り抜き魔石もろとも粉々にして瞬殺した。
2階にはバンパイヤ(女性)がいて、サトルの【インビジブルハンド】で倒れた後【聖魔法】と【ファイアボム】の二重魔法で霧散させられた。
5階層のボス部屋の入り口に先行して入っていたセリーナ・ボルシェ達3人の冒険者のうち二人が倒れてかなりの重症で、一人は足がキラービーの毒が回って腐り始めている。
セリーナも傷をいたるところに受けている感じで、恐らく二人をかばいながらの戦いで負傷してしまったのだろう。
「セリーナさん、今直してあげるからな!」とサトルがセリーナに回復魔法、【ヒール】を掛けてあげ、あとの二人に【ハイヒール】を掛けて3人を完全に直してあげた。
「サトル殿、本当にかたじけない!我々はここでリタイアしてギルドに戻る。ギルドで君がくるのを待っているから」と言って1階層に戻って行った。
サトルは5階層のボス部屋を開けるとミノタウロスがいる。
”おおー、デカパイだぁ!”サトルは【インビジブルハンド】で触った瞬間心臓麻痺で死んでしまった。
”あれぇ?もうちょっと触っていたかったのに・・・、早すぎでしょ!”一人愚痴った。
側に宝箱が有り、罠を確認しながら慎重に開けた。
中には、『簡易転移盤』が入っていた。一度行ったところであれば一瞬で転移できる『マジックアイテム』だ。
【次元ストレージ】に入れて回収した。
6階層から9階層も順調に魔物を討伐して最終の10階層のラスボスの部屋にきた。
ゆっくり扉を開けると、黒龍が火炎咆哮を吐いている。
【インビジブルハンド】で胸の位置を触ると、ブルブルと震えて倒れ心臓麻痺で死んだ。
側には宝箱が有り、『遠距離通話器』がまたも一対入っていた。
ダンジョンコアを回収して、転移盤で1階層の入り口まで戻り、ミモトの冒険者ギルドに戻り、素材置き場に討伐した魔物達を置いて、食堂で待つことにした。
食堂に行くと、4階層で助けたセリーナさん達3人が手を振って呼んでいた。
サトルは『抑制のリング』を最大限強めにして、尚且つ念のために【ボディー・シールド】をして同じテーブルの向かい側に座った。
「もう体の方は大丈夫ですか?」と特に重症だった二人の冒険者に聞いた。
「先ほどはありがとう!おかげで足を切断せずに冒険者を続けられるよ。本当にありがとう。私はAランク冒険者のエーデル、こちらはメリーナだ、宜しくね」
「俺はキタミで冒険者登録したサトルです。宜しく」
「セリーナに聞いたが、サトル君はSクラスだそうだね?しかも聞くところによる
と登録してまだ一ヶ月も経っていないとか?人外な男性だね」
「先ほどセリーナがギルドにある『遠距離通話器』を借りてスザンヌさんと話したがベタ誉めだったぞ!この世界のSクラスを瞬殺で負かしたとか?サトル君のことをSSSクラス以上だと言っていたぞ」
「いやぁースザンヌさんには王都のオークションに一緒に行ってもらったり侯爵を
消した時にも守ってくれて随分世話になってるんだ」
「ところでスザンヌさんがサトル君には絶対に触れるなと強く言われたが、何でも一瞬で意識を奪われるとか?どういうこと?」とセリーナが聞いてきた。
スザンヌも余計な事まで教えるなぁとサトルはぼやいた。勿論彼女達の事を心配してなのだろうが・・・。
「実は俺の特別な体質で、人や魔物が俺の身に触れると一瞬で意識がなくなり気絶してしまうんだ。だから触るなと注意したんでしょ?」
セリーナが凄く興味を持って「今触ってみても気絶するの?」
「いや、君たちが倒れると困るから【シールド】で身を包んでいる」
「えっ?サトル君は【シールド】魔法を使えるの?」とエーデル。
「ええ、魔法は殆ど使えます」
「もしかして4属性全て?」とセリーナ。
「はい、全てです。でも4属性ではなく7属性ですよ」
「世界中で君だけだろうな全て持っているのは、王立の魔法師でも3個持っているのが一人しかおらず最高だからな」
「触ったら絶対ダメだぞ!とスザンヌさんが言ったが気絶してしまうのか?スキルか?」とセリーナ。
「スキルなのか解らないけど体質に似ていると思いますよ」
そんな会話していたら納品書ができて、サトルは「ちょっと清算だけしてきます」
と言って受付に納品書とダンジョンコアとカードを提出した。
「サトルさん、地図は有るかしら?」
「あっ、ごめんごめんこれが地図です」とサトルは慌てて地図もだした。
「清算金が白金65枚、金貨48枚、銀貨50枚、銅貨86枚です」
サトルはカードに入れてもらってセリーナたちの席に戻った。
「サトル君、助けてもらったので昼食をおごらしてくれ」とエーデルとメリーがいうのでご馳走になることになった。
4人で同じテーブルで食べているということは、男のサトルが冒険者だということだが、周りの冒険者(100%女性)が胡散臭そうに眺めている。
しかし、此処ミモトではセリーナ達3人はAクラスの有名人のようで、特に絡んで来る者もいなかったが、先ほど入ってきて食事を頼んだ5人組の冒険者はどうやらミモトに来るのは初めてなようで、席に着くなり一人が寄ってきて、「おい、男がここに座ってちゃ、まずいだろう!さっさと立ってご主人の側に行きな!」
「ここの食事はまずくないぞ!目障りなお前が来なければとても美味い!」とサトルが言った。
「貴様、私が言ってることが聞こえないのか」とサトルを掴もうとしたした時、サトルは【シールド】を外して一瞬で彼女が気絶する。
セリーナが背中に喝を入れて、連れて行くように仲間の冒険者に言うが、仲間達が興奮して、サトルに剣を抜いて詰め寄って来た。
サトルは4人を一瞬で気絶させて、ギルドの受付に「もう少し教育をしとけよ」
と言って奢ってもらった食事を続けてたべた。
ギルドの男性受付が二人、引きずって空いてる席に運び、とりあえず一旦騒ぎは収まった。
周りの冒険者はさすがセリーナの知人は男性でも桁外れに強いと感心するものとまさか男がやったのではなく、セリーナかエーデルがやった事だと勘違いしている冒険者も多かった。
サトル達は、気絶した女性陣の話を「ねっ、俺が触っただけで気絶しちゃったでしょ?制御しなければ彼女達は即死してしまうんだよ」とセリーナ、エーデル、メリーらに説明するサトル。
4人でお茶を追加で頼んで、ダンジョン踏破などの話をしたり、Sランクの3人とサトルの模擬戦の話をしたりして盛り上がっているところに、先ほどの冒険者5人が今度は剣を抜いて外に出ろとサトルに決闘を申し込んで来た。
ギルドの受付の女性の方を見ると、サトルの視線をそらすので「お前らのランクがどの程度かわかるからやめなよ。少なくとも100年経っても俺のレベルには到達できないぞ」と言って避けようとした。
「ここまで男にバカにされて黙っていては冒険者Cランクの沽券に関わる。表に出て勝負しろ」
「いいけど、時間がもったいないから5人まとめて来てくれる?」
「受付の女性の方、一緒に来て合図を頼むよ」とサトルは先ほど目をそらした受付の女性に声をかけ道路まで呼んだ。
セリーナ達は余裕でみている。
サトルは【インビジブルハンド】ではなく相手をすると決めて、5対1の決闘がギルド前の道路で始まった。
”このギルドには競技場が無いのかな?”と思いながら面倒くさそうに外に出たサトル。
相手は既に剣を構えているがサトルは素手だ。
ギルドの女性が「始め!」と叫ぶと一斉に動き出す5人、っと皆が感じた瞬間彼らの足と剣を持つ手が消えて、のたうち回る5人の冒険者。
「そこの受付の女性の方、この連中を治してあげたいがどうだ?」とサトルが聞く。
「頼む、治してあげてくれ」と女性の受付が言う。
サトルは【ハイヒール】と念じて、5人の手足を再生してやり、セリーナ達と食堂に戻った。
5人は失禁して震えていて、受付の女性が医務室に連れて行った。
「サトル殿、あの魔法は?」とセリーナ。
「あれは【イレージング】と言って物を構成している分子の結合をばらして消す魔法だよ」と話すも、誰も意味がわからないで只々驚いている。
「さすがスザンヌさんがSSSを超える人外だと言っていたのが良くわかるわ。戦い方が私たちの想像を超えるレベルだもの」とメリーが感心していた。
しばらくすると5人の冒険者が着替えて頭を下げに来た。
「男でもSクラスを超える人が居ることを肝に命じて男性にもう少し優しくせっしな!今度俺に向かって来るときは手足だけでなく首も消すよ」と言っておちゃを飲み干すサトルだった。
彼女らがいなくなった時に、「サトル殿ほんの少し君を触らしてくらないかな?どんな感じで気絶するのか経験したい」とセリーナが悩ましいことを言って来る。
「いいけど、他言無用にしてくれる?」
「もちろんだ、触っただけで私が気絶するなどと広まると次期Sクラスの私の実力の沽券に関わるからな」
サトルは『抑止の腕輪』を最大に効力をあげて、セリーナに肩を触らせた。
「あっ、あれぇ〜」と言って気絶するセリーナ。
エーデルがやれやれといった感じで抱き上げて椅子に座らせ喝を入れて正気に戻した。
セリーナは顔が真っ赤だ!
「セリーナ大丈夫か?」とエーデルが聞く。
「ああ、大丈夫だ、大丈夫だがなんだった?あれは・・・」
サトルは口の前に指を立てて、喋るな!とセリーナに合図した。
「セリーナ、皆さんご馳走様でした。俺はもう一箇所のダンジョンに潜って来るからここで失礼します」と言って受付の男性の所にカードを出して"傀儡(カイライ)のダンジョン"に潜る旨伝えた。
「あら、幾ら強いからって男性がダンジョンに一人では無理よ、やめた方が良いわよ!」と忠告してくれたが、「オジサン、俺これでもSクラスだから大丈夫ですよ」と言うと男性がカードを良く見て、慌てて「御免なさい!初めてよ、Bランク以上の男性冒険者は」
彼から場所を聞いて門を出たサトルは【転移】で"傀儡(カイライ)のダンジョン"入口に来て、カードを見せて入って行った。
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