第14話 ランクアップ
オークションが王都で行われ、王都で絡まれた侯爵の部下20名を消し去り揉める前にキタミに向かって馬車を走らせるスザンヌとサトル。
帰りは特に魔物や野盗にも襲われず、スザンヌが宿の部屋を一つしかおさえず、キタミ迄の3日間はひたすらスザンヌの耐性強化にサトルは付き合わされて、毎日二人で合体しては意識を投げ出していた。
やっとキタミに戻ってきたスザンヌとサトルは冒険者ギルドに行ってケーシーにスザンヌが「サトルのカードをSランクにランクアップしたのでカードの書き換えを頼む」
「えええ、ギルマス!サトルちゃんがSランクになったの?すご〜いわぁ!」
「サトルちゃんおめでとう!それじゃ差し替えるのでカードくださらない?」
相変わらずのオネエ言葉のケーシーさん。
サトルはスザンヌにオークションの件を色々お礼を言って、白金10枚を手数料として渡そうとした。
「なんだ?サトルこのお金は」
「スザンヌに代理で出して貰ったし、王都往復迄付き合わせたお礼だよ」
「要らん、私のギルドマスターとしての仕事なんだから貰うわけにはいかない」
「それよりサトル、君はいつまで宿生活をするのだ?もしよければ私のところは部屋が余るほど有るから下宿しないか?」
「いや、俺がスザンヌに夢中になってしまいそうだから遠慮しておくよ」
「それより、この国の常識をもっと知るために王都以外の街々を少し冒険者をしながら回って勉強してくるよ」
「そうか、だが『遠距離通話』を持って行ってくれ。何かの緊急連絡の時には【転移】がお主はできるのだから頼むぞ」
「わかりました、ギルドマスター様(笑)」
「あまり他の街で揉め事を起こすなよ」
サトルはケーシーから新たなSランクカードを受け取って、久しぶりに”渓流の流れ”
に入って部屋を1泊おさえた。
サトルはダンジョン踏破で得た宝箱の数々のマジックアイテムを整理して『幻夢』、『リフレクションリング』は常に身に付け、先ずは明日ここキタミから王都に向かう道ではなく、他の街に向かって行ってみようと考えた。
夕食を食べ、【マップ】と念じキタミから王都の反対方向の街を見ると、ラベリーという街がキタミから30キロ程西に行った所にある。
宿の人にラベリー迄行く馬車が有るのか聞くと、「一番早い時間で9時にこの宿の前から出るわよ」と教えてくれた。
サトルはその馬車に乗ろうと、早々2階の部屋に戻り、シャワーを浴びて寝る事にした。
翌朝早く起きて、『誅戮剣』で素振りをして、部屋に戻りベッドの上で座禅を組み瞑想し、魔力の流れを感じつつ精神統一をして瞑想を解いた。
階下に降りて朝食を食べると、宿の前で定期馬車を待つこと10分程、定刻通りに来て銅貨10枚払い、馬車に乗った。
他に客は冒険者3人と荷物持ちの男が1人乗って居る。
サトルは男の隣りに座り、外の景色を見ながら時間を過ごした。
サトルは乗り合い馬車だと、隣りに女性が来た場合は、触れただけで気絶されるのでまずいと思い、ラベリー以降は『具現の石』を使って馬に変え独りで馬の旅をしようと考えていた。
目の前の冒険者、勿論女性だが、「おい、君は見たところ商売人では無いよな?農民にも見えんが、主人でも迎えに行くのか?」と聞いてきた。
「いや、俺は冒険者をしていて、ラベリーに冒険者ギルドが有ればクエストでも受けようと思って向かっているんだ!」
「ほぉー、男の冒険者とはまた珍しいな!ラベリーはキタミよりは魔物は多いが、比較的優しいからお前でも大丈夫だろう」
「そうか、それは嬉しいな!ダンジョンは有るのか?」
「ああ、だがあそこのダンジョンはよした方が良いぞ、未だ未踏破でキタミダンジョンと同程度に難しいらしいからな」
横にいた女性が「男がダンジョン潜れる訳ないから話すだけ野暮だ!」
「あはは、それもそうだな」
サトルは黙って景色を見ていた。
暫くして、何事も無く無事にラベリーに着き、サトルは直ぐに冒険者ギルドに向かった。
受付の男性に声を掛け「ここの管轄のダンジョンに潜るので場所を教えてくれないか?」
「ええ?貴方、男は無理よやめたら・・・、えぇぇ!すごーぃわ貴方Sクラスなの?ありえない」
「余りでかい声を出さないでくれ、目だちたくない。場所を教えてくれないか?」
「あら、御免なさい!"霧かすむダンジョン"は西門を出て3キロ北に行ったら屋台等が有るから直ぐに分かるわ!はいカードを返すわね、頑張って!」と相変わらずのオネェ口調で教えてくれた。
サトルは教えて貰った西門を出ると【ブースト】を掛け1分程でダンジョン入口に来た。
兵士にカードを見せ入ろうとすると「男は無理だ!ええ?あっ、失礼しました。どうぞ」と驚いた顔でカードを返してくれた。
サトルが中に入って行く時後ろで兵士のやり取りが「貴女、なにやっているんだ!男を通してどうすんの?」
「いや、彼はSランクだ!」
そんな声が聞こえて来たが1階層はスライムが5匹、ゴブリンが8匹、居るがサトルは瞬殺して処理する。
2階層にはファングウルフが15匹、サトルを取り囲んだ!
サトルは『誅戮剣』の大剣を出して横に一閃すると、12匹が斬られ潰され死体になって転がると、残った3匹が慌てて逃げようとするが【アイスロック】で捕まえ【インビジブルハンド】で触ると一瞬で心臓麻痺で死んだ!
死に顔がやたらニヤけて幸せそうなのは気になったが・・・。
3階層ダンジョンの名前の由来なのか、霧が立ち込めて視界が悪い。
サトルは気配と殺気で魔物が4匹、それもフォレストボアだと分かった。
気配で来る!と分かり『鬼切丸』で2匹を瞬殺、【エアカッター】で2匹の首を落として回収した。
更に濃い霧の中からトロールが剣を構えて居るのを察知し、【インビジブルハンド】でデカパイを揉んでやるとこいつも昇天して死んだ!しかも失禁している。
汚いので【クリーン】魔法を掛けてで回収した。
4階層は海のステージだがここも深い霧に覆われている。
【サーチ】を掛けながら【飛翔】で2メートル海上を飛んでいると、クラーケンが1匹いる。
【ウォーターアロー】で仕留め【インビジブルハンド】で回収した。
5階層は死臭が凄い洞窟のステージで、ミイラ10体、スケルトン5体が向かって来た。
【ファイアボム】であっという間に灰にして浄化した。
易しいステージのせいか、お宝は無かった!
6階層、7階層、8階層と難なく討伐して、9階層の火山ステージにやって来た。
キマイラが火を吐いているが最大に解放している【インビジブルハンド】で触れた瞬間死んでしまった。
スキルレベルが上がり、気絶では収まらず、心臓麻痺を起こして瞬殺してしまう程強くなってしまっている。
サトルはこのままでは不味いと思い、この力の加減を自由に制御出来る様にしないと、触れた女性を皆殺してしまう事になると訓練する事にした。
スキル最小と中ぐらいの解放、最大解放は今までできたが、魔物と人間では手加減が違う。
人の場合は最小解放で気絶だが魔物はそれだと気持ちよがるだけで、2回ほど触ってやっと気絶する。
ダンジョン内では最大解放にして尚且つサトル自身に【ボディー・シールド】を掛けて進むことにした。
赤龍がいる。
【インビジブルハンド】に体内の魔力を全て丹田に集中させ体外に出さないで触る感覚でやってみる。
一瞬で倒れ気絶した様だが死んではいない。
ガタイがでかいせいかも知れないが普通に戻したら赤龍も死んだ。
10階層のラスボスの部屋に来た。
ヒュドラが9本の首を動かしてこちらを襲う気配だ。
【インビジブルハンド】で意識せずに触ると、胴体に触ったのだが9本の首も本体も死んでしまった。
そばには宝箱があり罠もないので開けると『地図帳』と鑑定に出た。『通常は自分がいる場所から半径50キロ四方の地図が現れ、縮尺、拡大も自由で都市名を念じるとその都市の50キロ四方の地図に変化する』と鑑定に出た。【次元ストレージ】に回収した。
サトルはダンジョンコアを持って1階層の入口に転移して、ギルドに【ブースト】を掛けて向かった!
素材置き場にカードを渡し討伐した魔物を置いて行く。素材置き場の女性達が驚いて居たがスルーして「食堂で待っているので納品書が出来たら持ってきてくれ」とチーフの女性に告げて食堂でランチを頼んだ。
サトルは誰かに触られても良い様に【ボディー・シールド】を身体に掛けて待った。
冒険者の女性が独り寄ってきて、「此処は荷物持ちは座れないぞ、主人の冒険者の傍に立っていろ」と言うが、サトルが胡散臭そうにカードを見せて「冒険者の男でも駄目なのか?」と言ってランチを食べ始めた。
女性は舌打ちして、カードの色を見て驚いてサトルから離れて行った。
暫くして、納品書が出来て、サトルは朝受けた男性受け付けの所にカードとダンジョンコアに地図を出すと驚いた顔で「踏破したのね?凄いわぁ、おめでとう」と言ってカウンターの奥に行き、精算金白金45枚、金貨87枚、銀貨96枚、銅貨95枚をカードに入金して、コアを2階層のギルドマスターに持って行った。
直ぐにギルドマスターが降りてきて、「君か、キタミのサトル君は?」
「はい、そうです」と一応丁寧に言葉を返した。
「我が国のSクラス全員を一瞬で倒した男性が3週間でSクラスになったと聞いたが、随分良い男前じゃないか?今後も宜しくね」と言って戻って行った。
周りに居た冒険者達が皆驚いてサトルを凝視していた。
サトルは【インビジブルハンド】のスキル調整をすべく簡単な小物の討伐依頼を掲示板に見に行った。
グリーンウルフの群れとホーンラビットの群れのクエストが残っていたのでそれを剥がして、受付に出した。
場所を聞いてグリーンウルフから討伐する事にした。
森にやって来て【サーチ】でいる位置を確認し、最初は意識せず普通に【インビジブルハンド】で3匹に触ると一瞬で死んだ。
次に魔力、気を手を意識して抑える感じでやってみる。
一瞬で倒れ気絶してしまうが死んではいない。
"なるほど、魔力と気を抑えれば気絶でおさまるのか"と気絶したグリーンウルフを普通に触り殺した。
スキルの最小、絞り、全開の感覚がわかってきた。
結局数回繰り返して魔力、気を抑えるコツをつかみ、グリーンウルフの35匹の群れを回収した。
次はホーンラビットの7匹いる草原に向かい、同様に4匹を瞬殺して、3匹を気絶後殺した。
ギルドの素材置き場に納品して、受け付けの男性に出し、精算金として、金貨6枚、銀貨30枚をカードに入金してもらった。
ギルドを出、宿を探すとなかなか小綺麗な宿が見えて、そこに入った。
猫族の男性が「いらっしゃい、お泊まり、お食事どちらかしら?」とこれ又獣人族もオネェ的だ!
「泊まりで1泊、一番いい部屋ってお風呂有りますか?」
「有るわよ、でも1泊銀貨2枚になるわ!よろしいかしら?」
「あぁ、構わない。その部屋を1泊頼みます」と言って銀貨2枚を出した。
「2階の210号室よ、はいこれが鍵。夕食は5時から10時、ラストオーダーは9時半、朝食も同じよ」と言って鍵をくれた。
サトルは部屋に入り、先ずはゆっくり風呂に浸かってのんびりとした。
着替えて『マジックアイテム製造キューブ』で魔力、気、殺気を自由に調整出来る腕輪を作った。
魔力を完全に抑える事は出来ないが、気絶する手前程度に抑える事が出来るリングを完成させて、自身の左腕にはめた。
『マジックアイテム・抑制リング』の完成だ。
これで普段意識しなくても大丈夫になった。
しかし乗り合い馬車は女性と話したり鬱陶しいので、街から街への移動は『具現の石』の水晶を使って馬を作り出し、騎乗して移動する事にした。
試しに『具現の石』にポニーの子供と念じると部屋のベッドの脇に可愛いポニーの子供が現れ、何故か白馬で鬣も着いている。
白馬は目立つので茶色と念じると直ぐに色が変わった。
戻れと念じると再び『具現の石』に戻った。
これで移動手段は解決したので階下に降りて夕食を頼んだ。
周りは流石に女性ばかりだが、冒険者は比較的少なく、商売人が大多数で、絡まれることも無く食事を済ませる事ができた。
部屋に戻り『地図帳』を拡げ明日向かう街を調べた。
ラベリーから西に50キロ行くとかなり大きな街が有るようだ。
名前がミモトと云う街で、拡大するとダンジョンが二箇所も有る。
楽しめそうな街だ。
ベッドに潜り明日の事を考えながら意識を手放した。
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