第12話 王都でのオークション
スザンヌは王都ハルモナのエミリアを訪ねてギルドの門を開けた。
受付の男性陣が緊張した面持ちでスザンヌを待ち受け、すぐにギルマス・エミリアの扉をノックする。
「受付のジムです。スザンヌ様がお越しになりました」
「通してちょうだい」
「久しぶりだな、エミリア」
「ご無沙汰しております、今日は王都にどのようなご用件で?」
「黒龍をオークションに出すのでサトルの代理出品者として彼と来たんだ」
「サトル君が又も黒龍を一人で討伐したんですか?」
「ああ、しかも切り傷一つ付けずにな!」
「どうやったんですか?」
「彼のスキルで魔石を抜き取ったそうだ」
「何ですか?そのスキルは?」
「何でも思念を強く魔石にぶつけて奪い取るスキルらしい」
「人にもそのスキルは有効なんですか?」
「ああ、嫌な奴だと心臓を手元に奪い取って握り潰して殺せるらしいよ!全く人外の男性が現れたものだ」
「でも、あちらは弱いのでは?」
スザンヌは少し赤くなりながら「いや、ビンビンらしいぞ!本人曰くだがな」
「100人の女性を一晩相手してもいいと豪語してたからね」
「この世界の男性では考えられないですね」
「でもスザンヌ先生、彼に触れたら意識が飛ばされるのでしたら女性を抱くのは無理ですよね?」
「そうなんだ、あいつの一番の悩みらしい」
「彼は今どこに?」
「宿で昼寝を貪っているよ」
「騎士団長のディアナも呼んで夕食をご一緒にいたしませんか?」
「私もそうしたいのだが、サトル君の夕食等も私が全て面倒見ることになっているのでそうもいかん」
「なら、彼もご一緒させたらいかがですか?」
「ただ、王都の食事をするところは格式を重んじるだろう?あいつは誰からも荷物持ちに思われて、昨日も食堂で座って食事していたら4人の冒険者に絡まれて4人を一瞬でのしてしまってね・・・」
「あはははは!すごい男が現れたものですね、ディアナなんかなぜ自分が負けたかわからんとぼやいていましたよ」
「だが、あいつは強い!サトルをマジでおこらしたらこの王国を一瞬で消し去られてしまうからね」
「そんなにすごいですか?」
「ああ、無詠唱で何もかも消してしまう魔法を彼は使える」
「益々ゆっくり会ってみたいですね!彼も呼んで4人で食事しましょう」
「5時半にボロニャー亭でどうですか?あそこならBクラス以下の冒険者は来ないと思うので、絡まれることもないでしょ」
「わかった!一応誘って見るわ」
「ところで今年のオークション会場はリリーフォンクネラ公爵様の王都の屋敷だそうだな、珍しいな」
「それこそ、サトル君が丸々1匹の黒龍を出品すると耳に入ったからじゃないですか?えらく、公爵様はサトル君にご執着のようですから」
「でも、彼を単なる荷物持ちの延長上で考えていたら痛い目に遭うぞ!あいつは我が国のダンジョンを一人で全て踏破する気でいるからな」
「ええ?まさか、いくら彼が剣が強いからといって・・・」
「彼の強いのは剣だけでは無い。体術も魔法もこの世界の常識を凌駕する力を持っているからな」
「えらい惚れ込みようですね_」
「いいいや、ただべらぼうに強いと言っているのだ」
「それじゃ5時半にボロニャー亭で会おう」とスザンヌはサトルがいる宿に急いだ。
スザンヌが部屋に入ると未だサトルは可愛い顔をして寝ていた。
スザンヌはシャワーを浴びて着替えると彼の横で彼女も仮眠をとった。
どのくらい寝ていたのだろうか?
スザンヌが目を覚ますとサトルはすでに起きていて、ベッドの端で座禅を組んで瞑想していた。
その姿を見るととても10代後半の青年には見えない、スザンヌより年上じゃ無いかと思うほどの落ち着きを払った顔で瞑想していた。
サトルも気配で瞑想を解いて、ベッドに座った。
「サトル、エミリアから夕食を君も入れてディアナ騎士団長と4人で食事をしようと接待されたぞ」
「また男は座ってはだめだなどと言われるから俺はいいよ」
「いや予約したところはBランクの冒険者は殆ど来ないところだから絡んでくるやつはいないので大丈夫だ」
「ほんとか?でもなぁ・・・」
「私は君が一人で食べにいって問題を起こさないか心配するより一緒に食事する方が心休まるのだ」
「わかったよ、俺って信用ないなぁ」
「そういうわけじゃない、この世の中が男性に対して見方がサトルとは違うのだ」
5時半近くになり、スザンヌはサトルを連れて、ボロニャー亭に向かった。
スザンヌの後について店に入ろうとしたら店員の男性から「すみません、男性の荷物持ちの方はこちらでお待ちいだたいておりますが」
「冒険者でも駄目なのか?とAランクの冒険者カードをを見せる」
慌てた店員が「失礼しました、この世界でAランクの男性が居ることを初めて知りました」
「そうかぁ?じゃ、よく覚えておいてくれ、いずれ俺がSSSクラスの冒険者になるからな、わははは」とサトルが言って店の中に入った。
すでにエミリアとディアナが席についていた。
「よぉ!久しぶりですねお二人さん」とサトルはわざと軽口を叩く。
「相変わらず元気そうだな」とディアナ騎士団長。
「サトル君、また一人で黒龍を倒したそうだね」とエミリア。
「ええ、今回はオークションに出すつもりで倒したので傷一つつけてませんよ」
「今まで4匹ほど倒して居るけど赤龍などは首を切って倒してますから」
「なに?4匹も倒して居るのかね?」Sランクが3人がかりで半日かかる相手だぞ?
「そうですか?俺は5分ほどで倒してますよ」
「スザンヌさんはエールでよろしいですか?」
「ああ、サトルは果実ジュースだな?」
「ああ、お子様だからな、お酒は飲めない」
「嘘言うな、この前ワインを美味しそうに飲んでいたじゃないか」
「エールが駄目なんだ」
エミリアがエール3つに果実ジュースを1つ頼んだ。
エールが来たが冷えてない。
「ちょっと待てよ」と言ってサトルが3杯のエールを【冷凍】魔法で冷やしてあげて渡した。
「乾杯!」 「おお、エールがこんなに美味かったかな?」
「冷やすとエールも少しは飲めるでしょ?」
「俺は苦手ですがね」とサトル。
食事が順番に出てくる。
流石に美味しい。
「エミリアさんが予約した店だけあって凄く美味しいですね」とサトル。
「へぇー、サトル君が褒めてくれるなんて珍しいな!」
「どうしてですか?俺は至って正直に反応する方ですよ」
暫く4人で談笑しながら食べて居ると、そこに貴族のおばさんらしき人が寄って来て、「スザンヌじゃないか、久しいのう。黒龍をオークションに出すそうだが、お主が仕留めたのかな?」
「いや、私じゃないが・・・」
「おや、何で荷物持ちがこんな3人のSランクの強者の中に座って居るのじゃ?」
「おばさん、俺がSSSランクだからだよ(笑)」とサトルが笑いながらいう。
「おほほほほ、荷物持ちがSSSランクとな?」
「妾の騎士団にもそのぐらいホラ吹きが居れば楽しいのう」
「なんなら、オタクの騎士団100人でも1000人でも俺が相手してやってもいいぞ!」
「荷物持ち、そこまでじゃ、妾をバカにするのもほどほどにしいや!」
周りの騎士団が殺意を放つがそれを跳ね返してサトルが強烈な殺意を騎士団に
放つと、全員が泡を吹いて失禁してしまった!
「侯爵様、この男は黒龍を一人で軽く殺すほどの男で1週間でAランクの冒険者になった男です。この世界の常識が通じないのであまり関わらない方がよろしいかと」
「何じゃと?1週間でAランク?」
「それが証拠に侯爵様の騎士団たちが睨まれただけで失禁して気絶してますよ」
侯爵と言われたおばさんは後ろを振り返ってびっくりして居る。
泡を吹いた騎士たちを蹴飛ばして起こし、店を出て行った。
「サトル、よく一瞬で消さなかったな!」
「俺だって常識は持って居るぞ!王様が軍隊を集めて討ちに来たら一瞬で消すがね」
「いくらお前が強くてもそれは言い過ぎだろう」とディアナ。
「何だ、ディアナは未だ俺の力を読めないのか?」
サトルはディアナの横にある椅子を一瞬で消して見せた。
「ディアナの片腕も一瞬で消して又再生してやろうか?」とサトル。
「サトル、あまりディアナを苛めんでくれ」
「ディアナ、サトルの力はこの国を一瞬で消し去ることができるほどの人外だ。
相手にするだけアホらしいから辞めとけ」
ディアナはサトルと対峙した時を思い出していた。
もし彼が消す気なら一瞬で消されていたのかもしれなかった。
「サトル君、君のその魔法はどう言う理論でできて居るんだ?」とエミリア。
「人間も魔物も、物質も全て原子というものからできて居るんだよ。その結合しているものを分解してやると、存在できなくなる。これ以外にどこか次元の違う世界に飛ばしてしまう魔法もあるけどね」
「この世界ではそんな魔法は存在してないぞ」とエミリア。
「この世界がおかしいのかもね」とサトルは笑いながら呟いた。
食事も終えて店を出たところで先ほど突っかかって来た侯爵の騎士団が剣を抜いてサトルに向かって来た。
スザンヌはやれやれといった顔でいる。
サトルは流石に我慢の緒が切れて、【イレージング】と20人を一度に消し去った。
それを見た侯爵はガクガク震え、「おおお覚えておけ」と腰を抜かして男性の荷物持ちに背負われて逃げていった。
「本当に20人を一度に消してしまったわね」とエミリア。
「スザンヌ、あいつは侯爵か?あの侯爵の城ごと彼女と騎士団を全部消していいな
らオークション終わったら俺一人で消してくるが・・・」
「後腐れない方がいいだろ?」
「いやいや、あの侯爵は王様のお気に入りだから辞めとけ」
「そうか、この国ごと消せば王様もいなくなっていいだろに」
「恐ろしいこと言わんでくれ」
「大丈夫だよ、スザンヌだけは他の国に連れていってあげるから」
「サトル君ずいぶん先生には優しいな!」
「だって、オークションに代理で出てくれてるし、唯一俺が負けたからね」
「先生がサトル君に勝ったのか?」
「ああ、俺の完敗だった」
「やはりスザンヌ先生の方が強いだろ?」
「ああ、そうだな」
「サトル、そろそろ宿に戻るぞ」
「それじゃ、二人とも明日オークション会場で会おう」
サトルとスザンヌは宿に戻りシャワーを浴びて横になった。
スザンヌがサトルを抱きしめる。
心地よい快感が全身を駆け巡るが気絶までには程遠い。
「スザンヌ、何でお前だけ大丈夫なんだ?」
「きっとサトルの運命の女性なんだろ(笑)」
「マジでそう思えてしょうがないぞ」
結局は最後に二人とも果ててしまうところまで進むのだった。
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