第6話 女王様に会う

サトルは俊速でBランクまで駆け上がり、王都までの指名護衛依頼を受ける事になった。他の護衛依頼のパーティーに実力の片鱗を見せつけてリーダーのキャシーからすっかり気に入られたサトルだった。そしてウォスローについたサトルはキャシー達の飲み会を断り早々に宿の自分の部屋で寝て翌日に備えた。



翌朝、裏庭で『誅戮剣』で素振りをして部屋に戻ると、扉をノックする音が聞こえ、キャシーが「ちょっと入って良いかい?」と聞いてきた。


サトルが「どうぞと」言うと、キャシーが真剣な顔で「サトル、私達のパーティーに入って貰えないか?」


「どうしたの?そんなに冷たいエールが忘れられない?(笑)」と笑いながら言うと「いや、サトルの実力を正しく評価した結果だ」


「ありがとう、でも俺はもう暫くフリーで、活動して更に出来たら初めてのSSSランクを目指したいから、ひとりでやっていくよ」


「お前、未だSランクにも行ってないのにか?」


「この国のSランクのレベルはもう分かったからな、誰もが到達し得ない高みを目指したい」


「そうか!サトルならやれそうだな!ところで、私が触った時のあれはスキルなのか?」


「俺にも分からない、ただ魔物でも俺が触ると、行ってしまって気絶する。それ以上触ると心臓麻痺で死ぬよ!」


「死んでも良い位気持ちが良いな、信じられなかったよ。お前に一度で惚れてしまったから参ったよ」


「こんな事は初めての経験だよ、私も男を知らないなんて野暮な事は言わない。この世界の男は色んな意味で弱く、あちらも全く役に立たない程弱いからな!」


「それじゃ俺だって同じじゃないか!俺がこれからという時には女性は気絶して何も出来ないのだからな」


「サトルもある意味可哀想だな」とキャシーが呟いた。


サトルがいきなりキャシーの胸を掴み下着の中の豊かな胸を直接触った!


「あぁ~、サトルー、イクー!」と言って気絶した。


サトルはぶ然として、ベッドで胸をはだけたキャシーを眺めるだけだった。


暫くして気がついたキャシーと階下の食堂に降りて、みんなと朝食を食べ最終工程の王都に行く準備をする。


王都ハルモナ迄は4時間程の工程で、途中で休憩してハルモナには昼少し前に着くために、早目に宿を出た。


何となくキャシーがよそよそしく、やたらサトルに優しく接する。


「キャシー、いつも通りで良いぞ、普通に皆と同じに接してくれ」


「だって、初めて身も心も捧げた男だ、サトルが初めてなんだ。行く事なんかない私が気絶する位良かったのは・・・」


暫くすると、上空が黒い影に覆われ、巨大なドラゴンが現れた。


「嘘だろう!何故?この辺りになんか出る訳が無いのに」と叫ぶキャシー。


「キャシー達は貴族様の馬車のそばに行け、早く!俺がシールドで貴族様と騎士団、お前達を守るから!」


サトルは全員をシールドで覆い、ドラゴンが火炎彷徨を吐く前に飛び上がって『鬼切丸』を一閃して首を切り落とし、胴体と一緒に次元ストレージに回収した。


キャシー達と騎士団は全員驚きの余り声さえ出てこない。


「サトル、助かった!アリガトウ」全員から感謝されたがサトルとしてはたかだか魔物1匹倒しただけだと思って居るので???といった感じだった!


「何だよみんな、たかが魔物を1匹倒した位で!」


「貴方ね、たかが魔物って、ドラゴンだぞ!Sランクの魔物だぞ?冒険者のSランクが3人掛かってやっと倒せるかどうかの魔物だぞ?私ら全滅を覚悟したのになんで冒険者4日目の新人のしかも男が!」とキャシーが興奮して言ってきた。


「だから、俺は強いって言ったじゃん!さぁ、先に進もうぜ」とサトルはみんなを促して王都を目指した。


その後は順調に進み、昼少し前に王都ハルモナに着いた。


貴族様は王宮に行くと云うので、ここで我々は宿に行こうとするとサトルだけ呼び止められて王宮について行く羽目になった。


サトルは「アイツら馬車や馬に乗って俺だけ歩きかよ」とぼやくが身体強化を掛けてついて行く。


城門の兵士に騎士団が何やら言って、慌てた様子で門を開錠する兵士達。


侍従長らしき人間が来て、初めて馬車から降りて来たリリー公爵と二人の娘達。


3人が皆、サトルの方を振り返り笑っている。


女王様がいる部屋に案内され、作法を知らないサトルは、端の椅子に座らされていた。


「リリー、久しいのお。元気だったか?何やらきょうは荷物持ちの男まで連れて参ったか?」とイザベラ女王がリリー公爵に言った。



「女王様、お元気そうで何よりです。私の後ろに控えています男は荷物持ちではなく、冒険者で3日でBランクになった冒険者です。しかも、先程ひとりでドラゴンを瞬殺して退治してくれた逸材です」


「ほほう、男がのう?騎士団長といい勝負かな?」


「いや、スザンヌさえ瞬殺されたので全く叶わないかと!」


「なななんと!スザンヌが負けた?有り得ん」


「そこの男、名はなんと言う?」


「私は冒険者のサトルと申します」


「お主、妾の騎士団長に勝てると思うかや?」


「はい、やる前から分かったこと、ギルドマスターのエミリアさんと、ディアナ騎士団長さん、スザンヌさん3人と同時に対戦しても差程掛からず勝てますよ」


それを聞いたディアナは真っ赤な顔で、「それならいますぐこの場で勝負してやる、私が荷物持ちの男に負ける訳がなかろう」


「良いですよ、競技場で模擬戦をしますか?真剣でも構わないですよ」


「良し、その減らず口が二度と叩けない様に首を切り落としてやる。真剣で相手してやる!」


皆が王宮の競技場に行き、女王様とリリー公爵様もニコニコ観客席についた。


公爵様の騎士団長が審判をすると言って間に立った。


「始め!」の合図でディアナが身体強化魔法を掛けて一瞬で間合いを詰め、剣を袈裟懸けに振り下ろす。


サトルはギリギリ迄『鬼切丸』を抜かずディアナが勝ったと思った瞬間、サトルが抜刀して尚且つ刃を峰に返して、胴を抜いてディアナは気絶して倒れた。


見ている観客はディアナが切られて死んだと思ったが、サトルが審判に「峰打ちで気絶しているだけだ」と言って「かつをいれてやれば気が付くから」と言って下がった。


「リリー公爵様、私の出番は終わりましたので、みんなの居る宿に戻ります」と言って一瞬で転移して消えた。


「リリー公爵、サトルが一瞬で消えてしもうたぞ!どういうことだ?」


「はい、彼は古代文明時代の【転移魔法】が使えるようでございます」


「なに!あれはお伽話の世界の魔法であろう?それを彼奴は・・・」


一方、気がついたディアナは何が起こったのかも解らなかった!切ったと思った瞬間気絶していたのだから・・・。


ディアナは王都のギルドマスターのエミリアの所に行き、キタミのスザンヌに『遠距離通話器』で話掛けた。


「ディアナ、久しいな、どうした?」


「今リリー公爵様が来て、サトルとかいう冒険者がドラゴンをひとりで倒し、私より強いと抜かすので戦ったのですが、一瞬で私が負けてしまいました」


「アイツは男ですよね?アイツはスザンヌ先生と私とエミリアが3人で来ても一瞬で勝てると抜かしてました」


「そうね、恐らく彼の言うことが合っているわ!しかし、ドラゴンが出て来るとはね!見たかったな、彼がひとりでドラゴンを倒すのを!」


「そんな事よりアイツは何者ですか?」


「彼は3日前に冒険者登録した新人さんよ、でも魔法属性は全てあり、魔力は無限、剣術と体術はレベル測定不能の怪物だわ」


「私が遊ばれて負けたもの、しかも、ここが甘い、あそこがだめだと指摘受けながら余裕で負けたわ」


「そんなぁ!先生がそれでしたら、この国どころか、この世界で一番強いじゃないですか!」


「そうね、彼はSSSランクをも、超えた強さよ!しかも回復魔法は教皇様のハイヒールよりも更に上のエクストラハイヒールさえ使えるわ」


「それじゃ神様ですよ!」


「それに近いわね」とスザンヌ。


「キタミに戻ったら色々聞いて確認して分かったら貴女にも教えてあげるわ、それと忠告として決して彼に触ったら駄目よ、一瞬で気絶させられるわよ、絶対触らない様にね!」そう言うと切れた。


「ディアナ、貴女がそれ程迄になる男がいま王都に来ているの?」と王都のギルドマスターのエミリアが興味ぶかそうに聞いた。


「あぁ、3日でBランクになったそうだ。スザンヌ先生が言うには恐らくSSSクラスの上だとさ」


「私も会って見たいな?そんなやつに」


「そのうち嫌でも会うんじゃないか?邪魔したな、女王様が怒っているかもしれん、王宮に帰るわ!」と言って戻って行った。


暫くすると受付のボビーがノックして、冒険者を名乗る男がドラゴンを倒したと、来たのですが、ひとりで倒したと言って聞かないのだとエミリアに言ってきた。


"は~ん、早速お出ましか、会ってやろうじゃないか"


「ボビー、下に居るのか?」


「ええ、いまエミリアさんに会って貰おうと待たしているわ」


エミリアが降りて行くとそこには、はっとする程の良い男が不機嫌な顔して立っていた。


「君かな?ひとりでドラゴンを倒したと騒いで居るのは」


「俺は別に騒いで居ない。騒いで居るのは、お宅の受け付けの連中だ」


「駄目なら引き揚げるから、素材置き場から返してもらうぞ!こちらはリリー公爵様や騎士団、冒険者の仲間が見ていたので嘘でも何でもない。たかが魔物1匹倒しただけで男が倒せるはずが無いといちゃもん付ける受け付けでは王都のギルドも程度が知れるな?」


「それじゃ俺はドラゴンを返して貰って帰るぞ」とサトルはエミリアを無視してボビーに言って素材置き場に行こうとした。


「ボビー、納品書を処理してあげなさい」


「でもエミリアさん、この子がドラゴンを倒せる訳が無いわよ」


「ボビー、最近目が曇ったようだな!サトル君と言ったか?すまなかった。君が倒したのは騎士団長のディアナから聞いている」


「ずいぶん情報が早いんだな」


「いいのね?ギルマス、それじゃオーク10匹と黒龍1匹で白金35枚と金貨50枚に銀貨50枚、カードに入金ね!えっ?貴方、3日間でこんなに討伐したの?」ボビーは驚いていた。


サトルは「貴女がSランクのエミリアさんか、以後宜しく、Bランクのサトルです」と言って宿に帰って行った。


「ボビー、以後注意しなさい、男でも彼のようにSランクを瞬殺してしまう人も居るということをね」


エミリアは自分が想像していた感じとだいぶ違った男性に苦笑いしながら、部屋にもどった。


彼女はもっと筋肉隆々のごつい男性かと想像していたのだが目の前にいたのは美形の優男で驚いた。


しかし、彼の立ち振る舞いには全く隙がなく、魔力も想像を絶する魔力で全ての属性持ちだと解った。


恐らく自分でも叶わないだろうと直感した。


あれが男性?ボビーが信じられないと云うのもよく解った。

彼はこの世界の常識に当てはまらない存在だった!


一方サトルは宿に戻ってシャワーを浴び、着替えて定食屋に行って遅い昼飯を食べた。


何だか公爵にはめられた感じがして気分が悪いが、この国の3人のSランクに会えたので良しとしようと自分自身を納得させていた。














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きょうはあと第7話も本日10時に投稿します。

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