第3話 サトルの初クエスト達成

フルイチ・サトル22歳は車に轢かれて短い生涯を閉じたが、女神に依って女性が9割、男性が1割いる異世界に転生させられた。


前世で”スケコマシ”のサトルの異名が付いている程、女を口説き落とすのがうまかったサトルにとっては、9割が女性であるこの異世界は天国そのものだ。


まだ、サトルはこの異世界の男女の人口比が1:9とは知らない。

ただ、会う男が(まだ三人しか会っていないが!)三人ともオネェ系で気が弱そうでサトルはなんとなく違和感を覚えていた。


朝早く起きて、宿の裏庭でアダマンタイト製のバスタードソード『誅戮剣(チユウリクケン)』で素振り5000回をする。

この『誅戮剣』は重さ50キロだが、敵と対峙した時にはその重さは持ち主に感じさせない程軽く、相手には100キロの衝撃を加えて砕き切る魔剣だった。


前世から行なっている日課の素振りを終えて、部屋に戻り、ベッドの上に坐禅を組み瞑想して、魔素の流れを確認しながら魔力を高めて行く”魔力が95000に上がりました”と声が聞こえたがこの世界の平均が30程度なのでサトルの魔力量は桁違いのようだ。



サトルは瞑想を解いて、階下におりていき食堂で朝食を食べ、すぐにギルドに向かった。



Fランクのサトルには掲示板を見ても、当然未だ討伐系のクエストは受けられない。


見たら薬草採集が出ている。


それぞれ2種類の薬草採集が有るのでその両方のクエストを剥がしてサトルは昨日の冒険者カードを作ってくれた受付の男性職員のケーシーに二つの薬草採集のクエストを出した。


「あら、サトルちゃん、薬草二つのクエストも大丈夫なの?無理しないでネ!」


"相変わらずオネェー対応だ!"


「場所を教えてください」


「ヨモギカズラは東門を出て1キロ程先の草原よ、もうひとつのエノキ草はその先にある森の入口付近に有るわ!でも、エノキ草の生えている付近にはゴブリンがいるからくれぐれも注意してネ!ゴブリンが見えたら直ぐに逃げるのよ」


「分かりました、それじゃ行ってきまーす」


サトルは【無属性魔法】の【身体強化(ブースト)】が出来るのか試してみる。


東門を出るとあっという間にヨモギカズラの群生地に着いた。


頭の中に"無属性魔法のレベルが1000000000に上がりました"という声が響いた。


恐らく次元ストレージの刀を鑑定(アプレイザル)した2回が入って居るため無属性レベルは、身体強化を入れると1000×1000×1000になったようだ。


更に”【身体強化(ブースト)】Lv1からLv1000に上がりました”と続けて声が聞こえて来た。


サトルは【サーチ・ヨモギカズラ】と念じると、目の前にステータス画面の様にヨモギカズラの有る場所が緑色に表示された。


再び頭に声が響き、”無属性魔法レベルが限界値に達しました、以後アナウンスはされません。限界値を突破しました。これ以降は測定不能になります”


”【探索(サーチ)】がLv1000000になりました。尚無属性魔法レベルが限界値超えをしたので全ての無属性魔法のスキルがLv1000000より開始されます”と同じく頭の中に声が響いた。



サトルは10束ずつ束にして、どんどん刈っていく。

【次元ストレージ】に1000束入れて、次のエノキ草の群生地に【身体強化(ブースト)】を掛けてあっという間に目的地に着いた。


無属性魔法が限界値を突破したお陰で【身体強化(ブースト)】も限界値を超え【縮地】、【転移(テレポート)】、【鑑定(アプレイザル)】、【亜空間操作(サブスペース・オペレーション)】などの無属性魔法レベルが一気にLv1000000より開始となった。


エノキ草を【探索(サーチ)】に掛けると、矢張り緑の点があちらこちらに点滅して表示された。


似ている雑草が有るので注意してと言われていたので、迷ったら【鑑定(アプレイザル)】をして確認しながら10束ずつ束ねて、1000束【次元ストレージ】に収納した。


”索敵(サーチ)、鑑定(アプレイザル)は共に測定不能になりました。これによりサーチの範囲は無限になり、鑑定は隠蔽していても全て正確に鑑定できるようになりました”と脳内に声が響いた。


ギルドに戻ろうとしたら何やら『殺気』を感じて、『鬼切丸』を抜いて構えると、背後からゴブリンが襲って来た。


サトルは現世では古市念流免許皆伝(フルイチネンリュウメンキョカイデン)の猛者だが、流石に実際に生き物を殺した経験は無く、『鬼切丸』を持つ手が少し震えるが、ゴブリンがメイスを持ってサトルに襲いかかって来た。


サトルの身体が自然に動き、それを躱す。


幼い頃から鍛えていた身体は嘘をつかない。


やらなければ自分が殺されると、ここでサトルは初めて相手を殺すと言う決意で『鬼切丸』を構えた。


その瞬間、『鬼切丸』はサトルの手に馴染み、前世の隙のない古市念流壱の太刀の構えに入った。


襲って来たゴブリンを軽く躱して切り捨て、次から次へと切り捨てて、気が付いたらゴブリンの死体の山が出来ていた。


全て血止めをして【次元ストレージ】に回収して【身体強化(ブースト)】を掛けて街に戻ろうと思った瞬間に【転移(テレポート)】で街の門の前にいた。


”あれ?【身体強化】で走るつもりが、街の門を思った瞬間【転移】してしまったぞ”


サトルは無属性魔法が限界値を越え、測定不能になったことにより、全ての無属性魔法がレベル限界値を越え近くまで来ていることに未だその時は自分自身知らなかった。


ギルドはまだ昼前で受付も空いていた。


「ケーシーさん、薬草2点の採取のクエスト完了しました。途中でゴブリンに襲われたので討伐したのも買取してくれますか?」


「大丈夫よ、それじゃヨモギカズラとエノキ草を出して・・・」


「ちちょっと待ってちょうだい!あなた何束出す積り?」


「両方とも1000束ずつ取って来たけど」


「そんな量をここに出されたら困るわ、あたしについて来て、裏の素材置場の方に行くわよ」


サトルはケーシーについて行き素材置場に行った。


「チーフ、昨日冒険者になった新人のサトルちゃんです、サトルちゃんここのチーフのローズマリーさんよ、挨拶して!」


「昨日冒険者になったばかりのサトルです、今後ともお世話になりますので、宜しくお願いします」


「おぅ、私はここのチーフのローズマリーだ。宜しくな!」


「それでケーシー、薬草ならカウンターで受け取れるだろ?何でわざわざこちらに持って来るんだ」


「いえ、その数が半端じゃ無くて、エノキ草が1000束、ヨモギカズラが1000束なんです」


「何だと?10束じゃ無くて1000束?雑草が一緒に紛れてないだろうな!おい、ちょっと見てみろ」とローズマリーが部下にサトルが置いた1000束ずつ2000束を素早くチェックし始めた。


「ローズマリーさん、ゴブリンに襲われたのでついでに狩って来たので、ここに出して良いですか?」


「2、3匹か、構わんよ」


サトルは150匹のゴブリンの山を出した。


「なななんなんだ!この数は?サトルと言ったか、ゴブリンなら今後は耳が討伐部位だから本体迄持ってこなくていいぞ!それにしても、お前新人だよな、しかも男だろ?」


「チェックに少し時間が掛かるからギルドの食堂にでもいて、待っていてくれ」とローズマリーがサトルに言って、彼女も薬草チェックに加わった。


サトルは言われた通りに食堂で待っていると、午前中でいったんクエストを切り上げた冒険者達がゾロゾロ戻って来た。


見ると女性のパーティーばかりだ。

中に男性が一人居るが荷物持ちのように顎で女性に使われている。


暫くするとやっと納品書が出来て、ケーシーに出した。


「サトルちゃん凄いわ!全部最上級の薬草だったそうよ、それでローズマリーさんが銀貨5枚上乗せしてくれたわ。サトルちゃん規定のクエストを達成したので一気にDクラスになったわ!精算金はヨモギカズラが銀貨10枚、エノキ草が銀貨20枚、ゴブリンが銀貨30枚それとローズマリーさんのサービスで銀貨5枚だから全部で銀貨65枚よ、新しいカードに入金しとくわね」


サトルはアイアンカードからブロンズカードになり、Dランク冒険者カードに銀貨65枚が入金されていた。


ギルドを出て近くの定食屋に入り昼飯を頼んだ。


「いらっしゃい、定食でいいかい?」と威勢のよい女の子が出てきて注文を聞いてきた。


「あぁ、定食を頼みます」


「見ない顔だね、新人さんかい?」


「あぁ、昨日冒険者になったサトルだ、宜しくね」


「そうか、男が珍しいな、しっかり荷物持ち頑張れよ」と言って厨房の方に行ってしまった。


"??、何だあいつ、荷物持ち?何言ってるんだ、全く"


定食が出てきてオークの煮込み定食で美味かった!


サトルは宿に戻ったら裏庭で魔法の訓練でもしようと宿の方に向かった。


裏庭に出て、【無属性魔法】の魔法を順番に試してみる。

すでに、全ての無属性のスキルLvは1000000を超えているのであと一度発動させれば測定不能の限界値越えに全てがなる。


その結果、最初の【探索(サーチ)】の広さが自由になり国全体をもサーチ可能になった。


夕方まで色々やって全ての無属性魔法のスキルを限界値越えにした。


"おぉ、これで無属性魔法をマスターしたな、夕方後【聖魔法】をマスターしよう"とひとり意気込んでいた。


シャワーを浴びて、着替えて食堂に降りていき、隅のテーブルでさっさと食べて2階の部屋に戻った。


先ずは自分に【ヒール】を掛けてみる。

手から金色の光が出て身体を包み込むと、今迄の疲れや筋肉痛が取れて活力が出てきた。


次に小指に『鬼切丸』で軽く切り傷を入れ【ヒール】と念じると、切り傷は綺麗に元に戻って痛くもなくなった。


自虐的だが何度か切っては治しを続けていると"回復魔法が限界値を突破しました。測定不能になり、EXハイヒールが可能になりました"と声が響いた。


"これって、死んだ人間も30分以内なら生き返らせる力だな、欠損部位も再生できる様になったな"とサトルは喜んだ。


あとは聖魔法の中でも、【浄化】が出来ればアンデット系の魔物が出てきても大丈夫なんだがと考えるサトルだった。


次に【闇魔法】の練習をして見る。【ダークハンド】、【ダークウォール】、【ダークジェイル】、【ダークロープ】、【ダークカッター】、【コキュートス】等色々やってみて発動出来、!脳の中に声が響いた。"闇魔法が限界値を突破しました。測定不能になりました"


"これで無属性魔法の殆どを最高レベル迄上げられたな、後はスキルの確認をしてみるか?"と呟くサトル。


【転移】を念じて部屋の外の廊下を思ったら、一瞬で廊下にいた。次に裏庭を思ったら、裏庭に、ギルドの裏の素材置場の前を思ったら、素材置場に一瞬で移動していた。


すでに無属性魔法が測定不能のサトルは無詠唱で全ての無属性魔法を最高レベルで発動できるようになっていた。


"それなら【マッピング】との併用で行ったことが無い場所にも行けるかも知れない"とサトルは思い、【マッピング】で王都の城門横と表示して、【転移】王都の城門横と念じると一瞬で知らない、高い城壁のそばに立っていた。


近くに門を守っている兵士がいるので「ここは王都の城門ですか?」と聞くと女兵士がそうだと応えてサトルはひとり感激してしまった。


再び【転移】で宿の自分の部屋に戻って何か変だと気が付いた。


王都の城門の兵士も女性しか居なかったな?このキタミの街の門の兵士も女性しか居なかった、何故だろう?と不思議に思いながらも【転移】を覚えた喜びで疑問も何処かに消えてしまった。


今度は身を護る【シールド】だ!自分の周りを包み込むように感じて【シールド】と念じて椅子を持ち上げ、自分を叩いて見る。1センチ手前辺りで椅子が跳ね返されて自分には当たらない。


次に椅子に【シールド】を掛けて『鬼切丸』で軽く切ろうとしたがシールドに跳ね返されてしまった。


【シールド】を解除して次に【結界】をサトルの周りに掛けた。机に向かってぶつかっても痛くも無い。手前で弾かれている。


【転移】も【シールド】も【結界】も全ての魔法が限界値越えをしていた。


"おお、シールドも結界もマスターできたな"とサトルは感激して今日の室内での魔法の訓練を切り上げた。


ステータスが半端無いので鑑定されるとヤバいと思い、無限大の魔力等を全てこの世界の平均値に直して、スキルも剣と体術だけ残して後は全て【隠蔽】して見えなくした。


未だ時間があるので裏庭に行き、火魔法の訓練を始めた。


【ファイアボール】、【ファイアスプラッシュ】、【ファイアアロー】・・・火系

魔法の【インフェルノ】以外は全て何度かやって見て”全て測定不能、限界値超えをしました”と脳内に声が響いた。


次は水系の魔法だ!

【ウォーターボール】、【ウォータースプラッシュ】、【ウォーターボム】、【バブルクラッシュ】等を数度繰り返し、これも限界値超えを果たした。


同様に土魔法、風魔法を行い、全ての魔法レベルが限界値を超えた。


やはり1000倍スキルは最強だ!


サトルはさすがに少し疲れたので【ヒール】を掛けてベッドにダイブして意識を投げ出した。


真夜中嫌な気配を感じ目を覚ましたが、部屋に【シールド】を掛けて寝ていたので強盗も入って来れない。3人程の女性の声が聞こえてくる。


「本当にそんなに気持ち良いのか?私もそんなになってみたいわ!」などと声が聞こえるが、結局ドアを開けられず帰って行った。






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次回投稿は明後日になります。

第4話、5話を投稿するよていです。




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