第5話


俺は思わず溜め息がでた。


三人姉妹にハートを盗まれてしまったようだ。

三人とも顔がよく似ている。


そしてその顔の二つに見覚えがあった。


現役女子高生声優 稲生みおりと、俺のクラスメイトでいつも休み時間は一人で音楽を聴いている女子 成瀬美来がそこに居た。


……え?なんで 今を時めく声優とウチのクラスメイトがいるの?


 俺の脳内は混乱してしまい、絶対選択肢を求めてしまう程に、処理の限界を迎えていた。


「あ゛、何でマコトがここに居るの? 私達今からお母さんの再婚相手の男の子に会うんだけど……」


成瀬美来が俺に気が付いて、彼女の事情を説明して来た。


うん。これ完全にコイツじゃん。


九分九厘コイツじゃん。


「何々ミク知り合い?」


稲生みおりが質問した。スピーカー越しで聞くのと変わらない美しい声だ。


「う、うんクラスメイト」


なんで否定したいみたいな口調なのかな? そして目を泳がすな! めっちゃクロールで水しぶきがバシャバシャしてるから、バレバレだから! せめて平泳ぎにしろよ。


「もしかしてこの子が、お母さんの再婚相手の男の子だったりして……」


続きのセリフを言わせる事無く、強い口調でミクは否定の言葉を口にした。


「冗談でもやめてよ! こんな変人と義理とは言え兄弟だなんて絶対無理……」


――――と、随分と手酷い言動で俺の存在を否定された。


「へ、変人? お姉さんにはそうは見えないな……クラスのムードメイカーとかそう言う雰囲気を作る子って感じ」


「姉さん。ミクねぇの知り合いなんてどうでもいいから、早くお母さんのところへ行きましょうよ」


そう言って、稲生みおり(と思われる女性)の服の袖を引っ張ったのは、今まで一言も発していなかった、目元が若干他2人よりもきつめな少女だった。


「そうだね……ただでさえ私の仕事の関係で、遅れちゃって迷惑をかけてるんだし……早く行こっか……それじゃぁミクその子の相手は任せたよ! 五分ぐらいで戻って来てね」


とよく通る美声で言うと一番下の妹を連れこの場を後にした。


………


……



空気が重い。普段改まって話す仲でもないので、こうやって何も話題が無いと話し辛い。


「で、なんであんたはこんなところに居るのよ?」


先に静寂に耐えきれなくなったのは、ミクの方だった。


「父親に連れてこられたんだよ……再婚するから、その相手家族と顔合わせだって……まさかその相手に三人の娘がいるとは、今日教えられて初めて知ったよ……」


お前らの母親なのか? ウチの父親の再婚相手はお前の母親なのか? と直接的に言わずに確認する……


「あら奇遇ね。この少子化の時代に子供が三人もいる独身の女性って、案外世間には数多く居るのね……」


――――と頑なに現実を直視しようとせず。

俺と義理とは言え兄弟になる事に、心底嫌悪感を持っているようだ。


「そんな偶然、何万分の一の確率だよ!

 子供が三人 全員女性で、そこそこお高い高級レストランで今日会う確率……」


正確なデータがないので何とも言えないが、間違いなく天文学的な確立に近い事だけは分かる。


「えぇ。あなたと比較して数学がニガテな私でも、マコトが私達の母親の再婚相手の息子でないと言い切る事が、苦しい確率であると直感的に理解しています。なので一つ提案があります」


――――と彼女は何か決心を決めたような表情を浮かべてこう言った。




============


【あとがき】


 初めましての方も、前作から来ていただいた方も、先ずは読んでいただきありがとうございます。思いつきで書いた作品なので面白ければ応援してやってください。


 コンセプトはギャグ(パロディ)×ラブコメです。


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12月に新作を上げますのでそちらの方もお楽しみに……


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