第3話
『え゛?』
那月は、年頃の女子とは思えない汚い濁音交じりの声が、スマホのスピーカーから俺の鼓膜を響かせた。
どうやら本気で驚いているようだ。
『俺も再婚の話と一緒にされて心底驚いた。
どうやら俺には、金持ちの祖父がいたらしくて……
父さんが実家を捨てて、俺の母さんと駆け落ち同然で結婚して、子供をこさえてそこからさらに再婚をしようとしている父さんに、俺に贈り物をしたいと言ったみたいなんだ』
『それが……婚約者と……随分と古風な方と言うかお家なんですね? 因みにお父様の旧姓を聞いてもいいですか?』
『天宮って言うんだけど……』
『あ、天宮ッ!!』
那月がスマホのマイクに向かって、鼓膜が避けそうな音量で叫んだ。
耳がキンキンして、思わず漫画やアニメで見る様に受話器か全力で耳を離した。
『――――あの世界的大企業の天宮ですか?』
どうやら耳を離している間に、説明は終わっていたようだ。
『そう。その天宮の会長だったんだよ』
『せ、せんぱい』
『なんだよ?』
『せんぱいって、坊ちゃんだったんですね』
夏目漱石じゃねぇよ! と心の中の角野〇造もとい、ハリ〇ンボン春奈がツッコミを入れた。断じて俺は、江戸っ子気質で血気盛んで無鉄砲な男ではない。
『別に裕福な暮らしはしてないよ知ってるだろ? 俺の家父さん会社がデカくなる前に建てたから、土地付き建売りの量産型鉄筋コンクリートの建売住宅で、一階は駐車場が殆どの田舎じゃよくあるタイプだって』
『いや。まぁそうですけど……せんぱいって良くも悪くも周りとズレてるので、そう言うところに原因があるのかなと……』
張っ倒してやろうかこのアマ! と心の中で思ったが言動に表さないだけの理性は残っている。
仮にも俺は先輩だ。そう思っていても本人に言うのは、失礼すぎるだろ。いや。まぁ陰で言えばいいのかと言えばそれは違うが……
『それで婚約者さんのお顔は見たんですか?』
『見てないし興味ない……と言えばウソになるけど俺には、心に決めた
『それって……』
後輩女子の声は、呆れに近い何かがあった。
俺は目がグルグルとした円で塗られた。
『当然、女子学生声優。稲生みおりだッ!!』
稲生みおり。声優でありながらアイドル顔負けの愛嬌のあるルックスに、新人声優の中でも抜群の演技力に歌唱力を誇り。デビューは長年続くロボット×アイドルの長寿アニメのヒロインを決める。新人声優オーディションであり、デビューから2年程度だが、覇権アニメにもメインサブ含めて満遍なく出ている。今最も旬なアイドル声優だ。
『せんぱい。キモオタが出て来てるんで自嘲してください』
――――と窘められる。
『まぁ大方そこまで気が回らなかったと言った所ですか……』
ちょっと何このこ俺の心が読めるのエスパーなの? もしかしてそう言う
『よくわかってますね』
『もう2年の付き合いですよ? 先輩の思考程度完璧に予想できます。……と言うか勉強はソコソコできる癖になんで普段はIQ3ぐらいしかないんですか……』
『IQ3って……酷くない? 幾ら俺の言動がアレでも恋愛頭脳戦してる漫画の書記見たいに、ウルシゴキブリ素手で掴んで「森へお帰り」ってやらないし、ラブ探偵〇カもやってない!』
俺は強い言葉で否定した。
『はぁ……逆に考えてみてください。それ以外の事はやっていると……』
『な、んだと……確かに言われてみれば中一で、サマウォ見て数学ガチって高校範囲全て終わらせたし……中学二年の初夏。時を駆けたくて屋上からダイブして両足骨折……あれ俺って冷静になって考えてみるとヤバイ奴?』
『せんぱいがヤバくなければ他に誰がヤバいって言うんですか? 知ってます? せんぱいのあだ名。スーパーマサラ人。サイヤ人。戦中の日本兵。ドン・キホーテ、フィクションで起こる出来事の数割を実現可能にする男。中部のやべー奴。ウォーキングディザスター、不可能を可能にする男、漫画世界の住人。名探偵症候群とか他にもまぁ色々ですね……』
那月はこれでけ仇名を列挙したものの。直接的な悪口や好意的な仇名はあえて排除していた。
那月が入学して二年と少しマコトに救われて以来、マコトが起こした問題の後始末を全て行っているのは何を隠そう那月自身なのだ。
そして先に高校生になるのだから……「お願いだから私が入学するまでは自嘲してください。それと私もそろそろ対処できません」との願いを込めて、熱しやすく冷めやすく直ぐに調子に乗るマコトの為を思って少し否定的な仇名を教えた。
なんだろう。ドン・キホーテと戦中の日本兵に至ってはただの精神異常者って言われてる気分……
『グレートですよコイツは……』
『サザエさん見てぇな髪型の不良少年になっても許されませんからね? 先輩の善行と周りに掛ける迷惑は、等価交換の原則からはずれてるんですから。黄金の精神では済まされませんからね?』
――――と、強く念押しされた。
『で、私相手にスパーリングして心は軽くなりましたか?』
『こっちもせんぱいと一緒で、テスト勉強してるんですから邪魔しないでくださいね。それでは失礼します』
そう言って後輩は電話を切った。
「流石。中部のママと渾名を持つ女だ包容力が違う。きっと彼女の半分は優しさで出来ているんだろうな」
俺はそんなくだらない事を言うと、ベッドに入って眠りについた。
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【あとがき】
初めましての方も、前作から来ていただいた方も、先ずは読んでいただきありがとうございます。思いつきで書いた作品なので面白ければ応援してやってください。
コンセプトはギャグ(パロディ)×ラブコメです。
応援いただけるぜひ方は【作品フォロー】と【作者フォロー】の方をよろしくお願いします! 更新された時に通知が行くようになります。
まだユーザー登録してないよと言う方はぜひこの機会に登録をしてみてはいかがでしょうか?
12月に新作を上げますのでそちらの方もお楽しみに……
作品フォローと★星を入れていただけますと嬉しいです!
つまらなけば星一つ★、面白ければ星三つ★★★
読者の皆様が正直に、思った評価で結構です!
作者のモチベーションが上がって最高の応援となります!
そうぞ、よしくお願い致します。m(__)m
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