第8話 準備
さて、兵士の演説の後、『勇者選抜試験』について詳しい情報が公開されたんだった。もう一回情報を整理するか。
まず、開催日時。どうやら試験の告知は南の大陸のあちこちで行なっているらしく、参加者の条件をなるべく公平にするために開催まである程度の猶予があるようだ。そのため、開催日時はおよそ1ヶ月後。朝早くから行われるらしい。
そして、開催場所。これは『グランドフォレスト』で行われる。『グランドフォレスト』はおそらく数ある南の大陸の森の中で、最も有名な場所だろう。有名な理由はその規格外なスケールにある。一般的な森とは異なり、自生している木々や草がとてつもなく大きい。そしてそれらが所狭しと大量に生えているらしい。さらに『グランドフォレスト』の広さもとんでもなく広い。南の大陸最大の都市『サウスキャピタル』が何個も入ると言われている。おそらく、試験用の場所はある程度の広さで制限しているだろうが、それでも広い場所が用いられるということが考えられる。
『勇者選抜試験』に関して明らかにされているのは、おおよそこの程度だ。大事な情報であるはずの試験の内容が今伝えられていないと言うことは、試験直前に発表されると言うことだろう。おそらく、『勇者選抜試験』があると言うことを各地で順番に言い回っているために発生する準備期間の格差をなくすための処置だろう。
だったら今の自分できることは、試験の内容を推測してそれにあった準備を進めていくことだ。だが、予想を外す可能性も十分にあり得るから、ある程度ざっくりとした予想にとどめておき、どんな試験内容でも対応できるような柔軟な準備を進めておいた方がいいだろう。
それではまず、試験内容の予想を立てよう。先の試験の公布の仕方でも得られるヒントはあるはずだ。
「そういえば、なんで兵士たちから『勇者』を選ばないんだろう?」
そうだ。今回の試験は兵士以外の人たちも対象にしている。だからこそ、全くの一般人である俺にも、試験を受ける権利が与えられた。普通に考えれば、『北の悪魔』対策のための役職である『勇者』はその役割柄、戦闘に向いていた方がいいはずである。そうだったら、いくら南の大陸が平和な状況とはいえ一般人よりも戦闘経験があるであろう兵士や、モンスターとの戦いを毎日繰り広げている狩人たちに対象を絞ればいいはずである。というか、対『北の悪魔』といえば、それに特化したエキスパートである『守護者』達がいる。なぜ彼らから直接『勇者』を選出しないのだろうか?
ーー戦闘力以外に、何か求めているものがある?
俺はその考えをもとに、『勇者選抜試験』への準備に着手していくのだった。
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