第13話 発表会
幕が上がる。一世一代の演技の見せ所だ。
僕はステージ上で駆けたり跳ねたりして緩急ついた動作をする。
観客は時には笑い、拍手したりして園児達の劇を楽しんでいた。
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1977年12月に幼稚園の発表会があり僕達のクラスは劇をした。
お題は、『浦島太郎』とてもなじみの有る作品だ。
僕は最初は竜宮城で太郎に接待するその他大勢の一員として練習していたが、乙姫役の子が体調を崩し入院した為急遽代役に抜擢された。
あらかじめ台本は覚えていた為、すんなりと役の練習に没頭した。
乙姫役が本決まりとなり、立ち回りやセリフを覚えたのはいいけど衣装をどうするか問題だった。
聞くところによると、芸能事務所に乙姫の衣装がありそれを参考にして僕に合わせて採寸して衣装を作成した。
で、発表会当日になり元乙姫役の子も復帰して、その他大勢の役をこなしていた。
劇が進み、いよいよ竜宮城の乙姫役、すなわち僕の出番が来た。
「ラ、ラ、ラ、ラ~♪」
音楽に合わせ太郎に対し歓迎の歌を乙姫役の僕が歌う。
「ねえ、この声何処かで聴いた事ない?」
「やはり、あなたもそう思うよね?」
観客の方々がざわめきだす。ほうぼうで聞き覚えのある声だとの指摘が上がっていた。
そんな声が聞かれたが、僕達園児は劇を進める。
そして僕の一挙手一投足の動きが皆の視線を集めていた。
猛練習したかいがあったというものだと思う。
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おいらはスカウトマン事、『須加宇都・満太郎すかうと・まんたろう』
『みかん』事、鏡原三花の所属事務所の社員であり、先輩である。
今日は『みかん』出演の劇を観に幼稚園に社長と丸々先生と共に訪れている。
約2か月前に『みかん』の事を意識してからあっという間に月日が過ぎた。
幼稚園の劇とは言え、『みかん』にとっては演劇初舞台。それも準主役。聞くところによると、彼女は最初わき役が良いと言ったらしいが、時の運とはすごいもので、乙姫様役に抜擢されたのはなんて幸運の持ち主なんだろう。
幼稚園に許可を貰いビデオカメラで撮影をしている。それにしても観客の父兄達が『みかん』に感づいているみたいだ。
一目見た時から彼女の演劇の才覚を見抜いていたが、ここまでの才能とは驚きだった。
まさに拍手喝采で劇が進んでいる。
「いや~。驚きましたね。」
「まさに天才子役と言っても過言では無いと思いますよ。」
「有無。私もそう思うよ。」
おいら達が会話する。
「この歌声聞き覚えなんとなく無いか?」
その言葉を皮切りにざわめついたが、三花ちゃん達はお構いなく劇を続けていた。
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「ブラボー!」
パチパチパチ!
劇が終わり拍手喝采で迎えられる中、出演者が一同にステージ上に並んでお辞儀した。
幕が下りて僕達は退場した。
それは後世に残る演劇となった。『みかん』事、鏡原三花の初舞台としても歴史に刻まれ人々の心に刻み込まれた。
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