第10話 運動会

 「ワー!ワー!」


 「ガンバレ!ガンバレ!」


 僕事三花ちゃんが走る。はやての様に・・・。


ほとばしる汗がキラキラと舞い散り、見る者を魅了させた。

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 1977年10月。全国的に運動会のシーズンに入り、僕達の幼稚園でも9月頃から練習に励んだ。


行進。組体操。徒競走。障害物競走。綱引き。等々。


 ・行進の練習で、人との協調性、歩調を揃える。等を学べる。


・組体操は、美しい姿勢、バランス感覚、等があげられる。例えば、1人が真ん中に立ち左右に手を伸ばしそれを繋いで3人一組の扇形を作った。いわゆる『扇』である。


・徒競走は、姿勢、腕の振り、ひざの上げ方の練習になる


・障害物競走は、短距離走、跳躍、バランス感覚、精神面等のテストの要素も兼ねている。


・綱引きは、1本の綱をひきあう事により、団結力が生まれる。


等々、幼い頃から学び人間性を成長させる一面があると言える。


 「よーい!ドン!」


 掛け声と共に、僕達は駆け出して徒競走の練習したり、綱引きでは引いたり引かれたりの攻防をする。組体操では基本の姿勢から学び、良い形の完成形になった。


また、障害物競走の練習では平均台の上を走ったりしてバランス感覚を養った。


あと網をくぐったりして少しでも早く障害物を乗り越える練習をした。 

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 月日はあっという間に過ぎ、遂に運動会開催当日が訪れた。


 「三花ちゃん、今日は運動会頑張ってね。」


 「三花、頑張れよ。」


 「三花の晴れ舞台期待してるよ。」


 等々、朝食時に家族から声を掛けられた。


 「うん、ありがとう。頑張るよ。」


 僕は答え、部屋に戻り準備の確認を行った。


汗拭き用のタオル、着替え用のバスタオル、肌着、体操服の替え。等々、小物類も怠らない。


髪を束ねたり、固定する為のヘアバンド、ヘアゴム。汗の対策に制汗スプレーも忘れずに。


後は絆創膏や塗り薬等も用意する。


 準備の確認も済み、制服に着替えて僕は玄関に向かい靴を履く。


外は運動会びよりの快晴で、雲一つない天候で僕は今日1日を楽しみにして家を出て通園バスを待った。


 「おはよう。三花ちゃん。」


 「おはようございます。先生。」


 ぺこりとお辞儀して挨拶をする。


 「三花ちゃん、元気?今日の運動会、楽しみだね。」


 「そうだね。楽しみだね。」


 座席の隣の子と会話して運動会への期待感を膨らましていき、しばらく通園バスに揺られた。

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 教室に入ると、既に何人ものクラスメイトは体操服に着替えており、今日のイベントを楽しみにしている様子だった。


 「皆様、おはようございます。」


 「三花ちゃん、おはよう!」


 僕が声を掛けると、クラスメイトが答えてくれた。急いで僕も制服を脱ぎ体操服になる。


ちなみに男子は上は指定の体操シャツ、下は短パン。女子は男子と同じ体操シャツの襟と袖の色違い、下はブルマであった。


髪型はツインテールの三つ編みにして、ヘアバンド、ヘアゴムをしている。


ちなみに1977年当時はツインテールという髪型は無く、もっぱらふたつ結いと呼ばれている。


 先生が来て、皆で運動場まで椅子を運んだ。


そして帽子も配られ待機した。


いよいよ入場行進の時間。運動場の一角に設置された入場口に園児達が続々と集まる。


そこへ先生が、


 「はーい。整列して。」


 僕達は所定の場所に整列した。そうして入場行進の開始を待った。


 「ただいまより、第〇〇回〇〇幼稚園運動会を開催します。まずは入場行進です。」


 行進曲が流れ、順番に園児達が進んでいよいよ僕達の番が来た。


 『ピッ!』


 先生の笛の音と共に行進する。途中園長先生並びに来賓席、保護者席に向かって腕を伸ばしつつ、顔を向ける。


その時々において観客の方々達のカメラがこちらに向かう。


子供達の勇姿を保存しようとカメラのシャッターを切る。


 そうこうしてトラックを行進して、グラウンドに整列して壇上にて園長先生、来賓のかたの挨拶を聴いていよいよ準備運動のラジオ体操をする。


皆きびきびと行動し、ラジオ体操を済ませて、順番にクラスごと自分の席に戻った。


 いよいよ競技が始まりクラスメイトを応援していた。


すると別のクラスメイトがこちらに来てお願いしてきた。


 「ねえ、三花ちゃん。一緒に写真撮ってくれないかしら?」


 僕は怪訝そうな顔をしていると、


 「三花ちゃん、そんなに構えないでよ。君の事は娘からよく聞いてるからね。」


 「お願い。三花ちゃん。」


 「それなら僕も頼もうかな。」


 「僕も。」


 「僕も!」


 内心、『え~っ』と思ったが、


 「「「「「三花ちゃん、お願い。」」」」」


 「「「「「お願いします!」」」」」


 何事もイメージが大事だが、1枚だけと言う条件で了承した。


僕が受けないとパニックが起きかねない事になりそうだったからだ。


 「「「「「やった~!ありがとう!」」」」」


そうしてクラスメイトとの写真撮影大会の様相になってしまった。僕は撮られ損はいやなので必ず焼き増しを貰う様にした。が、どこまで約束を守ってもらえるのだろうか・・・。


 そうこうしている内に騒ぎを聞きつけた先生が来て、事情を話すとリストを作成して下さるそうだ。


だが、焼き増しが面倒なのか僕と一緒の写真を撮るだけの人も何人かいた。その行為があだとなる事も知らずに・・・。


 後からお母さんに、


 「三花ちゃん、いやならはっきりと断らないといけませんよ。」


 「そうだぞ、三花。後の事はお父さんに任せなさい。君は自分の競技に集中しておいで。」


 僕は両親から心強い言葉を貰って競技に出た。


 僕は走る。流れ出てくる汗がキラキラと光り輝いて飛び散る。


僕は踏ん張る。足腰に力を込めて、両手で綱を懸命に握り掛け声と共に後ろに引っ張る。


僕は耐える。両腕を広げ、人を引っ張り扇を崩さない様にする。


僕は飛んだり跳ねたり、かがんだりくぐったりする。数々の障害を乗り越えて。


 それらの僕の行いが後から聞いた話では、たくさんの観客の方々を魅了し写真も多く撮られていた。後年、それらの写真はお宝になり中には家宝にした人もいたらしい。

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 運動会の種目が終わった後、体操服から制服に着替える。


汗で濡れていて、風邪をひかない様に替えの肌着、靴下もろもろを履き替えてブラウス、スカート等を着込んだ。パンチラ防止の為のブルマの替えも忘れない。


 「三花ちゃん、数々の競技すごいね。どれもほれぼれとしたよ。」


 「そうそう。格好いいのと可愛いのが合わさって皆を魅了していたよ。」


 「ありがとうございます。」


 着替えの時、クラスメイトから言われた。


ちなみに用意していた絆創膏等は途中転んで擦りむいた子がいて、水で洗い応急処置として絆創膏を付けてから保険の先生に引き渡した。その時に感謝と褒められた事が記憶に残った。


 そうして帰宅の途について、早めの風呂にして汗を流した。


それから家族団らんでTVを観ていると丁度運動会シーズンの話題が流れていて家族が一言、


 「ねえ、これって三花じゃないか?」


 「えっ?」


 「どれどれ?」


 大勢で綱引きしている中心に僕がいた。また別のシーンでは僕が走っている所が流れ、飛び散る汗がキラキラとして妖艶な感じを醸し出していた。三花ちゃんを客観的に見るのは慣れていない為、僕自身の身体と言うのも忘れドキドキする感覚に満たされた。


 「うん。私かもしれないね。髪型や特徴が一致するから・・・。」


 「ひとまず、運動会疲れただろう。ゆっくりお休みなさい。」


 「はあい。」


 そうして身体を休める為に、僕は早めに就寝をした。

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