第8話 PCと株
その夜僕は三花ちゃんのお父さんの部屋にいる。厳密に言えば、書斎にいる。
本棚には数多くの書籍が並び、机の上にはPCが鎮座していた。書籍類の背表紙はどれもこれも見ごたえがあり精神年齢45歳の僕には普通でも4歳の三花ちゃんにとっては難しい内容であった。と、思う。
が、三花ちゃんの潜在能力は未知数で、案外軽々と読めるかもしれない。
で、百科事典が並ぶ中PC関連の本も見かけた。現時点(1977年7月)ではパソコンではなく、『マイコン(マイクロコンピューター)』と呼ばれていて高価であり、高嶺の花であった。
また、記録媒体もカセットテープを使用しており、大容量の記録媒体を知っている僕にとっては心もとなく感じた。フロッピーディスクはある事はあったが、個人所有するには値段が高く普及には程遠かった。
サイズは8インチ、5.25インチ、3.5インチに移り変わっていく。僕が前世で実際に利用した事があるのは5.25インチ、3.5インチである。
後に光ディスクと呼ばれる、CD、DVD、BDまではまだまだ先の事である。
机の上にあるPCを見ると、どことなく見覚えがあり初めてのはずだけど懐かしさを感じた。昔、友人宅で見させてもらったのを思い出した。
≪どう?あなたが使用していたPCの性能よりは格段に落ちるでしょうけど、この時代では最新型よ。
約40年前の性能で貧弱に感じるかもしれないわね。≫
そう言いつつ、三花ちゃんが身体の主導権を取りPCに向かいお父さんに断りを入れてキーボードで何やら打ち込んでいた。どうやらプログラミングしているみたいで画面を凝視していた。でも手はカチャカチャとタイピングしている。いわゆるブラインドタッチをしており、三花ちゃんの腕前に追い付く為にはいろいろと努力しないといけないと感じた。
見る見るうちにプログラミングされていく。 お父さんは見慣れた光景らしく無言で見ていたがおもむろに、
「三花、進み具合はどうだい?」
「ふう~。ひとまずこんなところかな?でもまだまだね。アイディアが湧き出ているもの。」
と言いしばしの休憩を入れた。
「そうなんだ。完成するのを楽しみにしているよ。」
≪で、どうだった?私のプログラミングの様子は。あなたが来てから知った、未来のPCの事や家庭用ゲームの良い所を取り込もうとしているのよ。すなわちあなたの記憶を参考にしてプログラミングしてるの。≫
三花ちゃんは嬉々として話しかけてくる。僕の記憶が役立ったのならとても嬉しい。
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≪そう言えば、三花ちゃんは株に興味無い?お父さんが株についての本を持っているんだけど。≫
≪突然どうしたの?≫
≪いや、株についてふと思い出したからさ。≫
≪例えば?≫
≪だからね、将来の株価の値上がりを見込んで今の内、すなわち1977年の時に株を購入したらいいと思うんだけど・・・どう?≫
≪私は別にいいかもしれないけど、銘柄とか覚えてるの?≫
≪今後、急成長する会社の心当たりはあるよ。≫
≪まあ、お父さんに頼んでみましょう。≫
≪そうだね。≫
そうして僕は三花ちゃんと相談して、お父さんに株を購入してもらう様に頼んだ。
「三花は株に興味があるのかい?」
「はい。全くの素人ですが、株を購入してみたいと思います。」
「ふーむ。何事も勉強だね。ではどこの銘柄をご所望かい?」
「はい。えーと・・・。」
「そんなにあるのかい?まあ、最初は練習だから結果は気にしなくてもいいよ。と言いたいけどいい報告を待ってるよ。」
「お父さん、ありがとうございます。」
「三花、そろそろ寝る時間じゃないかな。」
「はあい。」
そうしてお父さんの部屋を出て手洗い、歯磨き等を済ませ自分の部屋に戻り就寝した。
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