第1章 15 「……それ、嘘だよね?」
「――って話です」
灯夜が一通り話を終える。あるてといる時のような明るい間延びした喋り方ではなく、今現在の灯夜の口調であるように捏造をしながら。
「訊けませんでしたとも、ええ。だって、あの時流してたあるてさんの涙は本物に見えましたから」
「……そっか。話してくれて有難う」
「しかし、うーん……」
灯夜が道瑠を色んな角度からじろじろまじまじと見回す。
「な、何?」
これには流石に道瑠がたじろぐ。
「外見――顔も綺麗で良いとは思いますが……。あるてさんは貴方の何処がそんなに良いんでしょうかねえ……」
「平木さんもなかなか容赦無いね……」
「ええ。貴方に捧げる慈悲はこれっぽっちもありませんから」
「あっ、うん……」
ここで会話が途切れてしまう。
「もう1つ、お話しないといけません」
先に口を開いたのは灯夜だった。
「何だろう?」
「私はあるてさんのことを想っております。泣いてしまったあるてさんに
「……うん」
灯夜は胸に手を当てて、真剣な顔付き――まっすぐな目を道瑠に向ける。
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「あるてさんのことが、躊躇無くそんなこと出来るくらいに好きです、大好きです。それだけにぽっと出の貴方に奪われるんじゃないかと考えると、堪らなく嫌だったのです。それを貴方にも知らしめたかった」
灯夜の告白を聞き、道瑠はどう返答しようか考える。
「それは……性別の垣根を越えて、あるてさんと付き合いたい。そう言う意味で良いのかな?」
「はい、そうです」
そうして思い付いた返答に、灯夜は迷い無く答える。
「……それ、嘘だよね?」
「あの、貴方も大概容赦ありませんよ? 貴方に何がわかると言うんですか」
「一昨日僕の前に現れて、今もこうして僕と話をしているから」
「もう少し詳しくお願いします」
「本当にあるてさんが欲しいのなら、障害となり
「………………」
灯夜は一切の感情を表に出さず、道瑠の話の続きを待つ。
「だから本当は平木さんは、僕とあるてさんのために動いてるって考えてる。仲直りさせるためにね」
「……なるほど、それが答えですか。随分と都合の良い内容でちょっと残念です。うーん、そうですね……1.5箇所間違ってますね」
「ん? 1.5?」
1なら兎も角その0.5が何なのか、道瑠は気になった。
「はい。まず1つは2人を仲直りさせるため、まして貴方のためなんかに動いちゃいません。あるてさんの悲しむ顔は見たくないから――これが全てです」
「……残りは?」
「後の0.5は、私があるてさんのことが大好きって気持ちは本物で、嘘なんかじゃないってことです。そこまで嘘と仰るのでしたら、その綺麗な顔面を笑顔で殴ってみせますよ」
「………………」
「……まあ、好きですけど。しかし私はそっちの趣味は持ち合わせておりませんので、恋愛感情とかではなく人として、親友として大好きって意味です。あるてさんと付き合いたいって嘘を見破ったのはお見事ですが、半分本当、半分違って0.5です」
「あの、それで――」
道瑠が何かを言おうとしたが、
「試すような真似をしてしまった点、お詫び申し上げます。申し訳ございませんでした」
灯夜が言葉を重ね、丁寧に頭を下げる。
「えーっと、取り敢えず顔を上げてもらっていいかな?」
そして道瑠の言葉に対して無言だが、応ずるように灯夜は頭を上げて戻した。
「僕のことはいいんだ。それよりも、僕のせいとは言えあるてさんをどうにかしないと――きっとまだ、心の傷癒えてないよね」
「……あの、道瑠さん」
「はっ、はい!?」
今までずっと道瑠を『貴方』と呼んでいた灯夜が唐突に名前で呼んだため、道瑠が改まって驚く。
「何をそんなに驚いて……まあいいです。道瑠さんはあるてさんと…………どうしたいですか?」
こう訊ねる灯夜は、さっきまでの灯夜と比べると棘がいくつか取れたようで――しかし道瑠が気を抜くことは無い。オープンクエスチョンにしてはオープン過ぎる内容の質問だが、道瑠は迷うことなく答えた。
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