ばらばら
俺たちのリーダーが旅立ってから、もう何年経っただろうか。
あれ以来、俺は1人の仲間と共にこの地を守り続けている。歳は俺と300ほど離れているが、コイツは幼いながらもかなりの戦闘センスの持ち主だ。俺達に立ち向かってくる無謀な輩は時々いるが、全て2人でねじ伏せてきた。3人の頃は、もっと楽しかったんだがな...
□「なあラフター、毎日毎日雑魚の相手ばっかり、つまんないぞー」
ここ最近コイツはずっとこの調子だ。確かにコイツの言う通り、3人で戦っていた頃より刺激が少ない毎日だ。だが、
「文句いうな。俺達はアイツに、ここを守るよう命じられている。命令1つ遂行できないで、アイツに顔向けできねえよ」
俺がそう諭すと、
□「ちぇ~、わかったよ...」
と、コイツは口をとがらせて答えた。精神の未熟さ故か、コイツはよく弱音を吐くし愚痴もこぼす。困ったものだ。
―――――
俺達3人の出会いは、数百年前に遡る。
同じ野望をもつ者、『同志』として、何度も助け合い、何度も危機を乗り越えてきた。
□「なあ2人とも! リーダー決めようよ!」
「リーダー? そんなの、コイツ以外あり得ないだろ」
俺達2人とも、リーダーはアイツ以外あり得ないと思った。3人の中で1番強かったし、頭も切れるからな。するとアイツは、
「リーダー... 悪くない響きだな。2人がそう言うなら、今日から俺がリーダーだ。だが、お前達は掛け替えのない仲間だ。俺は上も下もないと思っているぞ」
って言ったんだ。俺はアイツの、いやリーダーのその言葉を聞いたとき、一生ついていこうと心に決めた。うまく言い表せないが、リーダーには何か、人を惹きつけるモンがあった。
―――――
□「ヨシ決めた! アタシ、リーダーのとこ行く!!」
ある日突然、□はこんな事を言い出した。
「はあ!? 急に何言い出すんだ! アイツがどんな思いで、俺達にここを託したと...」
すると□は今までにないくらい声を張り上げて言った。
□「でもリーダー全然帰って来ないじゃん! きっと困ってるんだ! だからアタシが助けに行くんだ! アタシ達、辛いときはいつも助け合ってきただろ!?」
俺は自分の浅はかさを思い知った。ずっとガキだと思ってたコイツが、ここまで言ってみせるほど成長していたなんて... 一番近くに居ながら、俺はコイツの強く堅い意志に気づいてやれなかったんだ。
「...分かった。お前にはお前の考えがあるんだな。俺は止めねえ、アイツんとこ行ってこい!」
俺はいつまでも2人を待ち続ける。いつか再び、3人で戦える日が訪れるまで。
―――――
きっとリーダー、1人で困ってる...!
普段からアタシ達にも弱音吐かないし、1人で抱え込んで、押しつぶされそうになってるかも...
リーダー、アタシ心配だよ...
でも安心して。アタシがすぐに会いに行くから!
誰にも邪魔させない! 邪魔するヤツは、どんな手を使っても...!
―――――
□が死んだのは、その5年後のことだった。
青髪の男から奇襲を受けて、その後激しい戦闘の末散った...らしい。
相手は瀕死ではあったものの、命に別状はなかったそうだ。
数百年苦楽を共にした仲間が逝っちまうのは辛い。だが、アイツを殺した青髪の男のことは別に憎くないし、復讐してやろうとも思わない。
まあ、アイツは良くも悪くも感情的だった、ってことだ。
それならアイツが死んだのは、送り出した俺のせいだろう。
たった1つ、無情にも叩きつけられた真実―――――
もう2度と、3人で肩を並べて戦うことは出来ない。
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