🍀クローバー・オブザーバー ～零番目の短編集～

はじまり

10-4

今日は私の１６歳の誕生日！　親友の蝶香（ちょうか）が、かわいいノートをプレゼントしてくれた！　小さめだし分厚いから日記書くのに向いてるかも！？　ということで今日から日記をつけることにします。三日坊主で終わらないといいけど...

10/5

昨日の誕生日会楽しかった～（食べ歩きしただけだけど笑）　みんなありがとう！　今日は土曜日で暇だったから、気になってた映画を見に行って、それから私好みの冬服を爆買い。バイト代が入るまで、しばらく金欠...

10/6

今日は一日中家にいました。一日中ゴロゴロしてたけど、たまにはこんな日も悪くないよね。

今、パパに呼ばれた。「話がある」って、何だろう？

10/7

学校しんどかった～　まあ友達と会えるから、辛くはないんだけどね。

蝶香に日記の事話したら、苦笑いされちゃったw

そういえば、昨日のパパの話、よく分からなかったな～

「力」がどうとか...

10/8

現代文の課題多すぎ～　やっと終わったよ～

「『おすすめの本』のスピーチ用原稿って何？　小学生じゃないんだからさ～

適当にパパの本借りて済ませちゃお～」

って考えてパパの部屋入ったら、私のと似たようなノートあってびっくりΣ(ﾟДﾟ)

気になって持ってきちゃったw

10/9

えっ...　何この内容...

.........

■■/■■

もう日付を記す意味もないので、消しておこう。

私の長い長い旅が始まってからだいぶ経った。

たった独りの。

でも今の暮らしも悪くない。辛いこともあるけど、いろんな人と関わることが多くて楽しいし、これは私にしかできないことだから、続けなくちゃ。

友達も少なく、人生経験の薄い私にとって、知らないものばかりの生活は刺激いっぱいだ。

でも何故だろう、ときどき言い知れない不安感に襲われるの...

.........

■■/■■

あの頃のことを思い出した。日記をつけ始める前のことを。

楽しかったなあ。勉強は難しかったけど、友達との思い出は楽しいものばかり。

あの子、今も元気かな...

...あれ？　あの子の名前、何だっけ？　私にこのノートをくれた、あの子...

どんな顔だったかも思い出せないな...

.........

■■/■■

どうやら、「力」を使うたび私の記憶が少しずつ失われているらしい。

このままでは大切な思い出を全て失ってしまう。いや、もう失ってるのか...

これ以上忘れてしまわないよう、今憶えていることは全てここに書き留めておこう。

私の孤独な旅はもう、引き返せないところにあるようだ。次はどこへ行って、何を変えよう？

...そんなことは今はどうでもいい。今はただ...

...忘れるのが、怖い。