9 我は魔剣なり
憎い。ドスを殺した騎士が、 貴族が、世界が、 全てが……怒りと憎しみと殺意と絶望。その全てを込めて、俺はヌル・アハトの柄を握った。
「警告はしたぞ。だが、そのエルフは逆らった。殺されても文句は言えないよ!」
俺の後ろから聞こえた高い声はシェンテのものだう。
「次は貴様だサルビン!死ねい!」
シンコの声が終わると同時に、銃声が聞こえた。どこまでもうるさい奴らだ。
「げえっ!?」
シンコ、シェンテ他の騎士達が間抜けな声を上げる。銃弾は命中した。俺ではなく、剣に。俺は片手でヌル・アハトを頭の後ろまで持ち上げていた。シンコが銃の照準を俺の頭に向けて狙っていた事など、見なくとも読めていた。
「……黙ってろよ」
俺は
「永久になぁっ!!」
片手でヌル・アハトを投擲した。横に回転しながら飛んでゆく剣に触れた3人の騎士は、それぞれ一気に真っぷたつとなる。
「セス!シェンテ!オチョ!」
レイが死んだ部下の名を口にする。死んだ奴らはもう騎士でも貴族でもない。偉そうだった奴らも、死んでしまえばただの肉塊だ。旋回しながら戻ってきた剣を、俺はキャッチし、両手で握り直した。
「何だ……簡単な事じゃねえか。俺を邪魔する奴はみんな殺しちまえばいいんだ」
俺は走る。剣を振り回しながら。
「お前……」
俺が睨みつけたのはドスを撃ったトカゲのシンコだった。
「ひいっ……」
お前だけは絶対に許さない。俺は仰向けで命乞いするシンコを文字通り、八つ裂きにしていた。鎧も鱗も皮も肉も骨もアハトの刃は全て等しく切り刻む。圧倒的強さの前には、貴族と平民の身分すら平等に死を与える!!
「我が名はヌル・アハト……この世に終焉をもたらす者なり……」
気が付くと、俺はそんな事を口走っていた。 魔剣に意識を乗っ取られたのか?何だっていい。ドスのいない世界なんて、俺には生きる価値も無い世界だ。この騎士達を皆殺しに出来るのなら俺の魂なんてくれてやる。
「 違うな。お前はウノ・ムニョス・サルビン。ただの盗賊だ!」
最後の一人となった騎士レイ・ブランカは言う。他の騎士とは違い、妙に落ち着いていやがる。 その涼しげな面が気にいらねえ。 俺はアハトを最上段に降りかぶり、一気に振り下ろす。
「武爛花流……弐の太刀、
レイは俺の一撃を、片刃の長剣1本でいなした。そして、足払いを掛けて俺を転倒させる。
「魔剣の力を己の力と錯覚したか。哀れな奴め」
レイの刀が倒れた俺の首を突く。それを横に回転しながらかわし、距離を取って俺は立ち上がる。
「女を殺された怒りと悲しみから、魔剣に取り入られた様だが、私もお前に部下を殺された。クァトロ、シンコ、セス、シェンテ、オチョ、ヌエベ……みんな私の大事な部下だ!貴様だけが辛い・悲しいなどと思うなよ!!」
レイの構えたその剣は、カタナと呼ばれるもので東の島国・
「武爛花家次期当主・
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